夏場の船から大型マダイや青物を狙えるのが「完全フカセ」。エサ取りを避け、大型魚を狙うのに理にかなっている釣り方だ。

今回は、手軽に始める完全フカセ釣りの方法をご紹介。

(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)

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完全フカセ釣りとは

「フカセ釣り」とは、基本的には仕掛けにカゴなど余計なアイテムを使わず、オモリを打たない、または極軽量なオモリで釣る方法だ。磯からのフカセ釣りやチヌ(クロダイ)を狙った筏やカセからの釣りでもフカセ釣りが用いられる。

「完全フカセ釣り」とは、その名の通り、オモリすら打たずに「完全なるフカセ釣り」となる。そんな釣り方が船からもできる。これが船の完全フカセ釣りである。

大物が狙えるのが魅力

完全フカセ釣りは関西では福井、京都、兵庫県下の日本海側を始め、太平洋側では和歌山や三重県下でも一部楽しまれている。

この釣り方の最大の魅力は、夏場のエサ取りが多い時期に「大型魚を選んで釣れること」である。マダイにしろ、ブリやヒラマサなどの青物、加えてイサギなども完全フカセ釣りだと大型が揃う。その最大の理由は「まきエサの筋の中を上のタナから探る」釣りであることだ。

【関西2020夏】船からの大物狙いに最適な『完全フカセ釣り』入門
夏の大型マダイに有効(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

1.まきエサの筋で誘い出せる

後述するが、完全フカセ釣りは船上から撒いたまきエサの筋に沿って、軽い仕掛けを流し込む釣り方だ。まきエサの筋の先が、大小様々な魚がいる魚礁などのポイントに届いた時、大型魚ほど外敵が居ないので、まきエサを食べながら潮上へと上ってくる。これが完全フカセ釣りで大型魚が釣れる最大の特長である。

2.フロロカーボンラインを使う

大型の魚にありがちなのがラインブレイクやハリが伸びた…などによるバラシだ。ところが完全フカセ釣りは道糸に伸びのはるフロロカーボンラインを使用する(理由は後述)。そして、流し込む距離は100m以上はざらである。

その先で魚が掛かったとして、道糸の伸びを考えると、多少魚が走ったり暴れたりしても、道糸の伸びが吸収してくれる。そのため、ゆっくりとやり取りを楽しんでいるうちにも、魚の体力を奪っていて、取り込みやすくなっている。これも大型魚対策としてはかなり有効な点だ。

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ヒラマサなどの大型にも対応(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

完全フカセ釣りのポイント選び

海底の魚礁など魚が付くポイントは変化のある場所である。たとえば、魚礁などは小魚が常にいて、それらを狙って青物が回遊したり、甲殻類などのエサも豊富なので大小様々な魚たちが居付く。

このポイントの潮上に船を固定し、船上からまきエサを撒きつつ、まきエサと同調させるように仕掛けを紛れ込ませるのが完全フカセ釣りの基本だ。その時の潮の速さや水深などを考慮して、船上から撒いたまきエサが自然と沈んで、狙う魚礁などに届くような位置決めをするのが船長の判断力だ。

完全フカセ釣りのタックル

船からの完全フカセ釣りで、特徴的なのがリールに巻く道糸だ。船釣りでは、どんな釣りでもPEラインが主流だが、この釣りだけはフロロカーボンラインを使う。その理由は、オモリを使わずにフロロカーボンの沈む力を利用して仕掛けを流し込んでいくため。具体的には中、大型電動リールにフロロカーボンライン6号前後が300mほど必要だ。竿は船竿で3m前後が好んで使われる。

完全フカセ釣りの仕掛け

仕掛けはテンビンフカセで使用する先の仕掛けをそのまま利用できる。幹糸6号、ハリス6号の吹き流し式3、4本バリで、全長は10~15mが扱いやすい。

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完全フカセ釣り仕掛け例(作図:TSURINEWS関西編集部・松村)

フロロカーボンラインで沈めるとはいえ、微妙な調整は必要なのだが、そのためのアイテムはオモリ代わりのスナップサルカンと浮力体となる発泡フロートだ。

船長判断である程度の調整をしてくれるが、思ったより底潮が速いとか、思ったよりエサ取りが底に多いなど、自然を相手にする釣りなので完全にピタリとパターン化できることは希である。

小物でレンジを微調整

そこで、仕掛けを少し沈め気味にしたいときには、仕掛けと道糸の間にスナップサルカンを入れる。

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サイズを違えたスナップサルカンを持参(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

またもう少し浮かせ気味にしたいときには発泡フロートを同じ場所に取り付けることで仕掛けの流れるレンジを調整できる。基本的に完全フカセ釣りに必要なタックル構成や仕掛けは以上である。

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完全フカセで使用する発泡フロート(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

完全フカセ釣の釣り方

完全フカセ釣りはオモリを使わず道糸の沈む力を利用して仕掛け全体を沈めながら流し込んでいく。その時に利用するのが潮流である。潮が仕掛けを引っ張っていってくれるのが理想だ。

1.あらかじめ道糸を出す

そこで、最初に潮の乗せるための糸をあらかじめ出してやる必要がある。竿は竿受けに置いたままでリールのクラッチを切ってフリーにし、手で竿先からの糸を手繰り、海中へ入れていく。人によってかわるが15m前後は最初に出してやると潮に乗りやすい。

2.潮に乗せて仕掛けを流す

仕掛けが潮に乗れば勝手に仕掛けを引っ張っていってくれるがこの時に注意したいのが、道糸の出方である。スプールをフリーにしていると潮に引かれて勝手にスプールが逆転して糸が出ていく。

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糸の出をケアしよう(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

このときに、スプールの回転が悪いと抵抗となり、糸の出が悪い分仕掛けが浮き上がってしまう。それは道糸がスプールの糸の山に引っ掛かっても同じ。そこで、スプールを注視しつつ糸の出が止まらないように監視するのが釣り人の役目だ。

3.まきエサは一定のペースで

完全フカセ釣りで重要な作業の一つがまきエサである。まきエサ、さしエサともに生オキアミを使用するが、船上から撒いたまきエサが自然に沈みながら潮に流されるのをイメージしていただきたい。要はそのまきエサの筋道に沿って仕掛けが流れていけば理想だ。

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ひとつかみずつ一定のペースで撒く(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

そして、まきエサの筋を作るのが釣り人の役目だ。大量に撒いてから放っておくのは一番悪い例で、ひとつかみのオキアミを海面に撒いたら、流れていくのを確認して、オキアミが見えなくなったらさらにひとつかみ撒く。この繰り返しとなる。

4、流す距離について

この釣り方では道糸が長く出ればそれだけ深くまで仕掛けが沈んでいると言える。そして、より船の潮下にある魚礁に仕掛けが近づく。魚礁に近づくほどエサ取りも多くなるので、エサが取られることが多くなる。そこで、どのくらいまで仕掛けを流し込めばエサが取られるのかを確認する。

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オキアミは抱き合わせが定番(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

たとえば、最初は150m流して回収する。エサが取られていれば次は120mで回収。さらに取られていれば今度は先述した発泡フロートなどを利用して仕掛けをやや浮かせ気味にする。

逆にリールの道糸いっぱいまで流してもエサが取られなければ、スナップサルカンなどを利用して、同じ距離でもやや深いレンジを探ることもできる。

5.アタリの出方

完全フカセ釣りの醍醐味の一つがアタリである。基本的にスプールはフリーでどんどん道糸が出ていっている状態からのアタリだ。スプールの回転を見ていると、ゆるゆると潮に引っ張られて出ていっているのが、突然バックラッシュを起こすほど糸が飛び出していく。これが完全フカセのアタリである。

アタリがあればバックラッシュを起こしても構わないので、そのままクラッチを入れ、巻き上げにかかる。このとき、巻き上げている最中に魚の重みが伝わってきたところで大きくアワせる。仕掛けが軽い分、道糸もピンと張っている状況ではないので、すぐにアワせても糸ふけで吸収されてアワセが効かないからだ。掛かってしまえば後はやり取りを楽しみながら巻き上げてくればOKだ。

<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>

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