お盆になると海には無数のクラゲが泳いでいるのを見たことがある人もいると思います。なぜお盆になるとクラゲは増えるのでしょうか。

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水族館では人気のクラゲ

白くてふわふわと泳ぐ姿が人気のクラゲ。

「癒される」「時間を忘れる」などの理由から近年、水族館では非常に人気がある海の生き物です。

クラゲは刺胞動物(しほうどうぶつ)というカテゴリーの生き物であり、イソギンチャクやサンゴなどの仲間です。刺胞動物という文字からもイメージできるようには、クラゲは毒の入ったカプセルを注入するための針を備えた細胞を持っています。

クラゲの場合は、ヒラヒラした足のような部分にこの刺胞が無数に準備されており、誤って触れてしまうと刺胞が発射され、体内に毒が注入されてしまいます。可愛い見た目とは裏腹に、クラゲは非常に危険な生き物なのです。

そんな危険なクラゲが、お盆の時期になると大量に増えるというのをご存じですか?

お盆になぜ増える?

古くからお盆の時期になるとクラゲが海に増えることは知られています。夏休みに海水浴に遊びに来た人の足や体を刺し、散々な思い出になったなんて話もよく耳にしますよね。

ではなぜ、お盆になるとクラゲが海にたくさん現れるのか。

これには海水温が深く関係しています。

しかし、まず大前提として知っておいてほしいのが、クラゲが突然大量発生するわけではないということ。クラゲは一年を通して海におり、年中繁殖行動を行っています。クラゲは成長する過程で体の形が変わる不思議な生態を持っており、私たちが良く見るクラゲの形になる前までは、とても小さく、肉眼ではほとんど見つけられません。

お盆の頃になると海水温は20~30℃くらいまで上昇します。

この温度がクラゲにとっての適温であり、非常に活動的になります。そのため、目に見えない程の大きさだったクラゲもドンドンと大きくなり、海にはクラゲがたくさん発生したように見えるのです。

お盆に宿題をさせるための口実?

一部の地域では、「お盆になるとクラゲがたくさん出るのは家で宿題をさせるための口実」なんて説もあります。海にクラゲがいることを口実に、外出をさせず家でおとなしく宿題に向き合ってもらうため、この説が広まったともいわれています。

ちなみに、太平洋側と日本海側ではクラゲの大量発生の時期は少しずれており、太平洋側では日本海側より少し遅い9月頃が例年ピークとなっています。

もしかしたら、この説を広めたのは太平洋側の人かもしれませんね。

クラゲに刺されるとどうなる?

では実際にクラゲに刺されてしまうとどうなってしまうのでしょうか。

クラゲに刺されると、その直後から刺された場所を中心に激しい痛みや湿疹、発赤があらわれます。

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クラゲに刺されないよう注意しよう(提供:PhotoAC)

クラゲの長い触手がなぞる様に触れた場合には、特徴的な線状の腫脹(みみずばれ)が見られるでしょう。それだけならそこまで問題ではありませんが、中には非常に危険なクラゲもおり、最悪の場合命に関わることもあります。

また、毒は強くなくとも、クラゲの毒にアレルギーを持っている人はアナフィラキシーショックを起こしてしまう可能性もあります。決して「クラゲの毒くらい」と侮ってはいけません。

刺された時の対処法

では、気をつけてはいたものの、クラゲに刺されてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか?

クラゲに刺された場合の注意点3つをご紹介します。

1. 刺された場所を触らない

触った時の刺激で刺胞からさらに毒が体内に入りこみ、悪化してしまう可能性があるため。

2.海水で洗い流す

真水は絶対に使用してはいけない(真水で洗うと浸透圧の影響により刺胞が刺激され、刺胞から毒針が出てしまう可能性がある)。

3.棘や触手の除去

ゴム手袋を装着して丁寧に丁寧にゆっくり取り除く(素手だと二次被害が起きてしまいます)。

「クラゲに刺されたら酢をかけろ」という言葉を耳にしたことがある人もいるかもしれません。有効な場合もあるようですが、中には逆効果になってしまうケースもあるようです。

余計なことはせず、3つのポイントを最低限の処置とし、すぐに病院で治療してもらうのが望ましいでしょう。

ヒトとだけではなくクラゲとも適切な距離を保って

2020年の夏、新型コロナウイルスの影響でどこの海も人は少なく、クラゲに刺される人もほとんどいないかもしれません。

そんな中でも、もし海で遊ぶ際はクラゲには気をつけ、一定の距離を保って(ソーシャルディスタンス)遊ぶようにしてください。

<近藤 俊/サカナ研究所>

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