奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が、今回はおいしいケンサキイカの見分け方を紹介。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)
ケンサキイカは高級イカ?
ネットでケンサキイカを調べると「高級で普通のスーパーには出回らない」という記述をよく見ますが、初夏から秋には価格も安定してきて普通のスーパーの鮮魚コーナーでも定番商品の一角を占めるようになってきます。陸っぱりで狙えるころには値段も安くなる高級イカです。
呼び方は地方によって様々
ケンサキイカの地方での呼び方は本当に難解で、隣の港で「まイカ」、「やりイカ」とかわるし、同じ漁連でも支所によってマイカがコウイカであったりするからややこしいです。だから「今日はマイカ狙います」と言われると、どんなスッテやエギを用意するのか混乱します。
3タイプに分けられる
またケンサキイカは「ぶどういか型」、「ごとういか型」、「めひかりいか型」に分けられることが多いです。和歌山や瀬戸内側はめひかりいか型が多く、めひかりは文字通り目が光るところからきていますが、メヒカリと言うと別の魚(アオメエソ)を指すこともあります。関東では胴が太く短いのでマルイカとかダルマと呼ぶようですが、ダルマはメバチマグロ、和歌山ではメダイの別称だから面白いです。
日本海で「あかイカ」とか「しろイカ」と呼ばれるのはぶとういか型。ぶどういか型は秋から初冬の季節型とされています。ごとういか型は五島列島のある東シナ海がメインで、大型になります。

この3型の味の違いは私には分かりませんが、九州の人は呼子の「やりいか」だと言うし、中国地方では萩の「すさみことイカ」、和歌山では「あかイカ」、山陰では「しろイカ」が一番であると譲らない。つまり自分で釣り上げたものが一番おいしいのでしょう。
時間経過による変化=鮮度のバロメーター
釣り上げた時は透明で目が怖すぎるほどきれい(ミズイカと呼ばれる所以)だが、しばらくすると透明なイカの表側は小さな粒子が移動したり、消滅をしたりしてミルク色に体色が変化していきます(シロイカと呼ばれる所以)。そして次にはピンクからルビー色に(アカイカと呼ばれる所以)。目のグリーンのアイシャドウも残っています。市場へはこのタイミングでの入荷が一番多いです。
時間の経過とともに色は薄れてきます。
イカは普通2段とか2半、3段と言った表示で入荷します。2段というのはひと箱に12匹が標準、3段で24匹。段数が少ないほど重なっている所も少ないです。
「体色」が目利きポイント
イカの鮮度を見る時は、以上の時間経過による体色の変化に注目しましょう。最終的に皮を剥かれてしまうと真っ白なため鮮度は解りにくくなります。が、皮を剥かれたイカも時間がたつとクリーム色に変色してくるので、ある程度のことは分かります。スーパーで購入する際は「体色」を参考にしてみてください。
なお、スルメイカのように産地、大きさによって硬さが違うということも少なく、ケンサキイカは加熱しても軟らかいイカです。

スルメ・ケンサキ・ヤリイカの違い
スルメイカとケンサキイカの見分け方は色をみるとすぐに分かりますが、エンペラ(ヒレ)の形も違い、ケンサキイカのエンペラは胴体の半分くらいまであるのに対し。スルメイカではそれより小さいです。

一方、ヤリイカはエンペラの大きさはケンサキと同じくらいですが、足の長さや太さが違います。
「精莢」に注意
ケンサキイカはアニサキスの危険が少ないので、刺し身も冷凍せずに使えます。メスの口元(カラストンビ)に「精莢」がついていたりすることもあります。2、3日しても動くので寄生虫と間違えられますが、違います。いずれにしろ危険なので取り除きましょう。

<有吉紀朗/TSURINEWS・WEBライター>