沖縄県の県魚に指定させているサカナ「グルクン」。本州に住む人にはあまりなじみの無いサカナかもしれませんが、沖縄では人からもサカナからも愛されているサカナです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
グルクンの正式名は「タカサゴ」
グルクンはスズキ目スズキ亜目タカサゴ科クマササハナムロ属のサカナです。グルクンというのはいわば地方名で、正式には「タカサゴ」というサカナです。
グルクン(タカサゴ)は温かい海を好み、日本では奄美大島よりも南にしか生息していません。
しかし、ごく最近では地球温暖化や海流の影響で少しずつ北方に生息域を広げていると考えられています。
大きさは成魚になっても30cmほどまでしか大きくならず、体型は細長くスマートで、体に2本の線が入っているのが特徴的です。尾びれの先端が黒いのもグルクンの特徴と言えるでしょう。
食性はオキアミなどの小さなプランクトンを好んで食しているようです。

グルクンの名前の由来
グルクンの本名であるタカサゴは漢字では「高砂」と書きます。
「タカ」で岩礁、「サゴ」は細魚と書いてさごという意味があり”小魚”という意味の漁師ことばを表しているようです。
「グルクン」の他にも地方によっては名前が変わり、「アカムロ(高知県)」「メンタイ」「アカメンタイ(和歌山県)」「チャムロ(三重県)」などとも呼ばれているようです。
ここで一つ疑問が浮かびます。どうして、グルクンにはタカサゴという立派な名前があるのに、グルクンと呼ばれているのか。
これには諸説あり、沖縄の船頭さんの言うところでは、【グル(群れ)組んでいるサカナ】だから『グルクン』という説や、【海の中でグルグル回る落ち着きのないサカナ=「ぐるぐるクン」→グルクン】になったなどの説があるようです。
細かい理由は定かではありませんが、「沢山群れている」状態を表現したところに由来しているようです。
県魚制度の第一人者
県によっては県魚を定めている場所もあり、グルクンは沖縄県の県魚となっています。
他の県を見てみると例えば青森県ではヒラメ、千葉県ではタイが県魚となっており、その件を代表するサカナや漁獲量が多いサカナが選ばれるポイントとなっている様です。
ちなみに、県の魚を最初に制定したのも沖縄県で、グルクンは日本における県魚第一号のサカナとなっています。
グルクンは沖縄県の県魚ですが、沖縄にしかいないというわけではありません。最近では伊豆の方でもグルクン(タカサゴ)が釣れることもあります。 しかし、やはりグルクンを釣るなら沖縄です。沖縄で釣れる魚の中でも釣りの入門魚としてあげられるくらい釣りやすい魚です。
海の中と外で色が変わる
グルクンを釣り上げたり市場で売られているのを見たことがある人が、海の中で泳いでいるグルクンを見て違和感を感じることもあるでしょう。
というのも、グルクンが生きて泳いでいる時は全身が青く、黄色の線が入った美しいサカナです。
しかし、釣り上げるとその体は見る見るうちに赤くなり、鮮魚店に並ぶころには全身真っ赤に染まり、この時の姿しか見たことない人からすると海にいる時のグルクンは全く違うサカナに見えてしまうでしょう。
しかしなぜ色が変わるかはまだはっきりとは分かっていません。
興奮することで色が変化しているとは推察されていますが、細かいことはまだまだ研究されていないようです。

美味しいけど傷みやすいサカナ
グルクンは臭みも少なく、淡白であっさりとしているにも関わらず、とても旨みがあるサカナです。
沖縄県の居酒屋などでは塩焼きや丸揚げが定番の人気のメニューとなっています。
また、グルクンの刺し身は非常に美味しく、沖縄県以外では幻のお刺身と言われることがあるほど美味だと言われています。
しかし、グルクンは身の痛みが非常に早い魚なので、刺し身はグルクンが穫れる場所の近くでしか味わうことができません。
そのため、お刺身は居酒屋やスーパーでも扱いが少ないことも多く、生簀を完備して活き〆をしているようなところでないとなかなか生のグルクンを食べることができません。
お刺身については沖縄の釣り人の特権なのかもしれませんね。
実はかまぼこの原料にも
グルクンは、実は私たちが良く知るある食材の減少にもなっています。
それは「かまぼこ」。
かまぼこと聞くと、スケトウダラやエソ、ハモなどが一般的ですが、沖縄県ではかまぼこの原材料としても使用されています。
もしかしたら、知らないうちに沖縄県産のグルクンのかまぼこを食べているかもしれませんね。
グルクンが作る豊かな海
沖縄県やその周りの暖かい海ではグルクンが生態系を支えていると言っても過言ではありません。
南に住むマグロやクエなどの大型のサカナはグルクンを主食としています。
そのため、もしグルクンがいなくなってしまったら、あの豊かな海は間違いなく崩壊してしまうでしょう。
そして、私たち人間もグルクンを含む多くのサカナを食べることが出来なくなってしまいます。
グルクンこそ今の日本を支えているサカナと言っても過言ではないのです。
<近藤 俊/サカナ研究所>
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