クロダイの乗っ込み期に当たるこの時期は、食い活発で良型有望、入門にもいい時期だ。今回は磯のクロダイフカセ釣りで本命をゲットするためのあれこれと、速攻全遊動釣法を紹介したい。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 東弘幸)
乗っ込み期は年無し狙い目
私は一年中磯に通っているが、この時期だけはクロダイに的を絞って釣行することが多い。大型グレが数釣れたりすることは実は少ないのだが、クロダイは容易に40cmオーバーが釣れる。さらに、乗っ込み(産卵)期に当たるこの時期は、重量級の50cmオーバーの年無しと呼ばれるサイズも狙いやすい。

海面にギラリと浮かぶ銀色の魚体を銀鱗と表現するが、本当にその姿はキレイでカッコいいのだ。
乗っ込みクロダイ狙いのタックル
クロダイを磯で狙う際の基本的なタックルについて紹介しよう。

ロッド
クロダイを狙うにあたってのロッドだが、胴調子の軟らかいロッドが好ましい。私が愛用しているのは、がま磯黒冴06-530というロッドだが、粘り胴調子でクロダイの引きを存分に受け止めてくれる。

仕掛けのキャストという点においては、穂先が強化されたがま磯ブラックトリガーもオススメ。なぜ軟らかいロッドがいいかというと、まず1つ目がラインにかかる負担をロッドが受け止めてくれることで、ラインブレイクが少なくなる。
クロダイは目がいい。したがってハリスも細い方が、ヒット率が高いのだ。細いハリスにこん棒のようなロッドを組み合わせると、パチンと切れてしまうだろう。
リール
リールは2500番相当のレバーブレーキタイプをチョイスする。できればハイギアタイプのものがオススメだが、高価なリールでなくとも十分に戦える。
ミチイト
ミチイトはサスペンドタイプで、視認性のいいゼロフカセがオススメだ。ハリスより太めの1.7~2.5号をチョイスしておくと、根掛かり時にハリスが切れて、ミチイト側のウキが助かるという算段だ。
ウキ
クロダイ釣りのウキは棒ウキ、円すいウキともにクロダイ専用をうたっているモノがいい。私の場合、大征黒やプログレスチヌを愛用している。

ハリス
ハリスは1.2~1.7号を使う。細い方がクロダイの食いはいいのだが、ハードトップTiNICKSをチョイスすれば、チタンコートの恩恵でワンランク上の強度を得られる。

ハリ
ハリはファインチヌ1~3号がオススメだ。軽量なので軽い仕掛けでフワフワと食わせるようなシチュエーションでもいい仕事をしてくれる。
磯釣りの流れ
さて磯釣りの流れだが、まずは釣果情報などを見てどこに行くかを決める。石鏡であれば渡船の選択肢はひとつだが、尾鷲なら複数の渡船店があるように、どのエリアでどの渡船にお世話になるのかを決める。
船長さんは朝が早いので、予約は午後7時半までに。多くの船長さんが7時の天気予報を見て出船を判断しているので、天候が荒れそうなら天気予報後の方が無難だ。その時に出船時間、納竿時間、弁当の有無を聞いておくことも忘れずに。
次に向かうエリアの道中にあるエサ店に、オキアミの解凍予約をする。「まきエサ用オキアミ2枚解凍お願いします。早朝4時にうかがいます」といった感じだ。あとは必要なものを準備して早めに就寝しよう。
磯釣りの朝は早い。エサ店に到着するころは、まだ暗いなかだろう。道中立ち寄るコンビニやエサ店ではできるだけ静かに騒がず、付近の住民への配慮を忘れないようにしたい。
エサを選ぶ
エサ店に到着したら、配合コーナーへ行き、たくさんある配合材の中からクロダイ専用のものを選ぶ。オススメはチヌパワームギスペシャル、爆寄せチヌ、チヌパワーV10白チヌなどだが、迷ったら店員さんに聞こう。

さしエサは生オキアミの他にスーパーハードなどの加工オキアミ、ボイルオキアミ、食い渋りイエローのような練りエサ、くわせ丸エビイエロー、特鮮むきエビ、サナギ、コーンなどを準備したい。

エサ取りがいないようならオキアミだけでいいが、クロダイの潜むタナにさしエサを届けるためには、エサ取りに強いさしエサでクロダイが好むものを準備しなければ戦えない。いろんなカラーのさしエサがあるが、私的にオススメは黄色系だ。クロダイには黄色が効く。
釣り座に入り準備
渡船乗り場へ到着したら、着替えを済ませて船長の到着を待つ。準備を含めて出船の30分前には到着したい。船長が到着したらあいさつをし、クロダイ狙いであることを必ず告げよう。クロダイは「内向きのクロダイ」という言葉があるように、潮ができるだけ緩やかな湾内磯がオススメだ。グレのポイントとは真逆と考えた方がいい。
磯に渡礁できたら、まず波のこない安全な場所に荷物を置く。そして釣り座をどこにするのか、磯を歩いてみよう。釣り座として向いているのは、取り込みがしやすく釣りがしやすい場所だ。
私の場合、まずはタモから準備を始める。
安全と思った場所でも、一発デカい波がくるかもしれない。~かもしれないという気持ちは、磯釣りにおいて常に持っておきたい。
オススメは「速攻全遊動」
さてここからは実釣だが、クロダイ釣りに特化した「速攻全遊動」という釣り方をオススメしたい。ウキ止めを付けてウキがスパッと消し込む釣りとは180度違う釣りになるのだが、クロダイがどのタナで食うとかウキ止めの位置が……とか、考える要素が少なく、イージーに釣りが展開できるからだ。
「速攻全遊動」と言ってしまうと堅苦しいが、要はズボ釣りに近い。「沈むウキを使ってさしエサをクロダイの元へ届けましょう」という釣りだ。この釣りに必要不可欠なのは沈むウキ。釣研プログレスチヌにはスタンダードとハイグレードがある。スタンダードに比べてハイグレードは沈下速度を細分化してあり、あらゆるシチュエーションに対応できる。
クロダイはこの時期びっくりするほど浅い場所でも釣れる。例えば水深1mの底まで丸見えの場所で、クロダイの姿が確認できるような場所でも釣れる。
まきエサを効かせる
深い場所でも浅い場所でも、クロダイの居場所として意識するのは底だ。水深10mの場所であれば、10m下まできっちりまきエサを効かせる必要があるので、潮流があるとやりにくいワケだ。潜り潮が発生しているようなポイントがあれば入れやすいのだが、基本的にポイントとしたいのはまきエサがきちんと効く場所かどうかである。

いくらまきエサをしても、潮に流されてしまうようではポイントにならないからだ。ポイントを決めたら、まずはクロダイを寄せるつもりで10発以上まきエサを投入する。
クロダイ用の配合は、着水後も固まりのまま沈んでいくことに気づくだろう。グレの配合は着水後バラける必要があるが、これはグレの特性上、浮かせる必要があって拡散性が求められるからだ。
それに対してクロダイは底を意識する必要があるので、固まりのまま沈下することが求められる。よって水深がある場所ほど、クロダイ用の配合を使うことが大切になってくるワケだ。
次にしっかりまきエサを投入した地点から線で結ぶように、手前にまきエサを数発入れる。速攻全遊動は同じ場所だけを釣るのではなく、投入地点から釣り座まで全てを探ることができるからだ。
重量感あるファイトを楽しむ
仕掛けはまきエサの向こうへ投入し、サオ先を海面に入れて、ミチイトを水面下にサスペンドさせる。この動作があるのでフロートラインよりもサスペンドラインをオススメしたワケだ。
ウキは底まで沈めてしまってもいい。しばらく待ってアタリがなければロッドをあおって誘いをかける。このときラインを巻き取るので、仕掛けは手前に寄ってくる。だから導線上にまきエサを打ったワケである。
穂先から海面までの間はラインのたるみを作っておいて、そのたるみがピンと直線になったらアタリだ。

乗っ込みシーズンの荒食いであれば、ロッドごとひったくるような強烈なアタリさえある。クロダイは唇にハリを掛ける必要はない。のどの奥に掛けても切られることはないので、慌てずゆっくりアワセよう。
重量感がロッドにしっかり乗ったら、めいっぱい胴を曲げてクロダイとのファイトを楽しもう。障害物をしっかり見て、相手が突っ込みそうなら恐れずに止めにかかること。弱気になればここでラインブレイクだ。
最後に、食べない魚は元気なうちにリリースしてあげてほしい。この時期のクロダイは子孫を残すため荒食いするのだが、お腹には卵を持っているハズだ。ずっと釣れる環境を作る、残すのも釣り人としての重要な役割であると私は思う。
<週刊つりニュース中部版 東弘幸/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース中部版』2021年4月9日号に掲載された記事を再編集したものになります。The post 【中部2021】磯から狙う「乗っ込み」クロダイ 速攻全遊動釣法とは? first appeared on TSURINEWS.