スーパーなどで買ってきた貝はもちろんそのまま料理をすることが可能ですが、干潟で採ってきた貝はそうはいきません。そんな貝の下処理方法を種類別に解説します。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター尾崎大祐)
貝によって下処理方法は様々
「潮干狩りで採ってきたアサリは砂抜きしてから料理に使う」ということは多くの方がご存じだと思いますが、アサリ以外の貝の下処理は知らない方も多いかと思います。そもそも下処理自体必要ない貝から、砂抜き以外に干したり、茹でたり、洗ったりと種類によって必要な下処理は様々。
今回は東京湾奥で採れる貝を中心に、下処理方法を貝の種類ごとに、そしてランク付けしながらまとめてみようと思います。
ランクA:マテ貝

独特な形状の2枚貝であるマテ貝、実は下処理に関してはとても優秀な貝。そもそも下処理いらずで料理が可能です。さらに極論にはなりますが、採ったその場で食することも可能(自己責任にてお願いします)。
味はとてもよく、大型になるほど濃厚な旨味があります。唯一の欠点は、身(貝殻を取ったもの)がやや昆虫系の幼虫のような見た目である点。このことにより、マテ貝に対する食欲がイマイチわかない人も多いのだそうです。

ランクB:ホンビノス貝

大型船のバラスト水とともに北米から日本にやってきて、近年有名になりつつある2枚貝。エアーレーションでの泥抜きや干して旨味をだす、塩気を抜くといった下処理が必要なのですが、とても生命力が強く、結構アバウトな管理で下処理ができてしまうので「ランクB」とさせていただきました。
この貝、砂を身にためないので砂抜き自体は必要ないのですが、泥といいますか排泄物といいますか、エアーレーションをやってやると「もやもやした黒いもの」を出すので、まずはこれを抜いてやります。時間は半日から一日、場合によってはそれ以上でも大丈夫です。海水は15~20度くらいの温度が適しているようですが、多少ブレても問題ありません。

そしてこれが終わり次第、新聞紙等の上に並べ干してやります。

料理については2点ほど工夫が必要。1点目は塩抜きしたとしても、それでも塩分濃度が比較的多い貝なので味付けはシンプルに。2点目は貝殻が厚く、身も大きいことから火の通りが悪い点。アサリの酒蒸しは火にかけて殻が開けばそれでOKなのですが、ホンビノス貝はそこから中型のもので3分、大型なら5分程度の加熱が必要。私も慣れないうちは幾度か半生で食べてしまいました。
因みにこの貝と同じような考え方での下処理が必要な貝としては、アカガイによく似たサルボウ貝があります。

ランクC:アサリ

日本固有種で潮干狩りの対象として最も有名な2枚貝。「エアーレーションにて砂抜き」という王道パターンのみの下処理で基本OKなのですが、生命力が弱く、時間や温度を管理してやらないとすぐに死んでしまう貝ということで「ランクC」とさせていただきました。
まずその砂抜きですが、時間は半日程度。午前中採ってきてそのまま夕方までエアーレーション、といったパターンがベストと言えるでしょう。続けて一晩、ということもアリなのですが、何個か死んでしまって臭くなっていた、なんてこともよくあります。特に気温高い夏場は注意が必要。
多少の砂は覚悟し、半日で砂抜きを終了させた方が賢明かもしれません。因みに私はこの「一晩」で全滅させた経験が数回あります。
また、ホンビノス貝と同じく干す行為も旨味を上げるためには有効ですが、これを行う場合はアサリの生命力を考え、慎重に行った方がいいでしょう。
食味については、もはや私が言うまでもありません。天然の大粒のものは特に絶品!
因みに同じ日本固有種のハマグリやバカガイも同じような下処理でOKです。

ランクD:オキシジミ

泥地で多く見つけることができる2枚貝。因みにシジミという名前がついていますが、お味噌汁の具で有名なあのシジミとは分類的には関係なく、またオキという名前がついているにもかかわらず、沖で採れるわけでもありません。
この貝は泥や砂を多くため込んでいて、エアーレーションでの砂抜きや泥抜きに加え、(泥地で採れるものは特に)殻と身の間にもまだ砂や泥が残っているので、茹でて身を取り洗ってやることも必要。「洗ってしまっては旨味が薄まってもったいない」なんて思ってしまうかもしれませんが……この貝、そもそも独特な生臭さがある貝なので、ここは割り切っていいのかなと個人的には思っています。

食味については先にも書かせていただいた通り、独特の生臭さがあるので濃いめの味付け料理がおすすめ。しかしながら、しっかり下処理してやればとてもいい食感なのでレシピによってはおいしい食材に変身します。たくさん採れたらぜひ持ち帰ってみてください。

ランクE:シオフキ

シオフキは砂地の干潟でよく見つけることができる。貝の種類が判別できないと、ハマグリやバカガイと間違えって持ち帰り、食べてみたら砂だらけ、といった「潮干狩りあるある」がよく発生してしまう貝。
実際、食べられないことはいのですが、この貝は砂を多く含んだ上にエアーレーションで海水に入れておいても全くといっていいほど砂を出してくれないことから、「シオフキ=食べられない貝」と認識している方も多いはず。そんなシオフキ、他の貝と比べて少々手間はかかりますが砂抜きは可能です。
まずはさっと貝が口を開く程度に茹でて身を取ります。ゆで汁は良い出汁が利いているので鍋の底にたまる砂に注意しながら取っておきましょう。身を取ったら水を張ったボールに入れて手でかき混ぜます。適当な回数(30回くらい?)やると、お腹の薄皮が破れて砂が出始めるので、砂を出し切り更に身が崩れない程度までこれを繰り返します(30回×3~5セットくらい?)。

砂抜きに特化したランクなのでEと評価していますが、味については実はとてもおいしい貝。先に「ゆで汁はいい出汁が出る」と書きましたが、これを使って作る炊き込みご飯は絶品。

海水を家で作ろう
話は前後してしまいますが、砂抜き泥抜きに必要な海水はできることなら現場からペットボトルなどにて持ち帰るのがベスト。その方が貝たちは元気に口を開けてくれるからです。しかし、電車を利用するなどでこれが困難な場合は、砂抜きに使う海水は作る必要があります。目安は塩分濃度3%。500mlの水に大さじ1の塩でOKです。
また、エアーレーションの機械(ブクブク)がない場合は、海水で貝が完全に水没させるのではなく、貝殻が少し水面から出るようにして砂抜き、泥抜きしてやるといいです。一応、豆知識として。
稀に超レアな貝が採れることも!
写真右下の貝は下処理必要ないイシカゲ貝(なのでランクはAですね)。東京湾どころか全国的に見ても幻レベルの貝で、旨味、食感ともに最高レベル。海水に入れたらすぐにベロを出し、元気に動き回っていました。「元気に動き回る」はイシカゲ貝の大きな特徴なのだそうです。

たま~にですが、このような珍しい貝が採れてしまうのも潮干狩りの面白いところだと思います。
<尾崎大祐/TSURINEWSライター>
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