問診票

いよいよ解禁した福井県の鷹巣沖。完全フカセを始めたのですが、同じ仕掛けを使っていても私だけ釣れません。何が原因なのでしょう?

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・近藤惣一郎)

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ...の画像はこちら >>

診断結果

おそらくそれは最初の「手繰り出し」をしっかりできていないからでしょう。通常は10~20mラインほどですが、手繰り出したミチイト自身の重みで、仕掛けを沈め、仕掛けが通る経路をかえる役割も担っています。

同じ条件で釣っていても、自分だけ違うタナを探っていたということです。

処方箋

完全フカセでは、当日の潮の流れの向き、速さ、水深、ポイントまでの距離、魚のタナなど、海の中を三次元的にしっかりイメージし、狙った魚の居るポイントに仕掛けを送り、そこで少しでも長い間付けエサをアピールする時間、距離を保つことが、この釣りで釣果を出すコツになります。

今回は最初の「手繰りだし」はもちろん、仕掛けが潮に乗った後の仕掛けの流し方でタナを調整する方法などを交え、完全フカセ釣りの攻略法を紹介します。

完全フカセ釣りとは

魚群の潮上に船をアンカーでかけ、ハリを結んだハリスをフロロカーボンのミチイトにスイベルを介し接続したシンプルな仕掛けを、リールスプールをフリーにして数10m、時に200~300m近く流す。船から魚群までの距離や水深、潮速を考慮しながら、船上からまくコマセと付けエサが同調するイメージを持って仕掛けを送り込むと、シューッとラインが勢いよく引き出され、スプールが急回転。鮮烈な形でアタリがやってきます。

リールクラッチを入れロッドを立てアワセを入れた後は、錘や天秤などに邪魔されることなくマダイや青物の生命エネルギーをダイレクトに感じながら魚たちとやりとり。ひとたびこの釣りを体験すると誰でもこの釣りの虜になってしまうのが、完全フカセ釣りです。

兵庫、京都から福井の日本海、つまり経ヶ岬周りから若狭、敦賀、越前沖は西からの対馬海流と山々から流れ込む河川が運ぶ豊かな栄養素、そして好魚礁になりうる地形や人工漁礁など、釣りに最適な条件が整い、マダイを筆頭にブリ、ヒラマサといった青物の魚影も非常に濃いエリアです。そして、この地域独特の沖釣りスタイルが「完全フカセ釣り」です。今回はこの完全フカセ釣りについて解説しましょう!

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
魚の引きがダイレクト(提供:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

完全フカセの特徴と魅力

この釣りでは、当日の潮の流れ、向き、水深を考慮し、魚の居るところに、仕掛け=付けエサがたどり着けるよう、三次元的に海中をイメージし、仕掛け長・浮力・バランス、さらにはミチイトの出し方を変化させる必要があります。

一旦、仕掛けや、ミチイトの送り出しが上手くいくと、仕掛けを設定したタナに錘を使って沈める、天秤釣りや胴つき釣りに比べ、付けエサが自然な動きをするため、良型が掛かかってくる確率が高いのです。

さらに細かく言及すれば、魚がエサをとる「捕食層」は、魚自身が存在する「遊泳層」よりも上部に位置し、青物にせよマダイにせよ、捕食能に長けた、良型の魚・強い魚は、エサを見つけると、一目散に捕食層に浮き上がってきます。完全フカセ釣りは、食い気のある良型を「捕食層」にまで、まきエサで浮かせ、これを釣り上げる釣法なのです。

特に春、70cmを超える大ダイを核におびただしい数のマダイが群れをつくって、浅場に移動してくる警戒心の強い「乗っ込みマダイ」を狙うには、錘や天秤を用いないこの釣りは最適な釣りです。

また毎年6月16日から8月15日まで遊漁が解禁される”玄達瀬”ではメータークラスを筆頭にヒラマサ、ブリといった良型青物も仕留められます。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
良型マダイが有望(提供:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

完全フカセ釣りの楽しさは、当日の潮況にあった仕掛けと、そのミチイトの出し方を試行錯誤し、これが上手くいくと、次々と青物やマダイがハリ掛かりし、釣り人は、ライン一本で数十、数百m先の魚たちの動きや引き、つまり「生命エネルギー」を、錘などの混ざり気なく、直に感じながら、やりとりを堪能できるところにあるのです。

用意するタックル

フカセ釣りでは、仕掛けを徐々に沈めていくことが必要であり、PEラインとは異なり比重が大きく、海水に沈むフロロカーボンをミチイトに使用します。またフロロカーボンのクッション性が、大物が掛かった際でも、ハリス切れを防ぎます。

ライン径は7号。マダイ狙いなら6号でもいけますが、ミチイトが細いことは、殆どメリットがありません。ミチイト径が細いと、青物が掛かった際、根擦れで切れたり、経験上やりとりの際、ハリスへの負担が大きくなりバラシが多くなります。

潮に仕掛けを乗せ、潮下に送り込むこの釣りでは、まず、第一に、リール性能が大きく釣果に影響します。殊にスプールフリーでの、回転性能がよくなければなりません。回転がスムーズでないと、仕掛けが上手く潮に乗ってくれません。潮が緩い時なら、せいぜいミチイトを100mほど出すまでにヒットすることが多くなりますが、玄達瀬など潮が速いときには300m近くミチイトを送り込む必要があります。魚が掛かったときは勿論、仕掛けを回収する際にも、電動リールは必須です。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
私のタックル(提供:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

10数年前から、クラッチフリーでの電動イト送り機能や魚がミチイトを引っ張り出した時に、クラッチが自動的に入る機能を備えたフカセ釣り専用リールを利用するアングラーがほとんどです。

イト巻き量はフロロ7号で300mは必要となり、ダイワなら500番クラスです。 

ロッドは、以前は天秤コマセ用に開発されたマダイロッドの錘負荷50号3mほどの長めを用いていました。最近の沖釣りは、手持ちを意識して、軽量のショートロッドが主流になっていますが、フカセ釣りでも同様で、マダイなら2~2.5mのゲームロッド、玄達のヒラマサ狙いならバットパワーのある2mほどの大物ワンピースロッドがいいです。

近年はリールの性能も向上し、大物がヒットしても引き寄せられるようになりました。ロッドが長いと大物が掛かった時に振られて動きがコントロールしにくいこと、またガイド数が多いとそれだけスプールフリーで仕掛けを流す時の抵抗が大きくなり、フロロカーボン7号のミチイトの出が悪くなることもデメリットです。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
完全フカセタックル(作図:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

仕掛け

まきエサ、ハリに付ける付けエサともオキアミ。まきエサのオキアミブロックは海水に浸し、自然解凍します。まきエサであってもつぶしてしまうと、比重にばらつきが出てよくありません。大抵、半日の釣りで、まきエサは一人3ブロックほど。付けエサにするオキアミは、眼が取れていない形のしっかりした大きなものを選び、2匹の抱き合わせ。エサ取りが多い時や、青物狙いの場合はイカの切り身をサンドすることもあります。

ハリは重量を抑えたものがよく、マダイ狙いなら伊勢尼12号。大ダイなら同13号。

玄達でのヒラマサ・ブリ狙いでも、フカセ釣りの性質上、ハリは小さく、軽めのものを用います。具体的にはヒラマサバリ11、12号。ハリが重くなると、付けエサが沈み、釣果は極端に悪くなるのです。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
ハリは小さく軽めで(提供:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

フカセ釣りの仕掛けは、シンプルで、基本的にハリスとハリのみ。1本バリでも可能ですが通常は2本バリ。枝ハリス接続には仕掛け重量を上げないためにも、金属スイベルは用いず、編み込みか絡み止めビーズを。

多数ハリを使う理由は、タナを探るといった意味よりも、魚へのアピールを高めること、長い距離、仕掛けを流す間、エサ取りの攻撃から逃れ、付けエサを保つといった意味合いが強いです。 

マダイ狙いなら、フロロカーボンハリス5~6号、長さ8~10mの2本バリ、青物狙いはハリス7~10号、長さ6~8m。メータークラスのヒラマサでもこのハリス径で仕留められるのは、ミチイトにクッション性のあるフロロカーボンを使用するためです。

これらの仕掛けとミチイトの接続部に用いるスイベル(4~8号)のサイズ・個数の調節や、この部位に発泡スチロール素材の浮力体:発砲浮き(6~8号)を固定することで、仕掛け重量のみならず、仕掛けの潮受けを変化させ、当日の条件にあった最適な仕掛けの流される経路を探り出すのです。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
使用する発泡浮き(提供:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

仕掛けの投入と手繰り出し

魚の感度をとらえたら、船長がその潮上にアンカーを打って船をかけます。どの程度潮上かは、当日の潮流速、水深、船長の考え方にもよります。船上からまきエサ(オキアミ)をまき、狙った魚を潮下に集めるのです。

まきエサは、少量をとぎれないようにまくのがコツです。

仕掛け投入前後、丁度自分の仕掛けをサンドするように、まきエサを行います。エサを付けた先バリ、そして枝バリの順に仕掛けを海に投入したら、引っ張られるテンションをなくし、仕掛けが潮にスムーズに乗って流れるように、いわゆるミチイトの「手繰り出し」を行います。

通常は10~20mラインほど。この「手繰り出し」は、手繰り出したミチイト自身の重みで、仕掛けを沈め、仕掛けが通る経路をかえる役割も担っています。「手繰り出し量」が多いとそれだけ手繰り出したフロロカーボンのミチイト自身の重みで、仕掛けは初めから沈み、そこから潮に乗って流れはじめるようにできるのです。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
流し方のコツ(作図:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

たとえば水深が70m以上ある深場などタナが深い時、仕掛け重量を増し、沈みを早くしてしまうとマダイ、特に良型マダイのヒットする確立は下がってしまいます。しかし、このテクニックを用いれば、深場であっても、仕掛け重量は増やさないまま、ふかせるように自然に、マダイが居るポイントで付けエサをゆっくり漂うように沈ませることができるのです。

また、二枚潮時、手繰り出し量を多くすることで、底潮とは逆方向の上潮に乗って仕掛けが魚の居るポイントとは逆向きに流れてしまうことを防ぎ、早く魚の居る底潮に仕掛けを入れ、イトふけも減らし、アタリを出しやすくできる貴重なテクニックにもなるのです。

仕掛けが潮に乗ると、やがてフリーにしたリールスプールが回転し始めます。以後、潮に任せてミチイトを出せばいいかと言えば、必ずしもそうではありません。

クラッチを切ったフリーの状態で、リールスプールのブレーキを緩めたり、フカセ専用リールに装備されたイト送り機能を用いて、スプールの回転を速めると、ミチイトのテンションが減り、仕掛けは沈みがちになりながら、より速く潮下に運ばれます。

逆にブレーキをきかせスプール回転を絞ると、沈降速度は減じ、仕掛けは張りながら、浮き上がり気味となります。当日の潮の流れの向き、速さ、水深、ポイントまでの距離、魚のタナなど、海の中を三次元的にしっかりイメージし、狙った魚の居るポイントに仕掛けを送り、そこで少しでも長い間付けエサをアピールする時間、距離を保つことが、この釣りで釣果を出すコツになります。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
凪の玄達瀬(提供:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

回収と付けエサ確認

その日の潮にもよりますが、ミチイトの傾きが海面に対して30度の場合、出したライン長の半分がハリの位置する水深になります。つまり60mをカウンターが示せば、ハリは水深30mにあります。とりあえず、潮が緩いときは水深の2倍程度、たとえばポイント水深が60mなら120m、また潮が速いときは3倍の200mほど、仕掛けを流し、回収します。

この時、付けエサが残っていれば、次回の投入ではもうすこし潮下まで仕掛けを送り込むか、仕掛けの沈みを早めるため、スイベル重量を上げたり、個数を増やしたり、ウキを取ってみたり変化を加えます。

逆に回収した仕掛けに、付けエサがなくなっている場合は、本命が居るポイントにたどり着くまでに仕掛けが早く沈みすぎ、エサ取りにエサがとられていると判断します。その際は、サルカンサイズを小さくしたり、より浮力のある発泡浮きを使用したり、ミチイトの出し方を多少絞り気味にして、仕掛け経路を浮かせてみます。こうして、付けエサが残り出せばチャンス。本命がいれば、ヒットしてきます。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
ヒラマサをキャッチ(提供:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

アタリとアワセ

アタリは、鮮烈に訪れます。潮の流れで静かに回転していたリールスプールが、突如、唸りをあげて急回転。この釣りを行う釣り人が味わう至福の瞬間です。しかし、慌ててサオ先をあげアワセを入れると、リールがバックラッシュして、魚を逃してしまいます。

まず行うことはリールクラッチを入れること。この時点では、魚がエサをくわえているだけで、ハリ掛かりしていない場合も多く、魚は異変を感じれば、これを吐き出してしまう場合もあります。先述のフカセ専用電動リールなら、ラインの出を感じ取ると自動的にクラッチが入るので安心です。

クラッチを入れた後も慌てず、特に二枚潮などで、イトふけが多いときは、イトふけを取らせるべく魚を走らせて多少待ちましょう。ミチイトが張り、サオ先がグッと曲がり込んだら、サオを立て、アワセを入れます。この時、未だイトふけがある時は、電動レバーで急速に巻き上げ、イトふけを取り除きます。

やり取り

根に入りやすいヒラマサ狙いの場合、ドラグは目一杯締め込んでおきます。粘りのあるロッドでフロロカーボン7号のミチイト、ハリス8号以上を用い、確実にハリスにハリを結んでいれば、ドラッグを締めすぎでいることでハリス切れを起こすことは殆どありません。ドラグが緩いとラインが出て根に入られたり、テンションが下がり、ハリ外れのバラシ原因になることも多いのです。 

錘を用いない完全フカセは魚の生命エネルギーがダイレクトにロッドをしならせます。良型であれば、絞め込んだドラグであっても、ミチイトが「ジッ、ジッジー」と引き出されます。この最初の抵抗が落ち着いたら電動中速で、ラインを巻き上げていきます。出ているライン長や水深を考慮して根に入られるリスクがなくなった時点から、上手くドラグを調整して慌てずやりとりしていきます。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
大物がヒット!(提供:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

途中、魚が引き込みを見せた際は、サオの弾力を活かし耐えます。青物でも大ダイでもこのような強い引き込みが数回訪れますが、慌てることなく、時間をかけてやり取りしましょう。

仕掛け接続部の発砲浮き、サルカンが見えたら、サオをキーパーに置き、ハリスをつかんで手繰ります。蒼い海から大ダイやヒラマサ、ブリが現れる瞬間は、何度味わっても至福の時。同乗者と協力して、慌てずタモ入れしましょう。

中部、関西地方の方は勿論、関東はじめ他の地域にお住まいの方も是非今回の記事を参考に、魚の生命エネルギーをダイレクトに体感して、大ダイ、ブリ、ヒラマサを完全フカセ釣りで仕留めてください!一度経験すれば、誰でもこの釣りの大ファンになるはずです。

Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕
鷹巣沖で仕留めたブリ(提供:TSURINEWSライター近藤惣一郎)

完全フカセ釣りでブリを釣り上げる動画をYouTubeにアップしています。魚の生命エネルギーをダイレクトに感じながら行うやりとりを、ぜひご覧ください!

【ロンリー侍ドクター 日本海 船での完全フカセ釣り 鰤(ぶり)と1本勝負!Fishing Yellowtail vie FUKASE TSURI (No Sinker Fishing)】



<近藤惣一郎/TSURINEWSライター>

The post Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:日本海「完全フカセ」釣り開幕 first appeared on TSURINEWS.

編集部おすすめ