少しずつ寒さが増してくる秋、多くの食材が旬を迎えますが、中でも秋を代表する味覚と言えば「サンマ」は欠かすことのできない存在でしょう。サンマは身だけではなく、内臓もほろ苦く大人な味で美味しいですが、なぜ苦いのに美味しく感じるのでしょうか。

調べてみました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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サンマの内臓は食べられる

焼き魚の代表格的な存在である「サンマ(秋刀魚)」。

香ばしく焼いたサンマの塩焼きは『内臓付きで丸ごとガブリ』と食べる方もいれば「いやいや内臓はちょっと……」と内臓を避けて食べる方で意見が分かれると思います。

サカナの種類のよっては、内臓が珍味になっていたりすることもありますが、サンマに関しては、多くの大人が好んで食べているのはなぜなのでしょうか?

サンマには胃が無い

まず、サンマがなぜ丸ごとガブリと食べられるかというと、サンマは『無胃魚(むいぎょ)』といって、胃がないサカナなのです。

胃があるサカナは私たち人間と同じように、口から食べたものを胃で貯蓄・消化して腸へ送り出し排出をします。

しかし無胃魚のサンマは口から食道を通り、直接腸で消化・吸収、排せつを行います。

そのため胃に食べ物が留まることがないので、内臓は常にスッキリしているのです。

消化時間は30分?

無胃魚のサンマは、プランクトンなどそれほど消化の必要がないものをエサとして食べています。なんと、口から食べて排出するまでの時間はおよそ30分。

逆に胃があるサカナ、例えばマダイの場合は硬いエビやカニなどを食べるため、消化するのに10時間ほどかかります。

釣ってきたサカナのお腹を開いたときに以上に臭い時がありますよね?あれは胃の中で消化中だった物が腐敗しているからなのです。なので、胃のないサンマに関してはお腹を開いても全く嫌な臭いがしないのです。

サンマが内臓まで美味しい理由は胃が無いから 排泄までまさかの30分?
秋の味覚「サンマ」(出典:PhotoAC)

夜はエサを食べない

サンマは日中にエサを食べ、夜は何も食べない習性を持っています。

サンマ漁は、夜間に行われますが、あれはエサでおびき寄せているのではなく、サンマが光に集まる習性を利用して捕獲しています。集魚灯という強力なライトを海面に当ててサンマを一か所に集め、すくい上げる方法です。

夜間に捕獲されたサンマの胃はもちろん空っぽなので、胃の中を洗浄するような特別な処理をすることはありません。

味はほろ苦く大人な味

サンマの内臓がなぜ苦いのかというと、それはある臓器が苦みを持っているからです。サンマの内臓は基本的に苦味がありません。脂がたっぷりとのった内臓はむしろ脂で甘みを感じるほどです。

しかし、唯一、胆のうの胆汁だけが苦味を持っています。

サンマに関しては適度なほろ苦さがアクセントとなり、大人な味を演出していますが、他のサカナに関しては、「潰したら身に苦みが移る」からと、絶対に潰してはいけない臓器と言われるほど苦い味をしています。

胆のうも美味しく食べられるサカナはサンマだけなのです。

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苦みのある大人な飲み物「コーヒー」(出典:PhotoAC)

大人が美味しいと感じる理由

しかし、ここで疑問が生まれます。

子供の時には飲めなかったコーヒーや食べられなかったサンマの内臓、20歳では飲めなかったビールなど、若いころには口にできなかった苦いものはありませんか?

子供や若い時には絶対に食べられなかった苦い物がどうして大人になったら食べられるようになったのか。

「苦みに慣れた」「舌が肥えて苦みを旨味に感じるようになった」などとポジティブに捉えている人も多いかもしれませんが、実は真逆で、身体的にはある器官が少なくなっていると言います。

この器官の名が味の感覚器である『味蕾(みらい)』です。この味蕾の数は大人と子供で比べると、子供の時の方が倍ほど多く、大人になるにつれてどんどん少なくなっていきます。

これには大きな理由があり、子どもは小腸のバリア機能などが十分発達していないため、変なものを食べてしまわないように味蕾が鋭敏になっていると考えられます。

味蕾はもとから備わった自己防衛器官なのです。

大人になるにつれて、味や危険なものは学習し、食べなくても毒かどうか事前に認識できるようになるため、味蕾は必要以上にいらなくなり、少しずつ減少していくと考えられています。

味には敏感でいたい

食べられるものが増えるということは、聞いているだけだといいことが多いように聞こえますが、ただ味に対して鈍感になっている可能性も大いにあります。

若いころに苦かったものを、年を重ねても苦いと感じられることが若さを維持している指標になるかもしれませんね。

<近藤 俊/サカナ研究所>

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