小アジ釣りで釣趣を求めるなら、忘れてはならないのが一本釣り。これはノベザオに1本バリの仕掛けという、シンプルな道具で楽しむ釣りのことだ。

今回はアジを、この一本釣りで楽しむ方法を紹介する。

(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味と...の画像はこちら >>

アジ一本釣りのススメ

今、堤防周りの小アジ釣りといえば、サビキ釣りと、ルアーを使ったアジングが9割以上を占めるのではないだろうか。数を釣るならもちろんサビキが有利だし、手軽でフットワークのいいアジングもまた捨てがたい。

しかしシンプルな仕掛けの一本釣りも忘れてはならない。その最大の魅力は、何といってもダイレクトな釣り味。小アジとはいえ、この時期になれば20cm級に成長しているものも多く、その引きは侮れない。ヒュンヒュンとイト鳴りさせるスリリングな駆け引きは、一度味わうとやみつきになってしまう。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
一本釣りも手軽に楽しめる(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

また、道具がシンプルなので誰でも楽しめることも魅力のひとつ。門戸が広く、それでいて奥は想像以上に深い。初心者からベテランまで、退屈することはないだろう。

とはいえ短所もない訳ではない。リールを使わないので探れる範囲が限られる、というのはその最たるものだ。足場の高さや水深によっては、釣り自体が成立しないことも多い。

条件さえそろえばベイエリアでも楽しめなくはないが、どちらかと言えば足場が低く、水深もそれほど深くない漁港周りに向いた釣りだ。

タックル

アジ一本釣りの基本的なタックルを紹介しよう。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
タックル図(作図:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

サオ

一般的な渓流ザオなどの他、ヘラザオなども流用できる。長さは釣り場にもよるが、おおむね3.6~5.4m程度。この長さになると安価なグラスロッドでは持ち重りするものも多いので、予算が許せば軽量なカーボン製を選びたい。あまり軟調のものは操作性に欠けるため、やや張りのあるものがオススメだ。

釣り場によってはさらに長いサオがほしくなることもあるが、そんな場所はそもそも一本釣りには不向き。サオが届けば狙ってみるのもいいが、そうでなければ他の場所を探す方が賢明だろう。

仕掛け

海の小物釣り用として市販されている。なければ川釣り用やハゼのウキ釣り仕掛けなども流用できるが、イトさえ結べるなら自作するのが手っ取り早い。

イト

ナイロンラインまたはフロロカーボンラインの1.5号前後。ハリスは長さ30cm程度で、アジのサイズや外道の有無によって0.6~1.2号程度を使い分ける。ミチイトとハリスは直結でもいいが、サルカンやハリス止めを使用すると便利だ。

ハリ

アジバリ、袖バリ、チンタメバルなど、細軸で刺さりのいいものがオススメ。サイズは6~8号を中心に、アジのサイズや使用するエサに合わせて使い分ける。

ウキ

小型の電気ウキか、明るい所なら普通の棒ウキでもいいだろう。水深の浅い場所ならゴム管を使った固定式、深場ならウキ止めとシモリ玉を使った遊動式が扱いやすい。オモリは割りビシやガン玉を、ウキの浮力に合わせて使用する。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
遊動ウキのセット方法の一例(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)


簡単で面白い!のべ竿ルアーフィッシングのススメ【三重県・四日市市】 - TSURINEWS


釣り入門に必要なお金のコト 人気のアジングやメバリングは3万円前後? - TSURINEWS

紀伊長島漁港で実釣

今回釣行したのは、三重県・紀北町の紀伊長島漁港。随所に常夜灯が設置されているため、光に集まる習性を持つアジを狙うにはもってこいの場所だ。もちろん夜しか釣れないという訳ではないが、ポイントを常夜灯周りに絞り込める夜のほうが圧倒的に狙いやすい。

現地に到着したのは日没直前。今回は慣れた釣り場なので問題ないが、初めての場所では駐車スペースや危険な箇所、水中の状況など、暗くなる前に確認しておくべきことがたくさんある。なるべく明るいうちに到着し、余裕をもって準備できるようにしたい。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
足場が低い漁港などが釣りやすい(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

当日のタックルは4.5mの渓流ザオにミチイト1.5号をサオいっぱい、ハリス止めを介してハリス0.8号を30cm、ハリはアジバリ6号といったところだ。ウキは中サイズの電気ウキを遊動式で使用し、割りビシ中サイズをハリス止めの上にセット。エサはオキアミのSサイズだ。

ウキ下の調整を正確に

最初のポイントは、足元で水深4~5m程度。潮位は高いが、満潮手前ということもあって流れはない。

勝負は下げ潮が効き始めてからになるだろうが、夜からは雨の予報。星が見えるのでしばらくは大丈夫そうだが、できれば早めに切り上げたいところだ。

この釣りで重要なのが、ウキ下の調整。要は魚のいるタナ(水深)に合わせる訳だが、通常はやや浅めから、少しずつ深くして探るのがセオリーだ。反応がなければ深く、逆にウキが寝るなど食い上げのアタリが出る状況なら浅くしていく。

またゲストが多い場合、意図的にそのタナを外すことでゲストを避けるという戦略もある。たかがウキ下、と侮るなかれ。これだけで釣果に大きな差が出るのだ。

開始早々本命&ヘダイ登場

当日は潮が効いていないこともあり、活性は低いと予想し2ヒロ(1ヒロ=約1.8m)のウキ下でスタート。しばらくするとウキが静かに水中へと引き込まれ、17cmほどのアジが姿を見せた。このサイズでも十分な手応えを味わえるのが、ノベザオのいいところだ。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
ヘダイが顔見せ(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

続けて、ちょっと元気のいいヤツがきたと思ったら手のひら級のヘダイ。いろいろな魚が釣れるのも、この釣りの魅力だ。

しかしその後はアタリも散発で、思うように数が伸びない。そこでウキ下を50cmほど深くするといい反応があった。

思わぬ大物ヒット

しかし4.5mのサオではミチイトの長さに余裕がなく、ウキの位置もほぼサオ先だ。そこでサオを5.3mに変更し、ウキ下を2ヒロ半にしてみると、15~17cmほどのアジが安定して釣れるようになってきた。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
ウキ釣りでの釣果(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

そんななか、予想外の大物がヒット。この重量感は、どう考えてもアジではなさそうだ。こんなときはしっかりとサオを曲げて、その反発力を利用して魚を浮かせる。

とはいえ、単純にサオを立てればいい、という訳ではない。イトの角度によっては、サオを起こしすぎると先の細い部分に負荷が集中して破損することもある。先調子のサオや短いサオほどその傾向が強いので注意が必要だ。

35cm級キビレゲット

基本的に釣りザオというものは、負荷が大きくなるにつれて先端から手元へとカーブの頂点が移動していくように設計されている。反発力を最大限に生かすためには、カーブの頂点ができるだけ太い部分になるよう曲げることが大切なのだ。

やがて観念したのか、魚が浮いてきた。最初はシーバスかと思ったが、よく見れば35cm級のキビレ。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
サプライズゲストはキビレ(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

サオで抜くのは厳しそうなので、ラインをつかんで慎重に抜き上げた。こんなサプライズゲストも楽しみのひとつ。悔しい思いをしないためにも、イトの強度には余裕を持たせておきたい。


5分でわかる『陸っぱりアジング』入門解説 これなら誰でも出来る! - TSURINEWS


陸っぱりエサメバル釣り入門 【道具・エサ・良型手中のコツを解説】 - TSURINEWS

ミャク釣りに変更

無事にキャッチできたところで仕掛けを変更。今度はウキ釣りではなく、サオでアタリを取るミャク釣りだ。教科書的に言うなら、一定のタナを集中して狙うならウキ釣り、広く探りたいときはミャク釣りとなるのだろうが、そんなに堅苦しく考える必要などない。そのときの気分で使い分ければいいだけの話だ。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
ジグヘッドのミャク釣りも面白い(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

ウキ釣りの仕掛けからウキだけ外してもいいが、今回はジグヘッドを使ってみた。ミチイトはフロロカーボンライン0.8号をサオいっぱい、その先に0.4gの軽量ジグヘッドを直結する。ハリとオモリが一体になっているので、仕掛けは超シンプルだ。

エサはまっすぐに付けよう

本来ジグヘッドはワームをセットして使うものだが、エサとの相性も悪くない。特にムシエサとの相性は抜群だが、今回は手元にあったオキアミを使用した。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
エサはまっすぐセット(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

ここで注意したいのが、エサの付け方。普通のハリにしてもジグヘッドにしても、エサはまっすぐに付けるのが基本だ。

曲がっていると誘ったときにクルクル回り、魚に見切られるだけでなく、イトヨレの原因にもなる。地味な部分だが、釣果にも大きく影響するので意識しておきたい。

海底付近を攻め2ケタ突入

魚が浮いていれば表層のスイミングやカーブフォールで探ってもいいし、場合によってはオモリを使わない完全フカセも面白いだろう。今回は魚が底ベッタリなので、海底付近をフワフワと漂うように誘ってみた。

ルアーロッドの場合、軽量ジグヘッドで深ダナを正確に探るのは意外にも難しい。でも、ノベザオならイトの長さが一定なので、ジグヘッドの位置も把握しやすい。ここから釣果は一気に2ケタへと突入した。

ここでふと空を見ると、あれだけ出ていた星が雲に隠れている。まだ降りそうな気配はないが、土産も十分に確保できたので、最後にもう1カ所だけ探って終了としよう。

28cm良型カサゴキャッチ

という訳で移動したのは、水深3m前後のポイント。ジグヘッドをカーブフォールさせると、表層から少し下でポツポツとアジがヒットする。それに交じって釣れてくるのは厄介者のクサフグ。本来なら暗くなると活性は下がる魚だが、明かりのある場所では夜でも元気いっぱいだ。

そこでフグを避けるため、やや薄暗い範囲を探ってみると強烈なアタリ。トルクのある引きで、一気にサオ先が絞り込まれた。

やがて浮かんできたのは大きなカサゴ。これは尺に届いたかとメジャーを当ててみたが、残念ながら28cmとわずかに届かない。それでも陸っぱりではなかなか拝めないサイズだけに、迫力がすごい。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
ボトムで良型カサゴ(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

ここで時計を見ると午後7時半。まだ少し早いが、釣果としてはもう十分だ。今回は2時間ちょっとの釣りだったが、ノベザオ1本で十分に楽しむことができた。これからの時期は、場所によってメバルも多く交じる。次回は良型メバルのパワフルな引きも味わいたいものだ。

出先で手軽に楽しもう

この釣りは狙う範囲に制約こそあるものの、いいポイントを探り当てれば釣果は十分に期待できる。道具も比較的コンパクトで、車に常備しても邪魔になることはないだろう。エサのオキアミは海の近くなら比較的入手しやすいので、出先でも手軽に楽しめる。

今回は紀伊長島方面だったが、他にも鳥羽~志摩方面、南伊勢、尾鷲周辺など有望なポイントが数多くある。地域によってはそろそろ時期的に終盤となるところもあるとは思うが、現状を見る限り、まだしばらくは十分に期待できそうだ。

ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは?
釣趣満点の一本釣りをぜひお試しあれ(提供:週刊つりニュース中部版APC・浅井達志)

魅力的なスポットが目白押しの三重県南部。お伊勢参りや熊野詣も兼ねて出かければ、楽しい時間が過ごせるだろう。この年始、ちょっと出かけてみてはいかがだろうか。


海の陸っぱり釣り超入門 【場所やポイント関連の用語をまとめて解説】 - TSURINEWS


ハゼのミャク釣りステップアップ解説:「ミチイトの素材」を比較検証 - TSURINEWS

<週刊つりニュース中部版APC・浅井達志/TSURINEWS編>

▼この釣り場について
紀伊長島漁港
この記事は『週刊つりニュース中部版』2022年1月7日号に掲載された記事を再編集したものになります。The post ノベザオで楽しむ『アジ一本釣り』のススメ 独特過ぎる釣り味とは? first appeared on TSURINEWS.
編集部おすすめ