千葉県習志野市にある、東京湾の『谷津干潟(やつひがた)』を、シーバス釣り愛好家が紹介。自然観察センターの取材や所長へのインタビューも行い、干潟や東京湾を取り巻く環境変化を伝えます。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

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東京湾のオアシス『谷津干潟』

千葉県習志野市にある『谷津干潟(やつひがた)』は、それほど大きな干潟ではないが、国指定谷津鳥獣保護区、ラムサール条約登録地、日本の重要湿地500指定地に含まれた大変貴重な干潟だ。

東京湾最奥のオアシス『谷津干潟』 生物の楽園に迫る環境変化とは?
谷津干潟(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

概要

東京湾の最奥にあたる千葉県習志野市に位置し、元々あった広大な干潟が1970年代に行われた埋め立てにより残された、面積が約40haの長方形な海、それが『谷津干潟』です。

様々な魚が生息

東京湾とは2本の水路でつながっていて、様々な魚が干潟にやってくる。ルアーフィッシングでお馴染みのシーバスやクロダイも生息していて、昼間でも干潟の水路付近で小魚を追う姿が見られる時もある。とは言っても釣りは禁止だ。近年、魚の大量死や農薬などによる水質汚染が叫ばれる中、東京湾に残された最後のオアシス、聖地と言ってよいだろう。

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干潟は水路で海とつながっている(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

身近な自然「干潟」

干潟自体は沿線からも見ることができ、もっと近くで見たければ歩いて側まで行けるし、さらに詳しく干潟を観察したければ観察センターもある。観察センターまでは遊歩道も整備されていて、広大な干潟を見ながらウォーキングも楽しめる。

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整備された遊歩道(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

身近な自然と言うと、公園の森林などをイメージする方も多いが、水辺にも自然に触れる機会は存在する。今回はそんな身近にある水辺の自然、『干潟』その中でも安全に楽しく干潟を観察できる、谷津干潟観察センターを直接取材したので、職員の方のインタビューも交えてご紹介したい。

三角干潟と本干潟

谷津干潟は、東関東自動車道を堺に南船橋駅側の、通称『三角干潟』と、谷津駅側の『本干潟』の2つで構成される。三角干潟は、本干潟と何本かの水路でつながっている。側に大型ホームセンターなどがあり、徒歩でフェンス越しに干潟の全部を間近に見る事ができる。

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三角干潟からの水路は流れがある(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

谷津干潟自然観察センター

自然観察センターがあるのが本干潟の方だ。今回訪れたのはちょうど満潮時だったが、干潮時はその景色がガラリとかわり、見られる生物もかわる。水鳥はさすがに多く、干潟のどの場所からでも様々な鳥が見られる。ちなみに、遊歩道でもキジバトなどがすぐ側で見られるから驚きだ。

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自然観察センター入口(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

充実の施設

施設内には、カフェや広大な干潟を一望できる屋根付きの観察スペース、おみやげ屋、キッズスペースなどもあり、とても充実している。また、谷津干潟の歴史や生物、野鳥などを詳しく解説したパネルなどもあり、1日いても飽きることがない。これならお子様連れでも十分楽しめると感じた。

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地下にも観察スペース(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

館内には専門のレンジャーがおり、観察会や館内のガイドもしてくれる。水鳥が休める陸地を隔てて、淡水の池もあり、運がよければカワセミやカルガモの親子などもカフェからすぐ間近に見る事ができる。

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レンジャーに案内を頼むこともできる(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

詳しくは公式HPを確認してほしい。

荒尾所長への取材

安全に、そして詳しく水辺の環境が学べる谷津干潟観察センター。所長を務める荒尾一樹さんに直接話を伺った。

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自作パネルを前に説明する荒尾所長(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

Q1.見所は?

荒尾所長:野鳥が有名ですが、鳥以外にもエビやカニなど、干潟の生物を色々見て、興味を持ってもらいたいですね。

Q2.どのような人に見てもらいたい?

荒尾所長:色々な方に来場していただき、この谷津干潟を知ってほしいです。また、色々なイベントも開催しているので参加して欲しいです。そして、1人でも多く環境保全に関わる人材が育ってほしいです。

Q3.干潟の変化は?

荒尾所長:外来種のホンビノス貝が増え、漁業利用のない谷津干潟では増えすぎてしまっています。それによりアサリなどが生息域を追われ、減っています。このままホンビノス貝が増え続ければ、東京湾からの水路の水の流れを妨げる恐れもあります。そこで、ホンビノス貝を役立てる潮干狩りイベントなどにも注目してほしいですね。

それから、近年谷津干潟でもクロダイが増えて来ています。明らかに生態系が昔とかわってきていますね。そして、これはここ(谷津干潟)だけの問題ではなく、東京湾全体の環境の問題でもあります。

東京湾あっての谷津干潟です。

東京湾最奥のオアシス『谷津干潟』 生物の楽園に迫る環境変化とは?
イベントはプログラム表で確認可能(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

Q4.釣り人へのお願いは?

荒尾所長:私も釣りをするので気持ちはわかりますが、干潟はもちろん釣り禁止です。東京湾と干潟をつなぐ水路で釣りをする人がいるので、これも止めてほしいです。

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干潟での釣りは禁止!水路も禁止だ(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

館内の設備

荒尾所長からは貴重なお話が聞けた。館内には備え付けの双眼鏡などもあり、より身近に干潟の生物を観察できる。職員の方に言えば貸し出しもできる。双眼鏡は持ち込みもOKだ(入口のお土産屋さんでも購入可能)。

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双眼鏡は貸し出してくれる(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

カフェ

また、館内のカフェでは、スイーツはもちろん、谷津干潟で採れたホンビノス貝を利用したラーメン、『谷津干潟ラーメン』などを堪能できる。筆者はこの『谷津干潟ラーメン』を注文したが、貝の旨味が十分に引き出され、それでいて少しも塩っぽくない、非常においしいラーメンであった。

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落ち着いた雰囲気のカフェ(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

バードウオッチング

また先にも述べたが、運が良ければこのカフェから見える淡水池で、カワセミやカルガモの親子などが間近に見られるそうだ。猛禽類などもやってくるそうだが、そうするとカモなどはいなくなってしまうらしい。カワセミやカルガモがいなくても様々な野鳥が見られるので、普通でも十分楽しめる。

平日はゆっくりできるが、週末はそれなりに混雑するそうだ。落ち着いたカフェで、野鳥と広大な干潟を見ながら、目の前の干潟で採れた貝を使ったラーメンを食べる……これこそ究極の贅沢ではないかと筆者は感じた。

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谷津干潟で採れたホンビノス貝を使ったラーメン(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

谷津干潟自然観察センター TEL:047-(454)8416 FAX:047-(452)2494

東京湾と干潟の重要性

荒尾所長のインタビューの中にもあったが、東京湾あっての谷津干潟であることは観察センターからもよくわかる。干潟には、エビやゴカイ、小魚など多様な生物が生息しており、それをエサとする水鳥や野鳥などが集まり、干潟の環境と水質を守っている。

干潟は生命を集め、育む海のゆりかごといってもよい貴重な存在だ。海が干潟を育て、干潟がまた海を育てる。本来の環境はこうあるべきだと筆者は思う。

毎年アサリやシジミ採れなくなっても、都会の川で魚が大量に死んでも、多くの人は生活に困らないだろう。しかし、気が付けば秋の味覚のサンマは毎年のように不漁で、イカナゴも採れない。秋鮭やスルメイカ、秋田のハタハタも不漁続きだ。明らかに海の環境はかわってきている。それは、私達に身近な干潟でも同じことがいえる。

クロダイや外来種の貝が増え、アサリやゴカイなどが減って来ている。全てはつながっているように思う。環境は時間をかけてすこしずつ悪化するものだと気付かされる。

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重要な役割を持つ干潟(提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)

釣り人として感じることも

筆者はルアーフィッシングで主にシーバスを狙うが、やはり毎年すこしずつではあるが、釣れる魚の種類や場所がかわってきていることに気付かされる。

釣りはどの釣りでも楽しいし、そして奥が深くウデを磨くのは一生続く。しかし、それができるのも豊かな海と自然があってこそだと忘れてはならないと強く思う。


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<宮坂剛志/TSURINEWSライター>

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