地震や火山噴火が発生するたびに、全国各地で「魚が異常に群れていた」「普段見かけない魚が打ち上がった」といった報告が相次ぎますが、本当に関連性はあるのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
水路に魚の大群出現
3月20日頃、千葉県市原市内の水路に、突如魚の大群が登場し、話題となりました。
海から2kmほど離れた場所にある幅3mほどの水路の水面は、20~30cmほどの魚でみっちりと埋め尽くされたといいます。

地元の人の中には「この魚の大群は地震の影響によるものかもしれない」と心配している人もいるといいます。
ボラの遡上はよくあること
今回市原市で見られた大群の魚は、ボラの幼魚と見られます。実は、ボラが海に続く川や水路を遡上することは大変有名で、全国各地でごく当たり前に見られる現象です。
浅い汽水域を生息地として好む彼らは、餌を探したり天敵の魚食魚から逃げるために、しばしば大群で川に入り込みます。なので今回の現象も含め、ボラが河川や水路に入り込むことと地震・噴火のような災害とは、基本的に関係ありません。

このボラと同様に「ナマズが暴れると地震が起こる」「深海魚が打ち上げられると地震が起こる」といった、天変地異と魚の行動を関連付けた迷信は世界中に存在します。
これが事実なら地震予知などにつなげることができるのですが、残念ながらその関連性を否定する研究論文がいくつも発表されています。現時点で「地震や災害を予知する魚」はまだ見つかっていません。
正しい知識とメディアの成長
今回はボラの大群が目撃される数日前に、東北地方で最大震度6強の強い地震が発生し、千葉県内でもやや強い揺れや停電などが発生しました。そのため今回のボラの群れを「地震と関係あるのか」と考えた人がいたり、メディアがそれを取り上げるのも理解できないことではありません。
しかし、このような「地震の前触れ」と言われるような自然現象(宏観異常現象)のなかで、科学的にはっきりとした関連性が証明されているものはほとんどないようです。

むしろこういった事が言われることで「あの出来事が災害と関係していたに違いない、分かっていたら避難できたのに」と事実でない思い込みで自分を責めたり、デマとして広げてしまいパニックの種になるなど、良くない影響がでるリスクが考えられます。
したがって、報道されるべきなのは「災害の前触れかもと不安がる人々の様子」ではなく「このような現象と災害の関連性は見つかっていない」という事実でしょう。少なくとも、ボラの大群を見て何かを不安がり、大騒ぎする必要は全くなく、それを煽るような記事も書かれるべきではないと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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