近年エギングで人気のターゲット「アオリイカ」の生態と釣れる条件を徹底解説。シーズンにも注目し、春夏秋冬のパターンと、全国各地域のシーズンインがいつ頃なのかも調査を行いました。

(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)

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アオリイカの種類

アオリイカは沿岸域に生息する大型のイカで、種類はシロイカ型・アカイカ型・クワイカ型の3種類に分かれます。シロイカは日本全土で見られアングラーには馴染み深い種類ですが、アカイカとクワイカは南方系の種類で生息地が限られます。

ただ、アカイカは非常に大きくなる種類でエギングアングラーからは「レッドモンスター」の異名も持っており、温暖な九州、沖縄や、黒潮の影響を受ける地域で近年人気のターゲットになっています。


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アオリイカの生態

アオリイカを狙って釣りたいのであれば、やはり行動パターンを知ることが必要です。生態について紹介していきます。

アオリイカの寿命

寿命は約1年で、沿岸の藻場や産卵床で春から夏にかけて産卵された卵は、1ヶ月足らずで孵化し、秋~初冬になると体重300~1,000gまで成長します。翌年の4~9月には成熟して親イカとなりますが、産卵を終えると死んでしまうため、一年サイクルで代がかわっていきます。


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アオリイカと水温

アオリイカは温度変化に敏感で、摂餌行動や繁殖に密接に関係する生き物です。生息限界の水温は13~14℃と言われており、水温が15~16℃になると捕食行動を取るようになります。また、高水温には強く、30℃以上など極端な高水温でなければ、高い水温ほど活発にエサを追う傾向があります。

産卵についても15℃以上の水温が始まりの目安となり、冬に適水温を求めて深場に移動していたイカが、水温が上がると産卵場となる浅場へ接岸します。

そのほかにも日本海側では水温の高い対馬海流に乗って北上し、寒い時期になると南下するなど水温変化に則して生息海域を移動することも知られており、釣りのポイント探しなどでも水温を意識することが重要になってくるでしょう。

アオリイカの食性

食性は肉食で死にエサよりも生きたエサを好み、アジやイワシ類などの回遊魚や、ネンブツダイ、ベラなどの居付きの魚、ハゼ、カレイなどの底生魚まで様々な魚を捕食しています。

また、魚の中では体高のある魚より、細身の魚を好む傾向があるようです。

甲殻類はカニは食べませんが、エビ、シャコ類は好むようです。

アオリイカを釣る仕掛け3種

アオリイカを狙った釣りは主に3種類あります。全国的に人気なのがエギングで、エギというルアーを操作してアオリイカを狙います。また、エサでも狙うことができ、小魚を泳がせて狙うウキ釣りや、関西方面で人気のヤエン釣りなどがあります。

アオリイカが釣れる5つの条件 【生態・時期・時間・場所・潮周り】
エギングに使うエギ(提供:中西/TSURINEWS編)

エギングはサイズ問わず釣ることが出来ますが、ウキ・ヤエンのエサ釣りは比較的大型のイカを狙うため、成長しきったイカを狙える時期に行うことが多いです。


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アオリイカ釣りの時期

アオリイカが釣れる時期や、時期ごとのポイント選びには前述の項目で紹介した水温とアオリイカの成長サイクルが関係してきます。


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春は親イカ狙いのシーズン

春は産卵を控えた親イカが沿岸の産卵場に現れるため、成熟したサイズのあるイカを狙える季節になります。シーズンの開始は、沿岸の水温が産卵がはじまる水温の15℃以上になることを一定の目安としましょう。産卵のために浅場に差してくる個体を狙い打ちするシーズンなので、産卵床のある藻場など場所選びが釣果を上げる重要なポイントになります。

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春は産卵場となるポイントを探そう(提供:野中功二/TSURINEWS編)

また、アオリイカは大潮に産卵し、産卵態勢に入ると体が真っ白くなり摂餌行動をほとんどしなくなります。そのため、産卵の合間の中潮や小潮に釣行する方が釣れる確率が高いと言われています。

夏は大型が狙える

産卵を終え親イカが少なくなり、新子もまだ成長しきっていないためターゲットになるサイズの個体が少なく、夏はオフシーズンとして認識されていることが多いです。

ただ、アオリイカの産卵は複数回に分けて行われるため、必ずしも春に行われるわけではなく、夏にも産卵を行う個体は数は限られるものの存在します。


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また、水温が高く元気な個体であればエサを活発に追う季節でもあり、アオリイカのいるポイントを探し出すことができれば大型の親イカを狙えます。

春と同様に産卵場になるポイントが狙い目です。

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成熟しきった親イカを狙える(提供:賀川正志/TSURINEWS編)

秋は新子の数釣り好機

秋は、春に産まれた新子が大きくなりエギングで釣りやすくなるため、数釣りシーズンになります。

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秋は数釣りのチャンス(提供:丸山敬太/TSURINEWS編)

サイズの小さい秋イカは天敵となる青物などの魚から身を守るために障害物に身を潜めていることが多いです。居着きの個体を狙うので、1個所で粘るよりも移動を繰り返すラン&ガンスタイルの方が釣果を伸ばしやすいでしょう。


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冬は場所選びが鍵

適水温から外れて多くのアオリイカが深場に落ちてしまう冬は、陸っぱりからは狙い辛い季節になるでしょう。ただ、冬でも一定の水温を確保できる場所であれば、浅場に居残った個体を狙える可能性があります。

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水温計はアオリイカ釣りのポイント探しに活躍する(提供:週刊つりニュース西部版 編集部)

暖流があたるポイントや温排水の流れ込むワンドなど水温を確保できる場所や、水温が安定する水深のあるポイントが狙い目。水温計を持っていき少しでも温かいポイントを探すのが冬のアオリイカを攻略するコツとなります。


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地域によるシーズン

水温によって行動が変わるアオリイカは、暖かい地域や寒い地域ではどの程度釣れるシーズンが変わるのか、各地域の釣果を調べ、一般的にハイシーズンと言われる春秋を中心に釣期がいつ頃なのか調査しました。

北海道

以前は生息北限が青森までと認識されていたものの、温暖化の影響か北海道でも近年釣果が報告されるようになり、現在は北海道南部以南では狙って釣れるターゲットになりました。釣果は秋の新子シーズンに偏っていて、8月下旬から、水温が下がる11月の上旬頃までがシーズンとなります。

秋のみがシーズンなのは、本州で生まれた新子が暖流の対馬海流に乗って回遊し、メインターゲットになるためだと考えられています。そのため日本海側のほうが水温も比較的高く狙いやすいですが、津軽海峡を抜ける流れに乗っての回遊もあるようで、函館などでも釣果が確認されています。

東北地方

北海道と同様に、産卵するアオリイカよりも対馬海流で南方から回遊してくる新子が多く、釣期は「8月下旬から、11月の上旬頃まで」の秋シーズンがメインになります。

また、釣果は対馬海流が流れる日本海側や、海流が抜ける津軽海峡が狙いやすいものの、近年は岩手、宮城の太平洋側でも少ないながら釣果が報告されています。

関東地方

関東地方の場合、水温が低く暖流が届かない福島、茨城はかなり個体数が少ないものの、それ以外の地域では産卵も行われ適水温の時期であればアオリイカを狙うことが出来ます。

伊豆半島や房総半島の先端、伊豆諸島など水温の高い地域では春イカは4月ごろから釣れ始め、東京湾内や相模湾内が少し遅れて開幕。6月頃まで産卵を控えたイカを狙えます。また、秋イカのハイシーズンは早いところで8月後半からはじまり、11月中旬ぐらいまで続きます。

東海地方

三重県の黒潮の影響が強い場所では、春イカの開幕が早く、3~4月頃に開幕し、長く釣れ続きます。愛知や静岡は少し遅く5~7月頃。秋イカは水温の高い地域で8月中旬頃に開幕。11月頃まで釣れ続きます。また、三重の一部では冬も狙うことができます。

北陸地方

春先に冷たい雪解け水が海に流れ込むことなどから春イカの開幕は全国に比べて少し遅い傾向があり、福井、石川、富山では6~7月の初夏がハイシーズンになることも多いです。

また、水温の低さから繁殖条件が整わないのか北に行くに連れて春イカの釣果報告は少なくなり、新潟では対馬暖流に乗って回遊してくる秋イカがメインとなります。秋イカは全国的な傾向通り9~11月がシーズンとなります。

近畿地方

4月頃から南紀エリアで釣れ出すと、南から徐々に北上していって、5月くらいに中紀エリア、6月くらいには日本海を含め全域で盛期を迎え、7月一杯くらいが春イカの釣期となります。

秋イカも暖かい南から8月中旬頃に開幕。11月頃まで釣れ続きますが、温暖な南紀エリアなどは冬でもロングランで楽しむことが出来ます。

四国地方

高知、徳島の太平洋側は黒潮の影響で海水の温度が比較的高い傾向にあるため、場所によっては一年中アオリイカを狙えます。3月頃から産卵期のイカを狙うことができ、初夏まで長く釣れ続きます。愛媛の南予方面でも早く、4月頃から開幕することもあるようです。

また、香川、愛媛の瀬戸内海側では奥まった海域ほど水温上昇が遅く5月中旬から6月ぐらいがメインシーズンとなります。秋イカは9月頃から各地で開幕し、瀬戸内側は11月一杯ぐらいがシーズン。太平洋側は水温の高い地域なら冬に入っても狙うことが可能です。

中国地方

広島、岡山の瀬戸内海側は5月中旬から6月が春イカのメインシーズンになります。島根、鳥取の山陰地方はGW前ぐらいから6月まで。山口では日本海、瀬戸内海側とも、他地域より少し早い4月から釣果が上がり始めます。秋イカは9~11月がメインシーズンです。

九州地方

対馬海流と黒潮の影響を受ける海域が多く、春は早いところでは3月頃から産卵期を控えた親イカを狙え、初夏まで釣れ続く地域が多いです。

最盛期となると福岡、大分、佐賀、長崎は5~6月の釣果報告が多く、鹿児島、熊本、宮崎の南部はシーズンインから盛期が長続きして夏に入るまで釣れ続く傾向にあります。

秋イカシーズンは他地域とそこまで変わらず9~11月頃ですが、鹿児島などは冬に入ってもしっかりと釣果を出せる環境にあります。

全国的なベストシーズン

各地の釣果情報を比較した結果、春は産卵期に入るための水温がトリガーになることからか、各地域でベストシーズンに差が出ることがわかりました。水温の低い地域では親イカ狙いが成立しない県や、初夏にズレ込むこともありますが、水温の高い地域では産卵期が始まるのが早く、中には1~3月と春の釣果が大きく変わらない県も存在します。

また、秋のベストシーズンは、シーズンの終わりは地域差があるものの、基本的には子イカがエギングで狙えるサイズになる、9~11月に釣果報告が集中するのが共通したパターンとなります。

シーズンについては年によって変わったり、ポイントごとにも変動します。必ずしも当てはまるわけではないので、ネットや釣具店などで釣果情報を確認する必要はあるでしょう。

アオリイカが狙える場所

時期ごとに狙うべきポイントについては触れましたが、基礎的な要素としては潮通しの良さ、餌となるベイトの存在が鍵になります。

また、アオリイカが釣れるかどうかを判別する簡単な方法は、釣り場に墨跡があるか確認することです。墨跡があるポイントは、すでにそのポイントでアオリイカが釣れていることを表しているため狙える条件が揃っていると考えていいでしょう。

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墨跡はアオリイカのいる証拠(提供:週刊つりニュース西部版 編集部)

もちろん墨跡がなくても狙える未開拓のポイントもあるはずなので、条件が合いそうなポイントはチャレンジしてみるのも手です。

アオリイカを釣りやすい時間帯

アオリイカは夜行性で、月夜ほどの一定の明るさを好み活発になると考えられており、漁でも満月の夜に漁獲量が上がるデータが出ています。

アオリイカが釣れる5つの条件 【生態・時期・時間・場所・潮周り】
夜は高活性になる(提供:野中功二/TSURINEWS編)

マヅメ時の薄暗いタイミングで活性が上がることや、暗い夜の常夜灯下を好むことも知られており、釣りやすい時間帯としては朝夕のマヅメ時と夜となります。


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昼でも釣れる?

活性は夜やマヅメよりも落ちるものの、昼間でもアオリイカを狙うことは可能です。

基本的に昼のアオイリイカは障害物やボトムなどに隠れていますが、活発な秋の新子であれば湾内で群れているのを視認できることもあるように警戒心が薄いため狙いやすいです。

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昼の釣りではサイトフィッシングが成立する場合も(提供:杉浦永/TSURINEWS編)

潮の動くタイミングなど、少しでも活性の上がるタイミングで釣行することが釣果アップに繋がります。

潮の動きと釣果

潮が動くタイミングは、プランクトンが流され小魚の捕食スイッチが入り、それらを餌とするアオリイカも活性が高まります。泳ぎが得意とはいえないアオリイカは潮の動きに乗って回遊してくるパターンが多いと言われているため、アオリイカ釣りには潮の動きは重要な条件となります。

大潮、小潮等の潮回りはポイントの潮通しなどにもよるため、一概にどの潮回りがベストとは言えません。ただ、タイドグラフを見て「活性が上がるマヅメ時に潮が動く」、「活性の上がる満月の日に潮の動く時間帯でポイントに入る」など、潮が動くタイミング+好条件を意識した釣行を行えば釣果に繋がるはずです。

潮と回遊パターン

潮の動きに乗って回遊するアオリイカは、基本的には上げ潮に乗って餌場になるポイントに入り、下げ潮に乗りイカが沖に帰るイメージを持っておくといいでしょう。

そうなると、上げ潮のほうが良さそうに聞こえますが、どちらが良いかはポイントにもよってきます。下げ潮で小魚が沖に払い出されるのを狙ってイカが溜まるようなポイントもあり、ポイントに通ってどんな潮、時期、時間帯ならばアオリイカが回遊してくるか、ベストの条件を見つけることが重要になります。

アオリイカの持ち帰り方

アオリイカは市場でも高値で取引されている食べると非常に美味しいイカです。特に刺身は絶品のため、ぜひ釣り上げたアオリイカを食べてみてください。

美味しく食べるためにも、釣り上げたアオリイカの持ち帰り方を紹介します。

まず、釣り上げたらアオリイカは目と目の間に急所があるため、ピックなどで刺すか、手でチョップして絞めるといいでしょう。絞まると色が白くなるため、絞まったかどうかの目安となります。

またクーラーボックスに入れる際は、真水や海水に漬けるのは厳禁。1匹ずつ袋詰して、水に当たらないように持ち帰るのがベストです。もちろんクーラボックスは氷を入れてしっかりと保冷しましょう。


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<TSURINEWS編集部>

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