技術革新が進む魚介類の養殖で、いま「光」の活用が注目を浴びています。全国的に漁獲量が激減しているアサリや、ヒラメにカレイの養殖現場でも「光」でプラスの影響が出ることが確認されているようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
アサリの漁獲量が激減
先日、熊本県における大規模な偽装が問題となったアサリですが、実はいま全国各地で漁獲量が激減しています。
かつて全国に名を知られたアサリの名産地、静岡県浜名湖での2021年の漁獲量は、過去最低となる100t。2009年の6,007tと比較すると、12年で約60分の1になってしまっています。温暖化や塩分濃度の上昇、天敵の増加などが指摘されていますが、はっきりとした原因は分かっておらず、様々な角度からの対策が求められています。

光でアサリが活性化?
そんな浜名湖アサリ資源の再生に向けて、光学機器メーカーと浜名漁協が、赤、青、緑の三色のLEDを用いた、とある養殖プロジェクトの研究を進めています。この技術を利用して育てた稚貝を浜名漁協とともに浜名湖に試験放流したところ、自然環境下でも親貝に育つことが確認されました。さらに自然個体に比べて繁殖につながる精子や卵の放出量が圧倒的に多いことも判明したそうです。
今後はアサリの放流量を増やしたり、期間を延ばしたりして検証を進めるといいます。(『漁獲激減、窮地の浜名湖アサリ 「光」に再生託す 浜松ホトニクスと浜名漁協がプロジェクト』静岡新聞 2022.4.3)
「緑の光」でヒラメが活発に
さて、光を使った魚介類の養殖技術は実は他にもあります。その代表がヒラメ・カレイの養殖。いま、カレイやヒラメを育てるときに「緑色のライト」を当てる技術が普及しつつあります。

この技術は、養殖水槽を照らすライトを緑色にするというだけのもの。シンプルすぎるように思えますが、緑色のライトを当てた水槽内では、底生魚のはずのヒラメやカレイがまるで回遊魚のように泳ぎ回ります。
彼らはとても活発に摂餌し、通常の養殖個体と比べ、重さが平均で1.6倍になったそうです。更に成長速度も早く、これまで1年近くかかっていた出荷までの期間を9か月に短縮できたといいます。
なぜ光で育つのか?
この2つの「光を用いた養殖技術」は、似ているようで1つ大きな相違点があります。
アサリの養殖で用いる3色のLEDは、アサリではなく「アサリの餌を育てる」ためのもの。アサリの餌となる植物プランクトンの一種「パブロバ」を培養するために利用されます。
パブロバはアサリを始めとしたプランクトン食の生物にとって好ましい餌である一方、これまでは培養しようとしてもすぐに死滅してしまうという問題点があったといいますが、3色の光をとある比率で繰り返し当てることで、死滅させることなく効率的に培養できるといいます。

一方、ヒラメ・カレイの養殖で用いられる光は、魚そのものに影響を及ぼしています。ヒラメやカレイが生息している水深には、太陽光のうち「緑色の光」が最も届きやすいといわれており、そのため緑色の光を当てると養殖水槽が本来の生息環境に近い状態になり、魚が活発になるのではないかと考えられています。
これら以外にも、特定の魚に対して特定の光を当てることで成長を促進させられる例はいくつか見つかっているといいます。今後もこれらの例のような「光」を用いた養殖技術は次々生まれてくるのかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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