サカナは一般的には「変温動物」と言われてきました。しかしマグロなど一部のサカナでは完全にそうとも言い切れないようです。

(アイキャッチ画像提供:サカナ研究所・近藤俊)

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生物の体温の仕組み

中学校で習う理科では、体温を保つシステムで動物は2分されると習います。

一つ目は「変温動物」で、外部の温度により体温が変化する動物のことを指し、爬虫類や魚類、昆虫などが当てはまり、もう一つの「恒温動物」には私たちヒトを含む哺乳類や鳥類が該当します。

変温動物

サカナなどの変温動物は必要がないときは外気温と同程度の体温でいるため、エネルギー消費をかなり少なくすることが出来、体温が多少変動しても正常な活動が行えます。しかし、一定以上の低体温になってしまうと活動することが出来なくなってしまいます。

恒温動物

これに対して、多くの恒温動物の体温は大きく変化しないため、常に安定した活動を高水準で行うことが出来ます。

しかし、行動能力を高く維持することが出来る反面、多量のエネルギーを消費してしまうリスクも伴っています。

近年は3つのくくり

中学までの理科では、以上のような内容を学習するわけですが、実は近年の科学では「変温」「恒温」という言葉はあまり使われていないようです。

代わって、「内温性」「外温性」「異温性」という言葉が用いられます。

内温性とは体温が主に代謝熱で維持されている状態で恒温に当てはまり、外温性とは体温が主に外部環境によっている状態で、変温に当てはまります。

気になるのが新しい言葉である「異温性」で、恒温動物や変温動物において部位、もしくは生理状態の違いにより体温が大幅に異なる状態を指しています。

今までの知識だと「変温動物の体温=外気温」「恒温動物の体温≠外気温」が当たり前でした。

しかし、近年ではこの2つのパターンだけでは説明がつかない、変温動物だけど外気温より体温が高い生物や、恒温動物なのに一部の部位の体温が低い生物などが明らかになり2つのくくりだけではなくなっています。

マグロは変温とは言い切れない

変温性の動物の代表例としてマグロが良く取り上げられます。

マグロは他のサカナとは異なった血管配置をしており、泳ぐことで生まれた熱が外に逃げにくいようになっています。

全てのサカナが【変温動物】とは言いきれない? マグロやサメは例外
マグロの身はほんのり温かい(提供:サカナ研究所 近藤俊)

そのため、寒い海で釣れたマグロをその場で捌くと、「ほんのり温かい」というのが漁師の中では有名な話で、マグロは変温動物でありながらも、外気温よりも高い体温を維持することが出来るサカナなのです。

テレビでよく見る、大間のような冷たい海でも活発に泳げるのは、この機能が体に備わっているからなのでしょう。

体温が高い動物は速く、たくさん泳ぐ

ではなぜ、高い体温を維持していた方が良いのか。それは、速く・長く泳ぐためだと考えられています。一般に筋肉は体温が高い方が良く収縮し、素早く動かすことが出来ると言われています。

マグロはよくご存じのとおり、身のほとんどが赤身であるため酸素効率がよく、他のサカナよりも長い距離を泳ぐことが出来ます。

全てのサカナが【変温動物】とは言いきれない? マグロやサメは例外
身のほとんどが赤身(提供:サカナ研究所 近藤俊)

回遊するサカナは他にもイワシやサンマなどがいますが、回遊するエリアは近海であり、マグロのようにすべての海が海遊エリアというわけではありません。

なお、マグロは他のサカナに比べて速く泳ぐイメージはあるものの、具体的にはどれくらい早いのかは最近まではわかっていませんでした。

しかし、近年に研究で、マグロは他の回遊魚に比べて3倍近いスピードで回遊することがわかっています。さらに、速いスピードで泳げるサカナほど、より遠い距離を泳げる傾向にあるようです。

体温が高い動物の方が頭が良い?

他にも、サメも外部の温度より体温が高いことが知られています。

マグロもサカナの中では群を抜いて頭がいいと漁師からは言われており、体温と知能にも深い関係があると考えられています。

進化の過程を見ても、外温性の動物よりも、内温、異温性の動物の方が知能が高いのは間違いありません。

サメやマグロはもしかすると今後、更に進化を進め、哺乳類に近い存在になっていくのかもしれませんね。

<近藤 俊/サカナ研究所>

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