魚の「赤身」と「白身」、実は色の鮮やかさで決まっているのではないということをご存知でしょうか。ややこしい例をあげつつ、説明してきましょう。

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サケは白身か赤身か?

雑学クイズなどでしばしば問題となる「白身魚と赤身魚」の判別。中でももっとも頻出するネタはおそらく「サケ」ではないでしょうか。

サーモンは「白身魚」でアジは「赤身魚」 身の色は関係なかった?
サケの切り身(提供:PhotoAC)

シロザケやサクラマスの「サーモンピンク」と呼ばれる身の色合いや、ベニザケの真っ赤な身の色を見ると、多くの人が「サケは赤身魚なのでは」と思ってしまうようです。

しかし定義上、サケ・マス類は白身魚となります。彼らの身は本来は白いのですが、餌となるオキアミなどの甲殻類に含まれる赤い色素の影響でこのような色味になっており、そういったものは赤身魚とは呼ばれません。

アジなどの青魚は赤身

サーモン同様にしばしば混乱を招くものが「青魚」。

アジ科の魚やサバ科の魚のような青魚は、種類や個体によって身の色が大きく変わるのが特徴です。とくに冬のブリなどは身の白みが強いため白身魚と答えたくなりますが、実際は赤身魚に分類されます。

サーモンは「白身魚」でアジは「赤身魚」 身の色は関係なかった?
アジの刺身(提供:PhotoAC)

青魚の多くは高速遊泳が可能で、どのようなときも基本的に泳ぎ続けています。そのようなことが可能なのは、筋肉中に酸素をためておくことができるタンパク質「ミオグロビン」を多く含んでいるためです。

ミオグロビンは色素タンパク質とも呼ばれ、これが多いものを一般的に赤身魚と呼んでいます。クロマグロなどは筋肉中にもこのミオグロビンが多いため真っ赤に見え、誰が見ても赤身魚だとわかりますが、アジやサバでは筋肉中にはそこまで含まれていません。

しかし実は筋肉の中心部に走る真っ赤な部位「血合い」にこのミオグロビンを多く含んでおり、筋肉自体が白っぽくても彼らは「赤身魚」に分類されるのです。

「赤魚」「アカサバ」という究極の罠

これらの他にも、赤身なのか白身なのかがわかりにくいもの、また非常に紛らわしいものがあります。

例えば「赤魚」。

サーモンは「白身魚」でアジは「赤身魚」 身の色は関係なかった?
アコウダイ(提供:PhotoAC)

これはカサゴの仲間で深海性のアコウダイ類の魚の総称です。現在では主にアメリカなどから輸入されたものをこの名称で呼びます。

深海のカサゴは赤いものが多く、とくにアコウダイの仲間はペンキを流したような真紅に輝くためこのように呼ばれるのですが、身そのものは純粋な白身です。

また「ハチビキ」という温かい海に生息する魚がいるのですが、関東では「アカサバ」と呼ばれています。その名の通り、サバのような紡錘形のシルエットで遊遊泳力も高く、更には身そのものも真っ赤。本家サバよりも赤みは強いと言えるでしょう。

サーモンは「白身魚」でアジは「赤身魚」 身の色は関係なかった?
ハチビキのカルパッチョ(提供:PhotoAC)

しかし不思議なことにこのハチビキも白身魚のひとつ。色こそ赤いものの、食べてみるとタイやイサキに似た白身の味がします。知らない人に刺身を食べさせ、赤身か白身かと聞いてみたら、一発で当てることはまず無理でしょう。


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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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