水軒一文字という名前は聞いたことはあっても、実際に行ったことはないという人が案外多いのではないだろうか?渡船の乗船手続きも釣り座の構え方も、暗黙で独特のルールがあって初めて釣行する人は戸惑うかもしれないが、今回の投稿が少しでも参考になれば幸いである。

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水軒一文字と周辺釣具店

水軒一文字に釣行する際は、大阪湾の沖波止での釣行のイメージを完全に捨て去るのが賢明だ。渡船は深夜未明の出船で、乗船場の近辺に釣具・釣りエサ店はない。

従って、釣りエサは24時間営業店で事前に購入して持ち込む必要がある。

和歌山県内ではマルニシ本店(和歌山県和歌山市湊3001)とフィッシングマックス和歌山インター店(和歌山県和歌山市秋月318)がお薦め。両店は水軒一文字をはじめ和歌山県紀北エリアの釣り事情にも精通しているので、情報収集にも好都合だ。

ただし、24時間営業ではない時期もあるので、平日や冬季のオフシーズンなどの釣行前には、念のため各店のホームページで営業時間を確認してほしい。

関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴
水軒一文字(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

水軒渡船の重要キーワード

水軒一文字に渡すのは水軒渡船で、一通りのことはホームページに掲載されている。繰り返しになるが、大阪湾の沖波止での釣行のイメージを完全に捨て去るのが吉。初めて釣行する際は、必ずホームページを事前に確認しておいてほしい。救命胴衣のレンタルはないので、持参しないと乗船できない。一方で、ホームページからは読み取れない要注意事項が3点ある。水軒渡船の3つの重要キーワードは「駐車場」、「荷物置き」、「おかみさん」だ。

早めの「駐車場」入りが吉

まずは「駐車場」。出船時刻は深夜未明の2便が基本だが、30人ぐらい集まったら0便と呼ぶ繰り上げ出船になる。そうした事情を知っている釣り人は、始発便の2時間前ぐらいから駐車場入りする。その結果、多客日だと深夜3時前には駐車場が満車となってしまい、以降は入口が封鎖される。

泣こうがわめこうが救済措置はない。

かといって渡船店を責めるのもお門違いで、釣り人たるもの、郷に入っては郷に従えと心得たい。釣況の良い時期の土日祝は要注意だ。落ち着いて釣りたい人は平日の釣行をお勧めする。

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駐車場は深夜未明3時前に満車になることもある(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

暗黙ルール「荷物置き」

次に「荷物置き」。駐車場に停車したら、すぐにクーラーやバッカンなど、何か目立つ荷物を一つ、乗船受付場の待ち列に置いてほしい。この荷物を置いた順番が、乗船受付時の順番となる。これは常連達による暗黙のルールで、これを乱すとひと悶着ふた悶着のトラブルになりかねない。こちらも郷に入っては郷に従えだ。

「おかみさん」が仕切る乗船受付

最後は「おかみさん」。船長の良き相方の「おかみさん」が現場を仕切るので、全て言う通りに従って乗船手続きを行わなければならない。多客日は深夜2時過ぎごろに、平常時は3時過ぎにおかみさんが表れ、元気良く「今から検温を始めます」と最初の一声がある。水軒渡船は新型コロナウイルス対策として、非接触体温計による検温を行っている。常連達はおかみさんの姿を見かけたら、自然発生的に並び列を作るので、即座に自分もその列に並んでほしい。

検温の際には、おかみさんから黄色い札を受け取るのを忘れずに。この黄色の札は、始発便に乗船できる権利証明書のようなもので、取り忘れると2番船に回される憂き目にあう。こちらも泣こうがわめこうが救済措置はない。

検温が終わったら今度は乗船受付の列に並びなおす。この時の並び順は、先に置いた荷物置きの順番というのが暗黙のルールになっている。乗船受付はカウンターの名簿に必要事項を記入するのだが、携帯電話の他に自宅などの電話番号も求められる。また、定期便よりも早く迎えに来てほしい場合は、名簿に記入する時におかみさんにその旨を申告する。事前の申告がないと早上がりはできない。

以上3つの重要キーワードをクリアすれば、晴れて乗船。ロッドケース以外の手荷物は船の甲板に置き、旧波止に行く人は船の前の椅子に、新波止に行く人は船の後ろに座る。出船の際には、おかみさんが「たくさん釣れますように」と海神様にお祈りしてくれるので、釣り人の側も頑張って釣って、ご利益にあやかってほしい。

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水軒渡船乗船場(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

かさ上げ・増築工事で激変した沖防波堤

実際に水軒一文字に行ってみると、圧巻の光景を目の当たりにする。これは数年間にわたる防波堤のかさ上げ・増築工事によるもので、ズバリ言うと、大阪湾の沖波止よりもはるかに壮大なコンクリート構築物で、言わば和歌山港の巨大要塞といった面持ちの釣り場である。

水軒一文字は旧波止と新波止の2つの波止の総称で、位置関係や船着場などは略図を参照いただきたい。旧波止は和歌山本港沖外防波堤、新波止は和歌山本港沖南防波堤が正式名称で、新波止は1250mで、旧波止は2000m以上ある、いずれも長大な防波堤である。外向き(沖向き)はテトラポットが積まれている。

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水軒一文字略図(作図:TSURINEWSライター伴野慶幸)

旧波止

では、外向き、内向きが別世界な旧波止から紹介していく。

外向き

外向きはテトラの上からキャスティングするルアーフィッシングのポイントだが、船着場にある階段を上り下りしないと外向きとの行き来は出来ない。テトラは大きく隙間も大きいので、足元は非常に悪い。夜明け前の視界が悪い時間帯や、雨で足元が濡れている時などは、安全面で細心の注意が必要だ。

長大な波止だが、常連達によれば、特定の場所でしか釣れず、シビアな釣り座選びが釣果の明暗を分けるそうだ。青物、タチウオからアコウに至るまで獲物は豊富なので、釣果情報をこまめにチェックして好機を捉えて釣行し、釣り座がハマれば、大海原でのルアーフィッシングの醍醐味が味わえるだろう。

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旧波止の沖向き(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

内向き

内向き(陸向き)は、水深は壁際で8~10m余り、海面との高低差は4~5mぐらい。タモ網は5m以上をお勧めする。ただし難点があり、足元が狭く後壁がそびえ立つ、若干釣りづらい構造になっていること。後壁があるのでルアーキャスティングは難しく、長竿を使ったフカセ釣り、紀州釣り、カゴ釣りや、短竿でのズボ釣り、サグリ釣り、夏季の落とし込み・ヘチ釣りがスタンダードな釣り方である。

このうちフカセ釣り、紀州釣り、カゴ釣りは、外向きと同様に特定の場所でしか釣れず、シビアな釣り座選びが釣果の明暗を分けるようだ。時期に応じたピンポイントを知る常連がチヌ、グレ、時にはマダイなどの獲物を手中にしているのを尻目に、慣れない釣り人はゲストに遊ばれて終わりという難しい釣り場だが、通い慣れれば大阪湾よりも数・型に恵まれる好釣り場と言えよう。

なお、内向きが狭く釣りづらいからといって、釣り人がいるのに自分だけ階段に登って上から釣るのは迷惑行為として基本NGなので要注意。

内向きはカゴ釣りも人気だが、カゴ釣りについては後の新波止の解説で触れる。

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壁がキャストを妨げる旧波止内向き(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

新波止

新波止も外向きはテトラが積まれているが、西半分の十字型テトラと、東端のテトラは足場と隙間の状況が危険過ぎて登れない。ルアーフィッシングは辛うじて船着場2番周辺のテトラからのキャスティングに限定される。

新波止は足場がフラットで広く釣りやすい内向きでの釣りがメインで、水深は壁際で10m近くあり、海面との高低差は6mぐらいなので、タモ網は最低でも6m以上が必要だ。フカセ釣り、紀州釣り、カゴ釣りがスタンダードで、中でもカゴ釣りが人気だ。

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新波止は内向きに釣るのが基本(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

2種類のカゴ釣り

カゴ釣りのさしエサはオキアミだが、釣り方は2種類ある。一つはフカセ釣りと同様に底近くのタナで、チヌ、グレなどを狙う近投のテンビンカゴ釣りで、テンビンカゴ釣りとオキアミをメインにアミエビや少量の集魚材を混ぜて大きめのまきエサカゴに詰める。タックルや仕掛けは他の地域でも行われているもので通用するが、極めたい人は前半で紹介した2店の釣りエサ・釣具店にアドバイスを受けるといい。

もう一つは、この地域で平鯵(ひらあじ)と呼ばれている30cm級のマアジや大サバを狙う「超遠投」のテンビンカゴ釣りだ。「超遠投」と評したのは、最低でも40mぐらい、日によっては50m近くまで仕掛けを飛ばさないと魚の回遊層に届かないからである。

関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴
カゴ釣りの人気ターゲット平鰺(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

常連達のタックルの主流は、5m以上の磯ザオ4号(名手の中には3号も)にロケット羽ウキと、金属製の細身で柄の長いカゴテンビンの組み合わせで、サオの弾力によるしなりを生かした超遠投を行うために、まきエサカゴはシャトルカゴ、アポロカゴ、ジェットカゴといった製品名の小さめのオモリ付きカゴや、サビキ釣りのドンブリカゴをセットしている。

ちなみに私は魚に抵抗感を極力与えないことを最優先にして独自のパイプテンビンタックルを使用しているが、空気抵抗のため超遠投には向かないので念のため。

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水軒一文字でのカゴ釣りタックル(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

超遠投のカゴ釣りの難しさは他にもあり、タナは8~13mぐらい、魚が回遊する釣り座も船着場3番、4番、5番のどこが当たりになるかと、日替わりなのが常連達ですら頭の悩ませどころとなっている。当たれば二桁釣果、外れれば丸ボウズという難しさはあるが、通い詰めて経験値を積むことで、釣趣も食味も抜群の平鯵を手中に収める確率は高まると思う。

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<伴野慶幸/TSURINEWSライター>

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水軒渡船
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