日本最大の湖であり、世界有数の歴史のふるさを持つ古代湖でもある琵琶湖。その沿岸地域では、農業と漁業が深く結びついた独自のエコシステムが構築されてきました。
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琵琶湖地域が世界農業遺産に
日本最大の湖・琵琶湖。その沿岸地域に残る農業・漁業文化が、世界的に評価されることになりました。
農林水産省は平成31年2月、滋賀県琵琶湖地域を含む国内3地域を「世界農業遺産」へ認定するよう、国連の1機関である国連食糧農業機関(FAO)に申請することを承認しました。そしてその後、FAOにおいて審査が行われた結果、今年の7月に世界農業遺産に認定される運びとなったのです。

今回の認定で、日本国内の世界農業遺産は計13地域となりました。琵琶湖地域に関しては「伝統的な水田稲作と、深い関わりを持って発展してきた内水面漁業」が評価された形となります。
琵琶湖の漁業は何が特別?
農業遺産への認定申請活動においては、琵琶湖の農業と水産業について「森・里・湖(うみ)に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム」というキャッチフレーズが付けられていました。これは琵琶湖沿岸地域における以下のような歴史に基づいています。
琵琶湖の周辺地域では、弥生時代に稲作が始まって以降、人が開発した水田に魚が遡上し、そこを繁殖場として利用するようになっていました。そして地域の人々は、農作業の傍らこのような魚を漁獲する「待ち受け型の漁法」を発展させてきました。

そんな文化を代表するのが、琵琶湖独特の定置網で、アユなどを漁獲する「エリ漁」。漁場や漁獲についてトラブルとならないよう、エリの設置や運用を制限するなどの社会的な仕組みも中世頃にはすでに築かれていたと言われており、これは現在の資源保全や漁業調整の礎ともなっているそうです。
また、漁獲された湖魚は、水田の実りである米とともに加工され「ふなずし」等のなれずしになりました。こうした食文化は地域性の強さや文化の伝承意識の高さの下支えとなり、今も地域における生態系保護・水源林保全の意識につながっているそうです。
琵琶湖を彩る独特な淡水魚食文化
一般的に、湖は年月が経つと土砂の流入によって水深が浅くなり、やがて消滅してしまう運命になります。しかし断層湖である琵琶湖は土砂の流入を上回る勢いで容積が増していくため、場所を微妙にずらしながらも長い期間消滅せず存在し続けてきました。このような湖は「化石湖」と呼ばれ、世界にも数えるほどしかありません。
そんな長い歴史と巨大な容積を持つ琵琶湖には、ビワマス、ハス、ニゴロブナなどといった琵琶湖にしか生息しない固有種が多数生息しており、沿岸地域の人々に利用されてきました。多種多様の水産物を様々な調理法で食べてきた琵琶湖沿岸は、日本で最も豊かな魚食文化を持つ地域であるともいえます。

そんな琵琶湖でも最近は多分にもれず、ブラックバスやブルーギルを始めとした侵略的外来種の棲息量が多くなっています。しかし、そのような魚たちも加工し、食用にするような懐の深さもあります。
今回の認定をきっかけに、豊かながらも知名度があまり高くない「琵琶湖の淡水魚食文化」に、よりスポットライトがあたるようになればいいなと個人的には思っています。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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