神戸の沖防波堤への立入禁止が現実化してから約9か月余りが経過したが、行き場を失った釣り人達が代わる釣り場を求めて残された沖防波堤へと向かったことで、新たなトラブルが生じている。今回の投稿では私の責任において知り得たその後の情報などを交えつつ、これについて問題提起をさせていただきたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)
泉南エリアで生じた新たなトラブル?
神戸の沖防波堤が立入禁止になって以降、今度は残された貴重な釣り場である泉南エリアの岸和田一文字と泉佐野一文字で、新たなトラブルが生じている。具体的には令和4年10月に、釣り人の蛮行によって渡船店が苦しめられている状況がホームページやSNSに掲載されたという事だ。期間限定の掲載事項として後に削除されるかもしれないが、いずれも看過できない内容なので、この場で書き残させていただきたい。
予約制を導入した岸和田渡船では、予約がとれなかった釣り人がその不満を心無い言葉でショートメールや電話でスタッフに伝えているという。一方、予約制を導入していない葵渡船では、乗船受付順の場所取りのために、泉佐野漁港内にあるものを勝手に重りに使って物を置く釣り人がいるという。
いずれも釣り人のマナー以前の蛮行だと言わざるを得ない。現時点では渡船店が矢面に立たされて苦しめられている状況だが、こうした蛮行がこの先もまかり通れば、近いうちに港湾関係者や警察などが前面に出ざるを得ない大問題が生じて、沖防波堤への渡船がまたしても禁止になりかねないと、私は危機感を抱いている。

その他の渡船店でも問題が
その他にも、様々な渡船店のSNSでもいくつかの問題が掲載されてきた。過去のものも含めると、
「予約制での無断キャンセル」、「早朝より店舗前で釣り人が話すことで騒音となり、近所からの苦情が出た」、「指定された規格に反したライフジャケット等による乗船」、「渡船店が決めた定員以上は断らざるを得ない」、「指定限度に反した大型クーラーや手荷物の持ち込み」、「渡船受付順の割込み」、「波止上での過剰な場所取り」、
といった事例で、いずれも釣り人の身勝手な行動によって渡船店が苦慮している内情がうかがえる。
沖防波堤が大混雑するワケ
こうした問題の原因とされているのが、沖防波堤の大混雑である。神戸の沖防波堤が立入禁止となったことで、行き場を失った釣り人達が代わる釣り場を求めて残された沖防波堤へと向かった結果、大混雑が生じたという一説があるが、オーバーキャパと単純化して捉えるのは適切ではないと私は捉えている。沖防波堤の大混雑の構造を私なりに紐解くと、
1)神戸の沖防波堤の立入禁止化によって、行政と社会の目は「安全」と「ノートラブル・ノークレーム」を一層重視するようになった。
2)渡船店は駐車場の確保を含めた送客オペレーションの見直しを余儀なくされ、釣り人の受け入れキャパシティを縮小して予約制や定員制を導入することで、安全の確保と近隣トラブルの回避をはかろうとした。
3)結果、残された沖防波堤単位で見ると、釣行しようとする釣り人の数が増加したにもかかわらず、渡船店側のキャパシティは縮小されるというミスマッチが生じ、大混雑が生じた。
という構造で、より正確に言えば、大混雑というよりは、釣り場からあぶれた釣り人が大幅に増加したという事だと理解している。

神戸の沖防波堤のその後
令和4年1月の神戸港を皮切りに、9月の須磨港をもって、行政が指定する神戸の沖防波堤の立入禁止化の実践が完了した。一方で、神戸の沖防波堤の渡船再開を目指すべく、文書形式の署名活動とともに、行政との協議も本格的に開始された。それらの実効性を高めるため、渡船店側は個別店単位ではなく、組合を組成して臨むことを決断し、渡船が再開された場合も組合形式で運営する構想を打ち立てている。その模様の一部は、5月に関西テレビと毎日放送の夕方のニュース番組で放送されたほか、一連の動きの概要は、神戸渡船のホームページ「情報一覧」の、5月から6月にかけての情報内に残されている。
令和4年10月現在、渡船再開の目途は立っておらず、協議の両当事者からの正式な情報発信もないが、協議は継続されているという事実を、私の責任においてこの投稿で読者の皆様にお伝えさせていただく。私達釣り人は、渡船が再開されることを引き続き願いつつ、当事者同士の協議の行方を静観するしかない。
長期化の見通し
なお、協議が長期化する見通しであることと、協議体制と渡船の新たな運営構想が組合形式に移行したことで、各渡船店・船長の個々の事業活動としては、遊漁船業(釣り船)にシフトしている。私が通っていた松村渡船は、8月31日をもって沖堤防渡し渡船事業を廃止した。将来、協議が実を結び沖防波堤への渡船が再開されたとしても、松村渡船で、薩摩の船で再び渡ることは叶わなくなってしまい、やり切れない思いに今なお苛まれている。

釣り場の減少は自業自得
ここまで、沖防波堤の大混雑に伴い、渡船店が矢面に立たされて苦しめられている状況について問題提起をさせていただいたが、減少した沖防波堤のキャパシティに対し、自分だけは釣り場からあぶれないようにという釣り人の欲求がエスカレートして、身勝手な行動に走り、各地で様々な問題を引き起こしているというのが、現在の姿であろう。
しかし、その問題は神戸の沖防波堤の立入禁止化が原因なのだろうか?そもそも、沖防波堤に釣行する釣り人が増加したのは、ポートアイランド北公園、兵庫突堤、小野浜などの陸地からの釣りが出来なくなった事も大きな要因であったはずだ。
かつては釣りをある程度許容されていたそれらの陸地を失ったのも、神戸の沖防波堤を失ったのも、全ては釣り人が近隣や航行船舶などとの間でトラブルを引き起こし、行政に通報や苦情が寄せられるようになったからである。釣り人達はそうした認識もなく、今度は残された沖防波堤とその周辺で、あろうことか渡船店を矢面に立たせて苦しめているという蛮行に及んでいる。
繰り返しになるが、関西の釣り場の減少は釣り人が自分で自分の首を絞めた結果であり、世間や行政にとって釣り人は、悪であり危険行為をするかのような疎まれる存在となってしまったという現実を、釣り人一人一人が認識出来るかどうか、今が瀬戸際ではないだろうか。

船長へ問い合わせたところ
記事の内容を確認するため、編集部でも岸和田渡船と葵渡船、武庫川渡船の船長に話を聞いてみた。
ただ、全体を見てみると、やはり著者が指摘するようトラブルが増加の傾向にあるのは否めない。末永く一文字波止での釣りを楽しめるよう、釣行時のマナーやルールをしっかり守って釣行したい。
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<伴野慶幸/TSURINEWSライター>
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