釣り人のなかには、釣った魚を美味しく食べる事を目的としてる人は多いでしょう。せっかく釣ることが出来た魚ですので、鮮度を保ったまま持ち帰りたいものです。
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魚は締めて持ち帰ろう
釣りをはじめたばかりの人はそもそも「魚を締めるとはなに?」と疑問に思うかもしれません。魚を締めるとは魚が生きた状態の時に即殺することをいいます。締めることによって魚が暴れて悶絶死することを抑止することができます。

魚を暴れさせてしまうと魚体の中にある「ATP(アデノシン三リン酸)」と呼ばれる物質が消費されてしまいます。このATPは後に旨味の元となるイノシン酸に変わる物質のため、その魚は美味しくなくなってしまうというわけです。また、暴れることで体温の急激な上昇をもたらすので鮮度も低下してしまいます。
この活け締めをすることで、締めなかった魚と比べて約3~4倍程度、鮮度を保つことができるといわれています。代表的な締め方は次のようなものがあります。
まずは脳締め
脳締めとは魚の急所となる脳天を狙い刺す方法で、生命活動の根幹である脳を傷つけ「即殺」する方法です。魚の生命活動をいっきに停止させることで、旨味の元となるエネルギーを抑えるほか、魚が暴れて身がうっ血したり赤みがかることでの風味の劣化を抑止します。
脳締めの方法は次のようなものがあります。
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ハサミでのやり方
ハサミで締める場合は、目の横のこめかみにあたる部分を外から一気に刺します。
その際にハサミは体の中心めがけて60度くらいの角度で差し込むと失敗がありません。
マダイの脳の位置(提供:TSURINEWSライター西澤俊彦)脳の位置は魚によっても若干変わりますが、こめかみの部分は少し押すと若干柔らかくなっているので手で触りながら確認しましょう。
ナイフでのやり方
ナイフの場合は2パターンあります。はさみと同様の方法と、もうひとつはエラの内側からこめかみのほうに向かいナイフを突き刺す中締めという方法です。この際に魚が激しく暴れることがあるので、しっかり押さえるのがポイントです。
ピックでのやり方
目の上の眉間から脳に向けて刺すか、魚によっては眉間が硬いのでハサミやナイフと同様に目からエラに向かい指1本分離れた場所にピックを差し込みます。横から指す場合は反対側も同様におこなうとより効果的です。使うピックはアイスピックなどでもいいですが、魚のサイズに合わせた手早く締められるピックなども発売されています。
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氷締めという方法も
氷締めは、海水に氷をいれてキンキンに冷やしたもの(塩氷)に魚を入れて人為的に急激な水温差を与えショック死させる方法です。魚が入れ喰いしているときなど、締める時間が無いときに有効な方法です。
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血抜きは臭み取りに有効
締める作業が済んだら血抜きを行いましょう。魚の血液は、酸素が行き届かなくなると凝固して黒ずんだ色になります。そしてこの古くなった血液は、腐敗の原因にもなり魚の身をより早く劣化させ臭みの発生に繋がります。この血液をいち早く抜くことが鮮度を保つ秘訣でもあるので、血抜きが必要だといわれています。
エラ上部の根本を切断(提供:TSURINEWSライター西澤俊彦)一番簡単な方法は、エラの上側根元をナイフやハサミで切り取り、海水を入れたバケツやバッカンにつけてエラを持ちながらザブザブと振り血液を抜く方法です。背骨に沿って太い血管が通っているので尾びれ付近もカットするとより効果的です。
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ポンプを使った血抜き
血抜きの方法も日々進化しており、さまざまな方法がありますが、現在「津本式」といわれる血抜き方法がメジャーになってきています。「津本式」とは、魚を締めた後に耐圧のホースや専用ポンプを使って血液を効率的に抜くテクニックのことをいいます。考案は宮崎在住の魚販売業をおこなう津本光弘氏。この手法を用いることで、魚を長期熟成することが出来る状態にします。
津本式血抜きの方法としては次のように行います。
脳締めを行い魚を締める→エラ付け根の大動脈を切断→尾を切り大動脈を露出させる→エラの大動脈部分に専用ポンプやホースを当てて動脈に水を流し圧力をかける→圧力にて尾の血管から血液が抜けていく。
この方法は究極の血抜きといわれ、処理をしている魚としていない魚とでは大きく食味が変わります。
血抜きをしない魚?
例外としてマゴチなど血抜きをしないほうが美味しいといわれている魚もいます。また、カツオやワラサは血を抜かないほうが味があって美味しいとの意見を聞くことも……。このあたりは好みの問題もかなりあるので、食べ比べてみるのもいいかと思います。とはいえ、日を置いて保存するなら生臭さも強くなる上、衛生面でもよくないので血抜きはしておいたほうがいいでしょう。
血抜きのマナー
血抜きは魚の鮮度を保つ効果的な方法ですが、釣り場で血抜きする際に気をつけないといけないことがあります。
船釣りの血抜き
船釣りの場合は、まず船体をナイフなどで傷つけないように注意してしなくてはいけません。血抜きをおこなっている最中は、血が船体に飛び散らないようにすることも必要です。汚してしまった場合は最後に綺麗に洗い流しましょう。また、釣り船によっては血抜きをした水を船外に流すと鮫が寄って来るなど、血抜きがそもそも禁止されている船もあるので事前に確認しましょう。
防波堤の血抜き
防波堤でバッカンやバケツを使って血抜きをした時は、魚の血が混じった海水を陸に捨ててはいけません。悪臭の原因になり釣り場を逆に汚すことになるので気をつけましょう。
船上での血抜き(提供:週刊つりニュース中部版APC・伊藤新治)こまめに血が混じった海水を海に捨てると、魚が警戒することがあるのでなるべく釣り終わりにまとめて行い、近隣の釣り人が少ない場所に捨てましょう。
神経締めもできれば行う
「神経締め」とは、血抜きをおこなった後にワイヤーなどの機具を使い、魚の背骨の上に沿って走っている脊髄を破壊する方法です。神経締めをすると、魚の死後硬直の時間を遅らせることができます。魚の鮮度が長持ちするので、できればおすすめする方法です。
神経締め(提供:TSURINEWS編集部)魚の大きさ別の締め方
魚の締め方のイメージは掴めたと思います。ではどの魚も同じ方法で良いのでしょうか?ここでは大きさ別の締め方や魚種ごとの締め方を紹介します。
氷締め
塩氷の中に釣った魚を投入して締めますが、この方法では血抜きをしなくても味に大きな影響がない小型の魚がおすすめです。魚種としては、アジ・イワシ・サヨリなど。
サバ折り
釣り上げた魚のエラ部分に指を入れて、背びれ方向にポキッっと折り曲げて締めます。締めると同時に血抜きもできる簡易的な方法で、主に小~中型青物のサバ・ヤズやカツオなどに用います。
サバ折り(提供:TSURINEWSライター藤倉聡)活け締め
30cmを超える大きな魚は前述した脳締めから神経締めまでの方法で締めると良いでしょう。もちろん余裕があれば小さい魚もこの方法でしっかりと処理すると、美味しく食べられます。
魚によっては内臓を取って持ち帰る
魚は内臓から痛んでいくといわれるように、魚を釣ったらなるべく早く内臓処理を行ったほうがよいです。なかでも次のような魚は釣れたらすぐに内臓を取ったほうが美味しく食べられます。
カワハギ
フグにも取って代わるといわれるほど美味しい魚ですが、消化能力が強い為なのか釣った後2時間ぐらいすると強烈な臭いを内蔵から発します。そして5~6時間経過するとお腹あたりが茶褐色に変色するので早めに処理しましょう。美味しい肝もすぐに取り出しておくほうが臭みが軽減します。
内臓を取り除く(提供:週刊つりニュース関東版編集部)青物
青物は足が早いので鮮度が大切だと聞いたことがあると思います。昔からのいわれの通り早く血抜きと内臓処理をしないと身が独特の生臭いにおいになってしまいます。また、内臓をすぐに取ることでアニサキスが身に移るのも抑制できます。
磯魚
メジナやニザダイ、イスズミなど磯魚は独特の香りがあることが多く、魚によっては釣り人から嫌われるほどの強烈な磯臭さを発します。しかしながらイスズミやニザダイなど生きた状態で手早く内臓処理することで美味しく食べられる魚もいます。
内臓を取るなら氷水はNG
内臓を処理した魚はきれいに洗ってから袋に入れて冷やしましょう。直接氷水に漬け込むと冷やしすぎることになり、前途した氷焼けにもなります。そして浸透圧の影響で魚の旨味成分まで出てしまう恐れがあるので気を付けましょう。
クーラーボックスで保冷して持ち帰る
締めたあとはクーラーボックスに入れて魚体を冷やしましょう。その際は、クーラーボックスの中に海水(淡水魚は真水)と氷を混ぜた氷水を作ります。これにより短時間で魚を冷やすことができます。
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帰りは袋に入れる
そのまま氷水に入れておくと身が水を吸ったり、氷に直接魚が触れることで氷焼け(冷やし過ぎて身が白くなり傷んだ状態)という状態になり、かえって魚を痛めてしまうことにもなります。しばらく魚体を冷やした後か、釣行後の帰る前でもいいので、タオルなどで水気を拭いて袋などに入れるのがおすすめです。
魚体が冷えたら袋に移す(提供:TSURINEWS編集部)クーラーボックスのサイズ
クーラーボックスのサイズの目安についても簡単に紹介します。
20L未満のサイズ
ライトフィッシングに最適な容量で、アジやイワシ、カサゴなどの小型魚を釣るときに最適です。
20~40L未満のサイズ
船での中型魚狙いや数釣りが期待できる場合に有効な容量で、タイや中型の青物まで魚体を折らずに収納できます。
40L以上のサイズ
船での沖釣りやジギングなど大型魚を狙う場合に必要なサイズです。狙う魚のサイズに合わせて内寸が足りるクーラーボックスを選ぶといいでしょう。
サイズの違うクーラーボックス(提供:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)クーラーバッグでの保冷法
クーラーボックスが無い場合は、ソフトタイプのクーラーバックで代用できます。クーラーボックスよりも保冷効果は劣るので、クーラーバックの中に発泡クーラーボックスを入れたり、通常よりも多い保冷材を使うと魚の劣化を抑えられます。
持ち帰ってからの下処理
魚釣りは波止場でも船でも思った以上に疲れます。家に帰ったらお風呂に入ってお酒飲んで寝たくなりますが、忘れてはいけない下処理があります。これをやるのとやらないとでは後々魚の味が大きく変わります。
鱗を取る
最初にするのはまず魚の表面の汚れを洗い、鱗をとります。包丁の裏側でも取れますが専用の鱗とりやペットボトルのキャップなどでも簡単に落とせます。
ウロコも鮮度落ちの原因になる(提供:週刊つりニュース関東版 編集部)内臓とエラを取る
鱗を取ったら、魚のエラを取り、内臓を傷つけないように頭を落とします。魚のエラ下部分から肛門部分までまっすぐに切り、腹を開いて内臓を掻き出します。そうすると背骨が見えてきますが、その横下に血合いといわれる血の塊があります。これをナイフで傷つけブラシ等できれいに洗い落とすと最低限の下処理は終わりです。冷蔵庫で保存する場合は、魚体から水分をしっかり拭き取ってから、空気になるべく触れないように保存しましょう。
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<TSURINEWS編集部>
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