チョウチンアンコウはどのようにして光るのか調べてみました。実はチョウチンアンコウ自体が光らせているわけではないようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
チョウチンアンコウとは
チョウチンアンコウは「アンコウ目チョウチンアンコウ科」のサカナです。深海魚と言えば?の質問対して、チョウチンアンコウを連想する方も多いのではないでしょうか。
主に大西洋の深海に分布し、カリブ海などの熱帯域からグリーンランド・アイスランドのような極圏付近までの広範囲に生息しています。太平洋・インド洋での水揚げも記録はあるものの、その数は非常に少ないと言われています。
生息水深ははっきりしていませんが、熱帯・亜熱帯域の中層(特に水深200-800 m)で捕獲されることが多いようです。
チョウチンの本当の名前は『エスカ』
チョウチンアンコウには釣り竿のような長い棒状の独特の部位があり、これは頭に一番近い背びれが進化したもので『誘引突起』と言います。チョウチンアンコウはこの誘引突起を巧みに動かし、先端の発光部位をひらひらと動かします。そしてこの先端の発光部位は『エスカ』と言います。
深海は真っ暗なため、小さく光っているエスカはまるで小魚がヒラヒラと泳いでいるように見え、それに引き寄せられたサカナをチョウチンアンコウは捕食しているのです。
しかし、実はこのエスカ、光っているように見えてはいるものの本当に光っているのはエスカ自身ではないのです。
エスカが発光する仕組み
エスカが光ってるのに光っていないとはどういうことなのか。
実はこのエスカというのはバクテリアの住処になっており、そこに住むバクテリアが光っているのです。
エスカはバクテリアを培養する役割を有しており、ここに身を隠してかくまってもらうかたちで発光バクテリアが住んでいます。エスカ自体は半分透明になっており、「中で光っているバクテリアが外から見た時にまるでチョウチンのように光って見える」というのがチョウチンが光る仕組みなのです。
「バクテリアはエスカの中に安全に住むことができる」「チョウチンアンコウは発光にエスカの発光によってエサをとることができる」というようにお互いにメリットがある関係を「相利共生」といいます。
発光させられるのはメスだけ
ちなみにチョウチンアンコウでもエスカを有しているのはチョウチンアンコウのメスだけです。オスにはエスカを持っておらず、光らせてエサをおびき寄せることができません。
オスはメスに比べて体もかなり小さく、自分自身ではうまく捕食できないため、体の大きなメスに寄生して栄養を受け取りながら生きていきます。
ですので、私たちが思い浮かべるような姿かたちのチョウチンアンコウは全てメスということになるのです。
オスはメスに吸収される運命
オスはメスに寄生すると言いましたが、実はこの寄生しているオスは次第にメスに吸収され、最終的には精子バンクとしての機能のみを持つ外部器官になるという、衝撃的な最期を迎えることが遺伝子として決められています。
過去の記録では「メス1匹に対して8匹ものオスが寄生していた」という事例もあり、真っ暗な深海で子孫を残すというのがどれだけ大変なのかを物語っていますね。
ちなみにオスの顔を正面から見ると、中央にとても大きな一対の鼻の穴があり、この鼻腔内には嗅房と呼ばれる匂いを感じる器官があります。
オスの嗅房はとてもよく発達しており、暗い水中でもメスのフェロモンの匂いを嗅ぎ分け、メスにたどり着くと考えられています。
不思議な生態持つ深海生物
チョウチンアンコウは非常にユニークな方法で発光し、暗い深海でもたくましく生きています。
もしかしたら、深海にはもっとユニークな方法で捕食しているサカナがいるかもしれません。
今後の深海魚研究に期待ですね。
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<近藤 俊/サカナ研究所>
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