11月に入ると日本海のアオリイカはそろそろ終盤戦。代わって面白くなるのが、熊野灘に面した三重県・紀東エリアだ。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
ボートエギングの2大釣法
現在のボートエギングといえば、すぐにティップランを思い浮かべる人が多いと思う。実際遊漁船ではティップランで出船している場合がほとんどだ。だが、本来ボートエギングにおいて、キャスティングとティップラン、この2つの釣法が存在する。
ティップランは船やボートを風や潮に任せて横流しにし、重いエギを底まで沈めてストロークの短いシャクリで誘い、ピタッと止めてアタリを待つメソッド。
船が風下側に流れていくため、アングラーは風上側の舷に並んでエギを真下に落とす。船が流れていくので、ラインは前方になびいていく。エギが着底したらシャクリを入れ、ピタッと止めてティップに出るアタリを感知してアワせるのだ。
エギはティップラン専用で、付けるシンカーを重くすればするほど深場を攻めることができ、水深40m以深を攻めることもある。

もう1つの釣法のキャスティングは、水深10mまでの浅場が舞台。ボートを止め、見えているシモリや藻周りにエギをキャストし、底を取った後は陸っぱりと同じく3~5回シャクリを入れ、その後のフォールやステイでイカを抱かせる。
ティップランと違い、ラインでアタリを取るのがキャスティングの特徴。
以上のことから、ティップランは風がなければ成立せず、キャスティングは逆に風があると釣りにくくなる。どちらがいいかは状況次第。ティップラン専門の乗合船ならともかく、選択できる状況であればその日の条件に応じた釣法を選択することで、より釣果が伸びるのだ。
レンタルボートで出船
釣行日は11月2日。今回の同行は週刊つりニュースAPCでイカマニアの山根充伸さんと、がまかつフィールドテスターの渡邉敦さんの2人。2人ともキャスティング、ティップランに精通しているが、山根さんの方はキャスティングの方が好み。渡邉さんはアユが本職だが、シーズンオフはエギングをはじめ、ソルトゲームに興じている。
お世話になったのは紀伊長島三浦のフィッシング光栄。レンタルボートであれば、自由に釣行プランを組み立てられる。船舶免許が必要だが、免許がない人はカリスマこと佐々木良治船長が舵を握る仕立船がお勧め。

当日午前5時半ごろに現地に到着すると、すでにカリスマ船長の息子、佐々木省吾さんがボートの点検を行っていた。
朝一はキャスティングから
今回は山根さんがボートのハンドルを握り、午前6時すぎに出船。朝一は風が全くないので、出てすぐのシャローエリアでキャスティングから始めることにした。

ものの5分でポイントに到着、早速岸に向けてキャスト開始。水深は足元で6m。鏡のような海面にPEラインが伸び、シャクリを入れるたびに鋭い風切り音が聞こえる。ボートはゆっくり潮で湾口方向に流れる。
キモは底取りとラインテンション
山根さんにキャスティングで押さえておきたいポイントを聞くと、まず必ず底を取ること。無風時であれば、ラインの動きを注意深く見ていれば必ず着底が分かる。シャクリを入れた後は、エギをフォールさせるわけだが、このときラインは張らず緩めずの状態を保つこと。
ロッドを上45~60度に構え、ラインがだらんとなるのではなく、わずかにテンションを保つ状態をキープする。エギはテンションフォールでわずかながら手前に寄ってくるため、その分だけをリールで巻き取り張らず緩めずの状態を保つ。
今回は無風だったのであまり必要はなかったが、風があったりボートが速く流されるときは、エギの鼻先にイトオモリを巻いてウエートアップすると、底取りがしやすくなる。
アタリはこのラインがピンッと弾かれたり、急にフケたり、じわーっと持っていかれたりする。いきなりティップをひったくるアタリもあるが、得てしてそういうアタリは空振りが多い。
朝イチは400gアオリイカ
この日の朝は、完全無風の絶好のキャスティング日和。じっとラインを凝視する山根さん、そのラインのわずかな変化を捉えてヒットに持ち込んだのは、開始して30分ほどしてからだった。
ゆっくり抜き上げたのは胴長20cm、重さにして400gほどのアオリイカ。今の時期にしては小ぶりだが、まずは1匹キャッチしてホッとひと息だ。その10分後、今度は渡邉さんにヒット。露岩周辺に投げたエギに飛びついてきたのは、600gのまずまずサイズ。じんわりとティップを押さえ込むようなアタリだったそうだ。

磯周りで連打
反応が薄くなったところで、対岸の磯周りへ移動。ここはやや深くボートポジションで水深12mほど。ここでは撮影の合間にエギを投げていた私にヒット。実を言うと恥ずかしながら、シャクったら乗っていたというパターン。アタリを感知するため、いかにラインテンションに気を配ることが大事かということだろう。

その後は山根さんの独壇場。さすがキャスティングを得意としているだけあって、単発ながら着実に数を稼いでいく。エギは最初2.5号のヤマシタエギ王ライブにイトオモリでチューニングしたものを使っていたが、途中からデュエルのイージーQキャストプラス3号にチェンジ。
ティップランへ転戦
さらに反応が良くなりイケスの中のアオリイカが10匹を超えたころ、風が吹き始めた。時刻は11時。ここぞとばかりにボートを沖へ向けて走らせる。ティップランの時間だ。
事前の省吾さんの情報では、水深36mぐらいまではイカが釣れていたらしい。山根さんがティップランで愛用するのは、レトロなアジングロッド。ティップの軟らかさがちょうどいいらしいが、グリップエンドが短いのが難点らしい。

エギは仮面シンカーを付けたエギの上に、もう1つ小型のエギを付けるお助けリグ。2つのエギで誘うわけだが、なぜかヒットは上のエギに集中するらしい。お助けリグのキモは、上になるべく小さいエギを付けること。

1.8号エギで770gアオリ
水深25mラインから岸に向けて流していくが、なかなかアタリがない。風はちょうどいい感じで、ボートはほどよい速度で流れてくれる。キャスティングなら邪魔な風だが、ティップランではこの風がないと釣りが成り立たないのだ。
2度目の流し替えはコースを少し変えて、やはり25mから流していく。すると、22mで山根さんに待望のアタリ。グイングインとアジングロッドを絞り込み、良型を予想させる。

やがて浮いてきたのはこの日の最大となる770g。やはりというか、上の1.8号のエギをしっかり抱いていた。
風裏で再びキャスティング
だが、この後はさっぱり。35mまで探ってみたが、魚らしいアタリがあった他は何もなく、再びキャスティングに戻ることになった。
ポイントは朝の湾口のシャローか島周りか迷ったが、山根さんのカンは鈴島という島のサーフに絡むシャロー。ここならまだ吹いていた風も遮られる。

水深6mのポイントにボートを止めると、思った以上に流される。風が巻いてわずかながら当たることもあるが、潮がかなり効いているようだ。
そしていきなり山根さんのロッドが弧を描く。イージーQを抱いて上がってきたのは、500gクラスのアオリイカ。さらに連発で、次々ヒットを重ねていく。苦戦していた渡邉さんも久しぶりのヒットに、安堵の表情を浮かべている。

ボートがある程度流されたら、再びシャローに戻して流し直す。結局ここで5匹のアオリイカを確保し、計18匹の釣果で午後3時に帰港した。
状況に応じて釣法を使い分けよう
港に戻ってみると、ティップランオンリーで出たボートは全滅。船中で1~2匹といったところだったようだ。結論としてこの日はキャスティングが良かったということだが、この逆のパターンもしょっちゅうある。
「どちらかしかできない」というのは、釣りの幅を狭めてしまう。状況に応じて、どちらの反応がいいかを見極めた上で釣法を選択するのがベストということだろう。もちろん海況や時期によっても変わってくるが、今年は11月に入っても異常な暑さが続いていることもあり、まだまだ紀東エリアのボートエギングは楽しめそうだ。
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<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>
▼この釣り船についてフィッシング光栄
この記事は『週刊つりニュース中部版』2023年11月17日号に掲載された記事を再編集したものになります。