海上での手前船頭の釣りを始めたい方にとって、カヤックと2馬力ボートはいずれも有力候補。どちらも免許や船舶検査が必要なく、自分で所有できる自分専用の船です。

今回は、カヤックと2馬力ボートを比較し、これから入門する方にとってのハードルの高さを検証します。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・福永正博)

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハード...の画像はこちら >>

カヤックと2馬力ボートの特徴

まず、この解説で対象とするカヤックと2馬力ボートがどのようなものかふれておきましょう。

カヤック

基本的に、両側にブレード(水かき)がついたパドルで漕ぐ小舟をカヤックと呼びますが、筆者が愛用するホビーカヤックのように、足で漕ぐタイプも釣り用として人気があります。

海のカヤックフィッシングで主流なのは、気室を確保した船体の上に座る「シットオントップ」と呼ばれるタイプ。波をかぶってもカヤックの気室内に海水は侵入せず、スカッパーホール(排水穴)から排出される特徴をもっています。

ひっくり返ってしまうことはあっても、沈んでしまうことはありません。素材は、ポリエチレンやFRP、ABSなどの樹脂製が一般的です。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
砂浜からカヤックで出艇(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

2馬力ボート

一般的にいわれる2馬力ボートとは、出力が2馬力未満のエンジン(船外機)を積んだ、長さ3.3m(登録長3m)未満のボートのこと。この条件を満たしていれば、船舶免許や船舶検査(船の車検)が必要なく、2馬力ボートの人気が高い大きな理由となっています。

シットオンタイプのカヤックと違い、侵入してきた海水が船底に溜まっていく点は、多くの方が想像するボートのイメージどおりですが、船体に浮力をそなえた不沈構造のモデルも存在。

たいていのモデルは、カヤックとくらべて幅が広いため安定性に優れており、船上のスペースにも余裕があります。

大きく分けて、空気を入れて膨らませるゴムボートと、ポリエチレンやFRPなどの樹脂で作られたボートの2種類があります。それでは、カヤックと2馬力ボートの入門ハードルについてくわしく見ていきましょう。

ハードルその1:価格

まず、入門する際のハードルとして思い浮かぶのが価格です。

激安モデルは避けた方が無難

価格の高さは、導入時のハードルの高さに直結しますよね。とはいえ、品質に不安がある激安モデルはおすすめしません。

大げさではなく、自分の命を預けるものですから、ある程度の出費は必要だと思ってください。

また、安さ最優先でカヤックやボートを買った方は、その後に上位モデルが欲しくなることが非常に多いです。いざ手放したくなっても、中古の激安モデルは買い手がつきにくく処分に困ることも……。

最終的には個人の自由ですが、安物買いの銭失いにならないようにしたいですね。

カヤックと2馬力ボートの価格帯

フィッシングカヤックは10万円台が最低ライン。おおよそ30万円以上になってくると、ベテランでも満足できる上位モデルの部類に入ってきます。

2馬力ボートも10万円以上のモデルをおすすめしますが、それはあくまでボート単体での価格。当然、別途エンジンが必要です。ホンダやスズキ、トーハツなど、信頼性が高い国産メーカーのエンジンは10万円以上すると考えてください。

2馬力ボートの場合、船体とエンジンなどがひと通りそろったセット販売も一般的で、別々に購入するより割安なことも多いので要チェック。

セット価格の目安は、25万円ほどからスタートして40万円台くらいです。もちろん、ボートのグレードや素材、オプションの有無によって価格がちがってきます。

ボート本体以外に必要なもの

2馬力ボートの場合、船体とエンジン以外にも必要なものがたくさんあります。

・予備の燃料を運ぶガソリン携行缶
・エンジンの運搬やメンテナンスに使用するエンジンスタンド
・各部のスペアパーツ
・ポリ・FRP艇の場合はサイドフロート
・ゴムボートならば空気入れ

カヤックと2馬力ボート共通のものでは、ライフジャケットやセーフティフラッグなどが挙げられます。

と、これで終われば良いのですが、ほとんどの方は魚探やロッドホルダー、船体の大きさに合ったクーラーボックスなどが必ずほしくなりますよ。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
携行缶は必須(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

2馬力ボートの方が高価

一般的な傾向としては、2馬力ボートの方が価格のハードルが高めといえるでしょう。釣行のたびに燃料代がかかる点でも、2馬力ボートが金銭的に少し不利な印象です。

とはいえ、カヤックと2馬力ボートどちらにしても、すべてを一からそろえる場合は、本体以外にもそれなりのお金がかかると考えておきましょう。

ハードルその2:出艇場所

価格のハードルを越えられたとしても、購入前に検討しておくべき重要なことがあります。それが、自分が釣りをしたいエリアに出艇できる場所があるかどうか。せっかくカヤックや2馬力ボートを買っても、出艇できる場所がないと意味がありません。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
出艇しやすい海岸(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

出艇しやすい場所

カヤック、2馬力ボートともに、出艇しやすいのは駐車場が近く波がおだやかな海岸。駐車場から遠く離れていたり、土手や階段を乗り越えたりするような場所は、たとえエントリー可能だとしても、もう2度とやりたくないと思うほど大変なことが多いです。

比較的エントリーしやすいのが砂浜の海岸ですが、フカフカの砂浜での移動は体力勝負の一面も。ただ歩くだけでも負担の大きい砂浜で、重たいものを引っぱるのですから、その大変さは想像に難くないでしょう。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
出艇を難しくする土手や階段(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

スロープが最適

理想的な出艇場所は、漁港やマリーナにあるコンクリートのスロープなのですが、現実は甘くありません。たいていの漁港やマリーナは、カヤック・2馬力ボートの出艇は不可。

もしも近くにスロープを使わせてくれる漁港やマリーナがあれば、それは本当にラッキーなことです。その際は、利用料金や利用時間、その場のルールなどをよく調べて、自分のスタイルに合っているか検討してみてください。

2馬力の方が大変

出艇場所に関するハードルは、2馬力ボートの方が高いといえます。船体が重く、装備品も多い2馬力ボートの方が出艇場所を慎重に選ぶ必要があります。

ハードルその3:重さ

前項でもふれましたが、出艇を中心に様々なことに影響するのが船体の重さです。基本的に、軽ければ軽いほど扱いやすく体力を使わずにすみます。

カヤックの重さはどれくらい?

一般的なフィッシングカヤックは、20kgほどで軽量級、重めのモデルで30kg台といったところ。20kg以下であれば「すごく軽いカヤックだな」、40kg以上であれば「うわっ、かなり重たいな」と感じます。

個人差はありますが、20kgくらいのカヤックであれば、頭上にもち上げることが可能なレベル。ドーリーを使用してカヤックを引っぱれば、すべての装備を載せてもたいてい片道1回の移動で出艇できます。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
ドーリーを使ってカヤックを運搬(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

2馬力ボートの重さ

ゴムボートときくと、風船みたいに中身は空気だから軽いのでは?と考えてしまいがちですが、実際には20kgから30kg以上あります。安全性確保のため、分厚く頑丈に作ってありますからね。

ポリ・FRP艇は、ゴムボートよりワンランク重く、30kg前後から40kg台。ボート本体と10~15kgほどの2馬力エンジン、さらに予備燃料や氷を入れたクーラーボックス、釣具をつめ込んだタックルボックスなどを載せると合計60kgを超えるケースもめずらしくありません。

ドーリーを使用したとしても、1人で砂浜を引っぱって移動するのがかなりキツい重量です。駐車場と出艇場所を何度か往復し、荷物を分散すれば解決できますが、どうしても時間と労力がかかります。

共同作業で問題解決

有効な解決策は、2人以上で釣りに行くことです。多くの2馬力ボートは、重たいかわりに2~3人乗りが可能なので、釣り仲間を誘って作業を手伝ってもらいましょう。

2人以上いれば、ボートから目を離してしまう時間が少なくなるので、イタズラや釣具を盗難される心配も減りますよ2馬力ボートの重さは、入門者にとってハードルが高いといえます。

とくに、1人での釣行がメインの方は、購入前に2馬力ボート一式の重さを体験すること、もしくは経験者の話を聞いておくことをおすすめします。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
砂浜から2人で出船する(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

ハードルその4:車載

出艇する前の段階である車載についても検討してみましょう。

カヤックはカートップがメイン

カヤックは、カートップが多数派で、車にルーフキャリアを取り付ければたいていのカヤックが車載可能です。コツをつかめば、重量級カヤックのカートップもそれほど苦ではありません。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
車載にはルーフキャリアが必要(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

2馬力はトレーラーが楽

2馬力ボートはタイプが多くて少々複雑なのですが、ポリ・FRP艇はカートップかトレーラー使用が一般的で、分割式のポリ・FRP艇であれば分解して車内積みが可能な場合もあり。

ゴムボートは、空気を抜いて折りたたみ車内に積みます。カートップする際は、重たいエンジンや荷物は降ろしている状態なので、カヤック同様それほど重さを怖がる必要はないでしょう。

ちなみに、トレーラーはエンジンや荷物を積んだままのボートを載せることができ、まるごと水洗いもできて非常にラクで便利です。しかし、トレーラーの購入費や維持費、保管場所、釣り場での駐車スペース確保、車を乗り入れできるスロープを見つける必要性などを考えると、入門者にとっては高すぎるハードルといえますね。

ゴムボートが車載のハードルがいちばん低いといえますが、カヤックやポリ・FRP艇の車載もそれほど高いハードルではありません。

トレーラーの導入は、将来の楽しみにとっておきましょう。

ハードルその5:準備・片付け

ここでは、準備・片付けについて見てみましょう。毎回必ずおこなうことなので、釣行の手軽さに大きく関係する項目です。

カヤックとボート 準備・片付けはどっちがラク?

いきなりですが、順位をつけてしまいます。

1位 カヤック 
2位 ポリ・FRP艇
3位 ゴムボート

この順位は、「釣り場に到着してからいかに早く出艇できるか」、「釣りが終わった後いかに早く釣り場を去ることができるか」にフォーカスした結果です。

「片付け」には、道具をしまうだけでなく、船体の水洗いとその後の拭きとりまで含んでいます。

筆者は以前、海水で濡れたカヤックをそのまま車載して、帰宅後に水洗いしていました。その結果、ボディにひどいサビが発生し車を買い替えるハメに……。そのため、釣り場での水洗いは必要不可欠だと考えています。

カヤック

1位のカヤックは、船体が軽くて装備もシンプルなので、準備・片付けがスピーディー。準備は、テキパキやれば30分以内に出艇可能。

片付けは、船体だけでなくロッドやリールも洗ったり、疲れていてペースが落ちたりするので準備よりも時間がかかりますが、1時間もあれば終わります。

ポリ・FRP艇

2位のポリ・FRP艇は、1位のカヤックにエンジン関連の準備・片付けをプラスしたイメージ。

水洗いや拭きとりに関しても、大きくて重たいことにくわえ、スカッパーホール(排水穴)がなく水が溜まる構造のため、カヤックより大変な印象を受けます。

ゴムボート

3位のゴムボートは、2位のポリ・FRP艇に、空気を入れる、空気を抜いてたたむという手間をプラスしたイメージ。空気の出し入れは、電動のエアコンプレッサーを使えば早いですが、近所迷惑を気にする場所では手動の空気入れを使うケースもあります。

また、ゴムボートの生地に海水や魚の血が残っていると、劣化やニオイの原因になります。釣り場で片付けるときも、しっかり水洗いしておくことをおすすめします。

結論:準備・片付けのハードルは?

準備や片付けのハードルがもっとも高いのはゴムボート。ハードルが低いのはカヤック。ただし、慣れないうちはカヤックでも片付けに1時間ほどかかると考えておきましょう。

ハードルその6 メンテナンス

次は、釣りから帰ってきた後、自宅でおこなうメンテナンスに関するハードルを見てみましょう。長く使用するためには大切なことです。

船体のメンテナンス

前項にも関連しますが、カヤックや2馬力ボートの船体メンテナンスの基本は水洗いによる塩分除去。自由に使える水道と場所が必要です。水洗い後は、ラダーやハッチのフタなどの可動部や、金属製のパーツ類に潤滑剤を注油しておきましょう。

次回の釣行でも快適に使用できて、長持ちにもつながりますよ。ゴムボートの場合は、釣り場での水洗いだけでは足らず、自宅でもう一度膨らませて、ていねいに洗浄することも多いです。

キズや穴がないかじっくりチェックもできる点もメリット。ただし、二度手間になるのでどうしても面倒に感じてしまいますね。

エンジンはしっかりメンテナンスしよう

2馬力エンジンの多くは水冷式で、内部の通路に海水を通すことによってエンジンを冷却しています。

毎回必ずメンテナンスしないと、腐食や詰まりなどのトラブルの原因に。洗浄・フラッシングは、大きなバケツなどに水を貯め、その中でエンジンをかけ真水を循環させて塩分を流します。

釣りから帰ってきて疲れた状態で毎回おこなうこと、水道が自由に使える広めのスペースが必要なこと、エンジン音が迷惑にならない場所・時間帯であることなど、越えるべきハードルが多い印象ですね。

もちろん、空冷式の2馬力エンジンも、たっぷりと潮風にさらされ海水に浸かる部分も多いので、水冷式とほぼ同じようなメンテナンスが必要です。

そのほか、やはりエンジンですから定期的なオイル交換も必要ですよ。メンテナンスのハードルがもっとも高いのはゴムボート。エンジンのメンテナンスを怠ると、後々高額な出費につながるのでサボらないようにしましょう。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
ホンダ製空冷2馬力エンジン(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

ハードルその7:保管

使用後のメンテナンスが完了したら、次回まで保管しておくことになります。購入したのに保管できない事態とならないように、事前に準備・検討しておきましょう。

保管にはスペースが必要

カヤックやポリ・FRP艇は、それなりに広い保管スペースが必要です。一戸建てかマンション住まいかなど、住んでいる環境によって保管が難しい場合もあるでしょう。苦肉の策で、「ルーフキャリアに積んだまま」という方法もあります。

その際は、紫外線による樹脂の劣化を防ぐためカバーをかけることが重要です。筆者も、釣行回数が多いため、よく車の上に載せたままにしますが、水洗いとカバーだけは欠かさずおこなっています。

それに対して、ゴムボートはコンパクトになるため室内保管が容易。保管スペースにあまり悩まない点は、ゴムボートの大きなメリットといえるでしょう。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
保管時のカバーは必須(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

ゴムボートが一番楽

自宅の環境によりますが、カヤックとポリ・FRP艇の保管のハードルは高め。もっとも保管で悩まないのはゴムボートです。

ハードルその8:知識

ここでは、ハード面の話題から離れて、知っておくべきことや心構えについてご紹介します。

複雑なものほど壊れやすい

カヤックは構造がシンプルなので、壊れる部分がそれほどありません。帰着困難になるのは、「パドルや足漕ぎドライブを破損したが、予備パドルを装備していなかった」、「ドレンプラグを閉め忘れて水没した」など、人間側に原因があるケースが大半です。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックの動力はシンプル(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

それに対して、2馬力ボートに積まれる「エンジン」は複雑な機械。故障する可能性を100%排除することはできません。エンジンが壊れてもオールを漕いで帰ればいいのでは?と考えるのは非常に危険です。

もともと幅広で抵抗の大きい2馬力ボート。風や潮流に逆らって、慣れないオールを必死に漕いでもたいして進みませんよ。沖に出ているときのエンジントラブルは、すぐさま漂流の危機に直結します。そのため、ある程度のトラブルは自力で解決できる知識が必要不可欠です。

操作や構造の基本は知っておく

そもそも機械的なトラブル以前に、入門者の方に見受けられるのが、エンジンの基本的な操作方法や構造を知らずに出船してしまうケース。

例えば、「キャブレター」とはなにか知っていますか?くわしく説明すると長くなるので省略しますが、知らない方は本やネットで調べておきましょう。

最近の自動車やバイクは、なにもかも自動で制御されていてボタンを押せばエンジンがかかります。しかし、シンプルで軽量、安価なことが求められる2馬力エンジンは、昔ながらのアナログ要素が残っている機械で、人間側が適切な操作をしないとエンジンがかからないことが普通に起こります。

筆者は、たまたま古いバイクが好きでメカニックの経験もあったので知っていましたが、最近の若い世代には「キャブレターなんて聞いたこともない」という方も多いでしょう。初出船する前に、基本的なことを勉強しておくか、せめて取扱説明書だけでも熟読しておいてください。安全性確保の最低条件です。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
エンジンに関する基礎知識は身につけておく(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

海上でのエンジントラブルに対処

2馬力ボートで釣行中に起こるトラブルの一つが、プロペラへの異物絡み。海藻や捨てられた漁網、自分が使っているPEラインなどがプロペラに巻きつくと、エンジンが動かなくなってしまいます。

エンジンを船上に引き上げて絡んだ異物を取り除くのですが、プロペラをはずした際に小さな金属の棒(シャーピン)や割りピンを紛失すると大変なことに。1個100円くらいのちっぽけな部品なのですが、これらがないとプロペラが空回りしたり、脱落したりしてしまいます。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
海上でのトラブルでエンジンを引き上げる(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

エンジンの劣化も

そのほか、長期間使用しなかっただけでエンジンがかからなくなることもあります。おもな原因は、キャブレターの詰まりやガソリン自体の劣化など。対策は、保管する前にガソリンを抜いておくだけです。

知っていれば防止できるトラブルの良い例ですね。エンジンが致命的なダメージを負ってしまったら、さすがに海上での修理は不可能ですが、前もって知識を習得しておくことや、予備のパーツをもっておくことで、予防や現場対応が可能なトラブルはたくさんあります。

最低限のルール・マナーは知っておく

免許不要であることは、カヤックと2馬力ボートの大きなメリット。しかし裏を返せば、ルールやマナーを学ぶ機会がないまま海上に出てしまうため、デメリットともいえます。最低限、下に挙げたルールやマナーは把握しておきましょう。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
海を往来する大型船(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

ルール

・航路や港の出入口で釣りをしない
・他の船と向かいあったら右側によける。

マナー

・漁船や遊漁船に近寄らない。
・遊漁船が船を流しているコースへ入らない。
・岸釣りをしている人からじゅうぶんに距離をとる。
・勝手に漁港や公園の水道を使わない。長い時間独占しない。
・セーフティフラッグを装着する。……など。

相手の立場や一般常識を考えて、釣り人としてまわりに迷惑をかけないように気をつけましょう。トラブルや事故が起きると、出艇禁止や立入禁止になってしまい釣りができなくなってしまいます。

天候について知っておく

海の天気は変わりやすく、予報とはちがう状況になることもよくあります。かといって、どうせアテにならないと考えて予報も見ずに出艇するのは非常に無謀。

最初のうちは、複数の海況予報サイトを比較して傾向をつかみましょう。風速や波高がどれくらいならば出艇可能かわかってくるはすです。

一般的に、風速2m以下・波高0.2m以下くらいであれば、入門者の方でも安心して釣りを楽しめる海況ですが、そのエリアの地形や特性によっても変わるので一概にはいえません。

また、海上での判断基準を把握しておくことも非常に大事です。

例えば、

・「白波が立ち始めたら風速5mほど。安全性に不安が出てきて、釣りもしづらくなるので帰着の合図だな」
・「今日は南風が吹きだしたら強風予報なので、風向きの変化に注意しておこう」

など。

海況予報と現場の状況、どちらもしっかりと意識して釣りをすることが安全につながります。

カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
カヤックフィッシングと2馬力ボート釣りを徹底比較 入門ハードル低いのはどちら?
天候や海況には敏感に(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

いずれも知識は必要

2馬力ボートはエンジンに関する知識のハードルが高いといえます。ルールやマナー、天候に関しては、カヤックと2馬力ボートどちらにしても必ず把握しておきましょう。

ハードルその9:体力と機動力

カヤックか2馬力ボート、どちらにするか迷う大きなポイントが「どちらが体力を使うか」、「どちらが海上での機動力があるか」ではないでしょうか?

カヤックは体力が必要?

カヤックは人力で進むものなので、当然ある程度は体力が必要です。鳥山を追いかけて全力でダッシュすると、息が切れて汗もかきます。

とはいえ、釣りをしている間、常に漕ぎ続けるわけではありません。基本的に、最初に目指すポイントに到着したら、その後はカヤックを流しながら釣り、流された分少し戻るのをくり返し、大きくポイントを変えたくなったら長めに漕いで……というイメージです。

ベタ凪であれば、カヤックが流されずのんびりと釣りができて、それほど体力は使いません。

もっとも体力が必要とされるのは、不意に荒天になって岸まで戻るときです。沖へ沖へと流される状況では、休むことなく漕ぎ続けて無事に着岸しなければなりません。

風や波、潮流に逆らう場合、なかなかカヤックのスピードが出ないことを忘れないこと。普段の巡航速度は時速4~7kmほどですが、海面が荒れると時速2~3kmほどまでスピードが落ちます。

カヤックの機動力

意外と忘れがちなことですが、カヤックの機動面のメリットを感じるのは、ちょっとした移動や向きを修正するとき。いちいちエンジンを始動することなく、ほんの少し漕ぐだけで自分が思ったように動かせるので、釣りをする上で便利と感じる場面が多いです。

2馬力ボートは疲れない?

2馬力ボートで体力を使うのは、陸上での作業がほとんど。出艇してしまえば、エンジンで移動するので非常にラクです。恵まれた条件の場所から出艇できれば、それほど体力を使うことなく釣行を終えることができます。

巡航速度は、MAX時速8~10kmくらい。もちろん、カヤックとちがい体力による制限がないので、長い距離でもそのスピードを維持することができます。

ただし、カヤックと同様に荒天時にはスピードがガクッと落ちるので、むやみに沖に出るのは要注意。毎年、2馬力ボートによる帰着困難事例も発生しています。

機動力は場面次第

体力面のハードルはカヤックの方が高いです。ただし、2馬力ボートは海上に出るまでに体力が必要なことがあります。機動力は、クイックさが必要な場面はカヤック、長距離の移動は2馬力ボートが優れています。

レンタルや体験会を利用する

カヤックか2馬力ボートか、どうしても決められないときや、買うかどうか決心がつかないときは、レンタルボートやカヤック体験会などを利用して、1度実際に乗ってみるのがおすすめです。

操作感や釣りのしやすさを実感でき、経験者の生の声も聞けます。許可を得て、カヤックをもち上げてみたりボートを引っぱってみたりできれば、より具体的に自分との相性がはっきりするでしょう。

購入するのは、その後でも全然遅くはありませんよ。

新たなフィッシングライフを!

ここまで読んでいただいて、「カヤックも2馬力ボートもハードルが多いな」という印象をもたれた方もいるかと思います。筆者としては、みなさんに失敗や後悔をしてほしくない一心で、いろいろと紹介しましたことをご理解ください。

これからカヤックや2馬力ボートに入門してみようとお考えのみなさん、ぜひともハードルを飛び越えて、新たなフィッシングライフを始めてみましょう!

カヤック&SUPフィッシングの機動力を徹底比較 良いとこどりの最新艇も紹介

1人乗りと2人乗りのカヤックは【どちらが釣り向き?】 オススメのタイプも紹介

LINEで『TSURINEWS』の厳選記事が届く!「アカウントメディアプラットフォーム」に...

<福永正博/TSURINEWSライター>

編集部おすすめ