日本ではしばしば「幻のサカナ」と言うワードも耳にしますが、いったい何種類くらいいるのでしょうか。調べてみました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
幻と言われるサカナたち
この地球上には広く知られているサカナから、ほとんど知られていないサカナまで実に多くの種類のサカナが存在しています。
その数はなんと36000種類以上と言われています。
そのうち日本では、約3000種が存在し、さらにそのうちの約500種が食用になっていると言われています。
そんな数多くのサカナの中には「幻の~」とつくサカナがおり、市場価格で数万円から数十万円で取引されることもあるものが存在します。
今回はそんな幻と呼ばれているサカナをいくつかご紹介していきます。
クエ
幻の魚と聞くと一番想像されるのはきっとこのサカナでしょう。
大きいものだと体長1、2m、重さは50kgを超えることあるクエはハタ科のサカナです。
長崎県や高知県などが産地として知られていますが、基本的には関東以西で漁獲されるサカナです。
しかし、産地といえどもなかなか釣り上げることが難しく、その漁獲の少なさと、あまりの美味しさから「出会ったら旬」と表現されるほど。
近年ではすこしずつ養殖技術が確立されてきています。

アラ
アラはスズキ目アラ科の海水魚です。
前述のクエの九州地方での地方名が「アラ」であり姿もそっくりであるため混同されやすいですが別のサカナです。
クエと区別するためにクエが「ハタ科のアラ」と呼ばれるのに対し、こちらは「スズキ科のアラ」と呼ばれています。
スズキに似た見た目をしていますが、口は比較的小さく、やや褐色を帯びているのが特徴です。
また、味についもクエと同様で非常に美味とされ、大型になればなるほど希少価値も高くなりキロ数千円から数万円にもなると言われています。

ゲンゲ
ゲンゲは、水深200m以深に棲む深海魚です。
体長20cmほどで細長く、身は白く透明感のあるサカナです。
全身がヌルヌルとした分厚いゼラチン質で覆われおり、グロテスクな顔つきも災いして、漁師たちの間では「下の下(げのげ)」と呼ばれ、浜に打ち捨てられていたといいます。
しかし、近年の保存や下処理の技術の向上によりその評価は一変し、割烹や料亭で天婦羅や唐揚げとして提供されはじめています。
いつしか高級食材となったゲンゲは滅多に出逢うことのできない幻の魚として「幻魚(げんげ)」と呼ばれ、まさに幻のサカナとなっています。

シーラカンス
幻のサカナ、そして「生きた化石」と言われている唯一の存在「シーラカンス」。
はるか昔3億5千万年前から変わらぬ姿で今もなお深海に存在しているサカナです。
1938年に南アフリカで見つかってから、コモロ諸島やタンザニア、インドネシア等でたびたび発見されています。
発見例が少なく、現存する個体数も少ないとされ未だに分からないことが多いことから幻のサカナだと言われています。
しかし、たびたび刺し網の漁にかかってしまうことから再度絶滅してしまうのではないかと懸念されているようです。
日本では、静岡県にある沼津深海魚水族館で、冷凍保存されているシーラカンスを観察することができます。

日本三大怪魚(アカメ・ビワコオオナマズ・イトウ)
日本には幻のサカナではなく怪魚と呼ばれている3種類のサカナも存在します。
アカメ
成魚は全長1mを超え、重さは30kg以上にもなる大型魚。
西日本の太平洋沿岸部に生息する日本の固有種で、主な生息地は高知県と宮崎県です。
名前は、暗い場所で光が反射した際に赤く光る目が由来しています。
主な生息地のひとつである宮崎県では2006年から指定希少野生動物に指定されているため、釣ることが禁止されています。
ただクエとは異なり「大きいものは美味しくはない」「河口域のサカナだから臭い」「鱗が固くヌメリもある」などとも言われており、食用に向くのはせいぜい70cm以下のようです。
ビワコオオナマズ
その名の通り琵琶湖に生息している大きなナマズ。
なかなか釣ることが難しく、幻とのサカナと言われることもあります。
日本の固有種で、琵琶湖とその流出河川にあたる淀川水系にのみ生息しています。
日本産ナマズ類として最も大きく成長する種類で、最大で体長120cm、体重20 kgほどにもなります。
体格にはオスとメスで差があり一般にメスの方が大きく、100 cmを超える大型個体はほとんどがメスだそうです。
独特の臭みからほとんど食用にはされていません。
イトウ
イトウはサケ科イトウ属に属する日本最大の淡水魚です。
成魚になると体長は最大で1mを超え、体重は45kgにも達します。
日本では昭和12年に、十勝川下流で体長2.1mのイトウが捕獲されたことが、最大記録として残っています。
以前までは東北地方にも生息していたようですが、そちらは絶滅し、国内では北海道でのみ生息しています。
非常にどう猛で他の大型のサカナや水面に落ちたネズミ、ヘビまでも食べてしまうこともあるようです。
漢字では「魚偏に鬼」で【魚鬼】と書き、すさまじいパワーと悠然と泳ぐ姿から「湿原の王者」と呼ばれて言います。
まだ見ぬ幻のサカナ
幻のサカナと言われているものは他にももっとたくさん存在しています。
釣り人から研究者まで、いろいろな視点で価値も変わるため、一概に評価はしにくいところがあります。
まだ見ぬ「幻のサカナ」はきっと数多く存在するでしょう。
「幻影の怪物」と呼ばれる深海魚が水揚げされて話題に そのお味は?
幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?
LINEで『TSURINEWS』の厳選記事が届く!「アカウントメディアプラットフォーム」に...
<近藤 俊/サカナ研究所>