夏場を中心に磯の浅場に潜む習性があるムラソイ。しかし、こんなにも釣れる釣りなのに、なぜか全然知られていない……。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・アングラー「K」)
極浅エリアのムラソイゲーム
今日は旧友との釣りの日。対象魚はムラソイです。特に夏期は、極浅の潮が流れ込む岩の隙間にルアーを送り込み、バイトを誘発させて根に潜らせないよう一気に引き抜くという釣り方。簡単に数が釣れ、大物も期待できるこの釣りが、私は大好きです。
旧友は私と同い年で、普段はクロダイをメインに狙うエサ釣り中心の釣り師です(以下、N氏と表記)。高校の同期で、普段は飲み会などで会うことが多いのですが、今回はぜひこの釣りを勧めたいと思い、声をかけてみました。
釣友との出会い
彼を誘おうと思ったきっかけは、2年前に遡ります。同じ釣りをほぼ同じ場所でしていたところ、クロダイ狙いのしっかりとした装備を持つご年配の釣り人に声をかけられました。
「釣れますか?」と聞かれ、「10匹くらいですかね」と答えると、「えっ! そんなに! 何が釣れたんですか?」と驚かれました。「ムラソイですよ。この時期はたくさん釣れますし、大きいものは25cm以上あるので、結構楽しめますよ」と説明しました。
さらに「それはすごい! どんな仕掛けで釣るんですか?」と聞かれたので、私の直リグ+ワームのリグを見せて、簡単に釣り方を紹介しました。
そんな出来事から「こんなに簡単に楽しめる釣りを、意外と多くの人が知らないんだな」という印象が、私の中に深く残りました。だからこそ、普段エサ釣り中心の釣り人がこの釣りを知ったらどうなるのかを確かめたくなり、今回のN氏との釣行を企画したのです。
釣行前に竿が折れる
釣行前にアクシデントが起きました。ロッドのティップが折れてしまったのです。子どもの頃から長く釣りを続けてきた私ですが、ティップを折ってしまったのは記憶にある限りでこれが2回目……。それほど稀なアクシデントです。今日の釣りに不吉な予感がよぎりました。

釣行(朝練)開始
さて、実釣の話に戻ります。「ぜひ爆釣を体験してもらいたい」と思い、N氏と釣る前に海の状況を探るべく、早朝に“朝練”として一人で出かけたのでした。そして、ティップが折れたのは、そのときのアクシデントです……。
しかもこの釣りは、ピーカンで潮通しが良いときが最適なのに、この日は曇天。現地に着くと、ほぼべた凪の状態でした。最悪に近いコンディションに、再び嫌な予感が走りました。

良くない海況の中でムラソイ手中
天気予報を見ても回復の見込みはなく、日本海側ということもあり、潮汐の影響も受けにくいため、今日の釣りはコンディションとしてあまり良くないと分かっていました。
それでも、何かきっかけになるものがあるかもしれないと釣ってみたところ、1時間ほどの間になんとか2匹のムラソイをキャッチすることができました。

しかし、状況は渋いままです。良さそうな場所にワームを送り込めば、ムラソイが出てくるものの、バイトまでは至らない……。あるいは、バイトがあっても浅くてフッキングしない……。釣れない状況によく見られるパターンでした。
それでも「早朝よりは多少明るくなってきたし、爆釣とはいかなくても何とか釣りにはなるだろう」と楽観視して、N氏との合流を待つことにしました。
釣友と合流
11時ごろ、合流したN氏とともに磯へ向かいました。場所は、場荒れを避けるために朝には攻めなかったエリアを選びました。
私は持ってきたリグとワームをN氏に渡し、釣り方について簡単に説明しました。ワームを送り込む場所のポイントは、
1. 岩と岩の間
2. 潮の流れがある
3. 海藻が少ない
4. 生命感があり、水深50cm以内
この4つを満たす場所が理想です。
魚のアタリなく苦戦
その後、お互いに思い思いの場所で30分ほど釣ってみましたが、二人ともノーバイト。私の釣り状況を分析すると、完全にムラソイが警戒モードに入っており、姿を見せてもバイトしないケースばかり。まったく歯が立ちません。
離れた場所で釣っていたN氏に「どう?」と大声で尋ねても、手を横に振るばかり……。
「場所を替えようか?」と提案してみたものの、この状況では私にも有効な打開策が浮かばず、まさにお先真っ暗でした。これも、あのティップが折れた呪いのせいなのでしょうか……。

ポイント移動でムラソイ追加
次に向かったのは、ゴロタの磯場です。普段は波の影響を受けやすく、なかなか磯に立つのが難しい場所ですが、この日はほぼべた凪だったため、入ることができました。

しかし、ここでも状況は同じ……。ムラソイは姿を現すものの、やはりバイトには至らず。厳しい状況が続きます。私は直リグをあきらめ、ジグヘッド+ワームに変更して、根周りをキャストして探ることにしました。
すると、小型ながらもなんとか2匹のムラソイをキャッチすることができました。「いるにはいるけれど、こういうムラソイゲームじゃないんだよなぁ……」と、少し残念に思いながらも、気を取り直してN氏に声をかけました。

ワームでムラソイをゲット
「今日の極浅ムラソイゲームは厳しいな。ワームをキャストできる?」と尋ねると、「OK!」と返答があり、すぐにキャストを開始。さすが普段からエサ釣りをしているだけあって、キャストの動きにも様になっており、ポイントへの投げ込みやカウントダウンの感覚もとても良いものでした。
そんな姿に感心していると、私もさらに2匹ほど追加で釣ることができ、そしてついに――N氏にもヒット!
なんとか二人とも、結果を出すことができました。

その後も1時間ほど釣りを続け、最終的には私がムラソイ5匹+ギンポ1匹、N氏がムラソイ1匹という釣果でこの日の釣りを終えました。(サイズ・数ともに、ここ数年で最も厳しい結果でした……)

新たな釣りの楽しみ方を発見
「ごめんな。こんなはずじゃなかったんだけど」と釣りを終えて私が声をかけると、N氏は「いやぁ、楽しかったよ。あんな浅場にちゃんと隠れていて、出てくるんだな。普段は磯の先端を目指して深場に仕掛けを落として釣るから、これはまるで磯遊びみたいだったよ。こんな釣り方があるなんて、目から鱗だよ」と感想を話してくれました。
そうなんです。N氏も私と同じように、ワームを見て姿を現すムラソイを何度も目撃して驚いていたのです(今日はバイトまでは至りませんでしたが……)。
「そうなんだよ。活性が高いと、そのまま食ってくるんだけど、今日はそうじゃなかった……。磯を歩きながらの釣りだから、釣れないと疲れがたまって大変だったよね」と私が言うと、N氏は「今度、良い状況のときにまたやってみたいな」と返してくれました。
「じゃあ、次回もやってみる?」と聞くと、「ぜひ!」とのこと。

子ども時代の釣りの記憶
私は小学校1年生の頃から釣りをしています(途中、10年以上釣りから離れていた時期もありますが……)。そんな中で、今でも印象に残っている釣りの思い出があります。
それは、子どもだった私が釣りに飽きてしまい、潮だまりをのぞき込んだときのこと。そこには、たくさんの種類の魚たちが泳いでいて、それを見ているだけで楽しかったのを覚えています。
そのうち、竹の継ぎ竿の先っぽだけを持ってきて、糸と針を結び、エサをつけて潮だまりに落としてみました。すると、ハゼなどが餌をちょんちょんとつつきにくる中、突然岩陰から大きめの根魚が現れて、エサをさっと奪っていく――そんな光景が何度もありました。
まさにサイトフィッシング。そのときのドキドキ感や、釣れた魚の記憶は、実際の大きさ以上に鮮明に心に残っています。
子供の頃の遊びに近い感覚
極浅のムラソイゲームは、私にとってまさにこの体験と重なります。とてもノスタルジックで、童心にかえるような感覚があるのです。
今回、N氏と釣りをして、彼も私と同じような感想を持ってくれたことは、何よりもうれしいことでした。釣果としては残念でしたが、いつか条件が良いタイミングで、ぜひ「爆釣」を体験してもらいたいと思っています。
もちろん、そのときの様子も、ぜひ記事にさせてほしいですね。

釣り資源を守るために
最後になりますが、私はこの極浅ムラソイゲームを、より多くの方に体験していただきたいと考えています。ただし、ムラソイを含む「根魚」と呼ばれる魚たちは、定着性が強く成長も遅いため、乱獲によって地域個体群に深刻なダメージを与える可能性もあります。
この素晴らしい釣りを長く楽しんでいくためにも、できるだけキャッチ&リリースを心がけていただけると嬉しいです。

<アングラー「K」/TSURINEWSライター>