秋になると食卓に並ぶことも多い、お馴染みのサンマ。あの細長い姿は見慣れていますが、海の中を泳いでいるサンマがどのような動きをしているか、想像したことはありますか?実は、あのスリムな体には、<速く泳ぐための工夫>と<ちょっと意外な泳ぎ方の秘密>が隠されているんです。

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(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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サンマの形

サンマの形は、アジやタイと比べると、ずいぶん細長くて、スラッとしていますよね。

これは、水の中を進むときの抵抗をできるだけ少なくして、スピーディーに泳ぐために進化した姿だと考えられています。

ヒレなどの出っ張りも少ないので、まっすぐ泳ぐのが得意なんですね。

『サンマ』を水族館であまり見ないワケ 胃がないからエサやりが難しい?
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サンマ(提供:おっしー)

2つ泳ぎ方を使い分ける

スーパーではよく見かけるサンマですが、海での泳ぎ方はあまり知られていないかもしれません。実は、サンマはふたつの泳ぎ方を使い分けているんです。

まっすぐ進む

ひとつは、他の多くの魚と同じように、尾びれを左右に振って、まっすぐ進む泳ぎ方。スリムな体のおかげもあってか、この泳ぎ方でも結構速いようです。

くねらせて泳ぐ

そして、もうひとつが、ちょっと意外な泳ぎ方。なんと、ウナギのように体全体を「くねくね」と、しなやかにくねらせて泳ぐんです。この泳ぎ方だと、細かい方向転換も得意。特に、エサを探したり食べたりする時に、この「くねくね泳法」が活躍するんだとか。

速く泳ぐためにヒレを小さくしたサンマが、体全体を使って巧みに方向転換するなんて、面白いですよね。

群れで生活する魚でこんな風に体全体をくねらせて泳ぐのは、かなり珍しいそうです。

いっせいにクネクネ泳いでいるところを想像すると、ちょっと不思議な光景ですね。

逃げる時はジャンプ?

さらに驚くことに、サンマは実はトビウオの仲間なのです。

だから、ジャンプもお手の物。マグロのような天敵に襲われると、びっくりして水面から飛び出し、空中をピョンピョンと跳ねて逃げることがあるそうです。

サンマは光に敏感?

サンマは光に敏感で、光を利用した漁も行われています。棒受網漁といい、サンマの持つ光に走っていく性質、「正の走光性」を活用したものです。

まず、船からサンマの魚群に向けてライトを照らします。魚群がいるのとは反対側に網を構えておいて、光の方向を徐々に網の方へ移動していきます。

そうすると魚群が網にまとめて入る──というわけです。光を当てたサンマは興奮して、上記の通り飛び跳ねるそうですよ。

『サンマ』を水族館であまり見ないワケ 胃がないからエサやりが難しい?
『サンマ』を水族館であまり見ないワケ 胃がないからエサやりが難しい?
サンマはトビウオの仲間(提供:おっしー)

なぜ水族館にいない?

このようにユニークな泳ぎ方をするサンマですが、水族館などで泳いでいる姿をあまり見かけないと思いませんか? それは、サンマは飼育するのがとても難しい魚だからなんです。

あの高速で泳ぎ回る性質やストレスに弱いところ、さらには胃がないためにエサやりが難しいことなど、様々な理由から飼育するのは難しいといいます。食卓では人気者なのに、養殖が商業的に行われていないのは、そういった背景があるんですね。

福島県いわき市にあるアクアマリンふくしまは、泳ぐサンマを観察できる数少ない施設。

海の中で泳ぐサンマを観察してみたいという人は、ぜひ足を運んでみてください。本記事で紹介したふたつの泳ぎ方を目にすることができるはずです。

<おっしー/サカナトライター>

『サンマ』を水族館であまり見ないワケ 胃がないからエサやりが難しい?

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