東ヨーロッパの「黒海」という海に、我々がよく知るあのサカナが侵入し、問題となっているようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
黒海に進出したあの魚
地中海からいくつかの海峡を介してつながる、世界で最も閉鎖的な海域のひとつ黒海。東欧諸国に囲まれたこの海には、主に冷涼な水温を好む魚たちが生息し、独自の生態系を誇っています。
この海に最近、とある「厄介なサカナ」が侵入したというニュースがあり、沿岸諸国で話題となっているようです。そのサカナとは「フグ」。

我々日本人にとっては身近な魚であるフグですが、黒海においてはこれまで確認されたことのない存在でした。ここ数年の急激な海洋温暖化が黒海にもおよび、温暖な海域を好むフグ類が生息できるようになったのだと見られています。
フグが恐れられる理由
フグはつつくと膨らむコミカルな存在で、また食べても美味しい超高級魚であるという認識が我々にはあります。そのため黒海沿岸の人々にも歓迎されているかと思いきや、実際にはかなり戦々恐々という状況のようです。
現地の人々が恐れている理由は、やはりその毒性。フグの仲間には1匹で致死量を超える量の毒成分テトロドトキシンを持つものがおり、食べると大変危険です。

もともとフグが生息していない海域では「フグ=猛毒」という知識は常識ではないため、知らずに食べてしまう事故が発生する可能性はあるでしょう。そもそもフグの仲間は形態の変異に富むので、そもそもフグとわからずに口にしてしまう例も発生するかもしれません。
厄介なその「歯」
フグが恐れられるのはその毒性によってだけではありません。彼らの持つもう一つの厄介な武器、それは「歯」です。

フグ類は歯が癒合してくちばしのようになっているのですが、これが丈夫かつ鋭く、いろいろなものを切り刻みます。
更にその強い牙ゆえ、フグの仲間は見た目によらず獰猛で様々な動物を襲い捕食します。在来の甲殻類や小魚類などがその餌となってしまい、生態系のバランスが崩れる可能性があると学者たちは警告しているそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>