カニといえばその大小を問わず「美味しい食材」というイメージが強いですが、実は危険な毒を持つものも少なくありません。
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「カニによる食中毒」が発生
沖縄県で先月、観光客が自分で捕まえたカニを食べて食中毒になるという事故が発生しました。
このカニはオウギガニというグループのカニの一種で、ウモレオウギガニという種類と見られています。

当該の観光客はこのカニを捕まえて茹でて食べたところ、口や手などが痺れるという症状が出たといいます。実はこのウモレオウギガニ、時期や場所によって毒性を帯びることがあり、食用にはできないカニなのです。
大人気スベスベマンジュウガニ
このウモレオウギガニをはじめ、オウギガニの仲間には毒性を帯びるものがいくつかあります。中でも毒性、知名度ともに飛び抜けているのがスベスベマンジュウガニです。
各地の浅い磯に生息しているスベスベマンジュウガニは、名前の通り滑らかで光沢のあるまんじゅうのような見た目をした小型のカニです。あまり美味しそうではないため中毒事故はほとんど発生していませんが、フグ毒として知られるテトロドトキシンや貝毒の原因成分として知られるサキシトキシンを含み、誤食すると死に至る可能性もあります。

これらの毒はオウギガニ類のカニが生まれつき持っているものではなく、食べた餌の体内に含まれていたものを自らの体内に蓄積したものと考えられています。そのため個体や地域によって毒成分、毒性の強さが異なり、食べても中毒症状が出る人と出ない人がいるようです。いずれにしても、イチョウの葉のような形状の甲羅を持つ小型のカニはむやみに食べるべきではないでしょう。
陸上性甲殻類には要注意
他にもカニの仲間で食中毒に気をつけるべきものがあります。それは陸上性のカニ。クロベンケイガニ、アカテガニなどの陸上性が強く、水辺の森などに生息しているタイプのカニは、稀に食中毒事故を起こすことがあるといいます。
一般的にカニは屍肉食性の強い雑食性なのですが、死んだ魚の肉などをあさる水中製のカニと異なり、陸上性のカニは哺乳類の腐敗した死骸やその内臓、人間にとって有毒な廃棄物、また有毒な植物の実などを食べることがあります。それらの成分が消化管内に残っている状態のカニを丸ごと食べると、結果的に有毒成分を体内に取り入れる形になり、中毒を起こしてしまうのです。

その最たる例が(厳密にはカニではないですが)ヤシガニです。南西諸島の一部地域ではヤシガニを食用にする文化がありますが、ヤシガニの消化管を誤って食べて食中毒になった例は後を絶ちません。個体によっては筋肉にも有毒成分を含む可能性もあり、基本的に食用とすべきものではないでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>