海の可愛らしい生き物の中でも、「冬の海のアイドル」としてダイバーから人気が高いのがダンゴウオという魚です。丸いフォルムと愛嬌のある顔を持つダンゴウオの生態や魅力をはじめ、その仲間の見分け方などをご紹介します。

【『サカナト』で読む】

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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冷たい海のアイドル・ダンゴウオ

ダンゴウオはその名前の通り、まるでお団子のような丸い体です。一見するとフグのように見えますが、分類としてはカサゴ目の魚です。

くりっとした顔がキュートな海のアイドル『ダンゴウオ』 流されない秘密はお腹にアリ?
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ダンゴウオ(提供:PhotoAC)

太平洋沿岸を中心に広く生息しており、海水温が下がる冬から春にかけて見ることができます。

擬態を行うため、体色は緑や黄色、赤など非常にカラフル。生息場所の環境によって色が変わる魚なので、個体の違いを楽しむことができる魚です。

泳ぎが下手でも大丈夫

丸くふくらんだ体を持つダンゴウオは、あまり泳ぎが得意ではありません。

普段は岩陰や海藻などの間に隠れて暮らしているので、長い距離を泳ぐ必要はありませんが、水流などに流されることはないのでしょうか。

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水槽に貼りつくダンゴウオ(提供:PhotoAC)

その秘密はお腹にあります。

ダンゴウオをはじめとするダンゴウオ科の魚たちは、吸盤状に発達した腹ビレを持っており、吸盤で岩や海藻に張り付くことで、体が流されないように工夫をしているのです。

この吸盤は体を固定するだけでなく、獲物を捕食するときにも役立ちます。

吸盤で海藻に張り付きながら移動し、ゆっくりと対象に近づいたあとは、素早く捕食します。泳ぎが下手でも、体を進化させることで、海の環境を生き延びているんですね。

ダンゴウオは子育て上手?

“メスが産んだ卵をオスが守る”という行動は魚にもよく見られる生態で、ダンゴウオもオスが育児を担当します。

繁殖シーズンになると、オスは背ビレを王冠のように大きくしメスにアピールするほか、巣穴も用意。フジツボや貝の殻などを自分で掃除し、メスが卵を産んでくれるのを待つのです。

無事にメスの卵を迎えたら、巣穴の入り口に張り付いて卵に新鮮な海水を送りつつ、外敵から卵を守ります。

天使の輪が見られる幼魚期

オスに大切に守られ、孵化したダンゴウオの幼魚には、幼魚のときにしかない「天使の輪」と呼ばれる模様があり、非常に愛らしい姿になります。

ダンゴウオの繁殖に力を入れている水族館では、繁殖シーズンとなる晩冬から春にかけて、運がよければ幼魚を見られるかもしれません。

似ている仲間たち

ダンゴウオ科には世界中に30種類ほどの仲間がおり、そのうち日本で見られるのは10種類ほどです。

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ランプフィッシュ(提供:PhotoAC)

水族館でもダンゴウオ科の魚が何種類か飼育されているので、簡単な見分け方をご紹介しましょう。

ホテイウオはコブやトゲがなく、日本にいるダンゴウオの中では最大級の40cmほどの大きさまで成長します。東北では「ゴッコ」とも呼ばれ、食用としても愛されている魚です。

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ホテイウオ(提供:PhotoAC)

フウセンウオは体のコブが比較的少なく、体側に大きめのコブが1、2列並んでいます。また、体に黒い斑点のような模様があるのも特徴です。

金平糖そっくりの魚

最後に紹介するのはコンペイトウ。下アゴや体全体に小さなトゲのようなコブがあり、名前の通り「金平糖」を彷彿とさせます。

しかし、オスのコンペイトウは成長するとコブが平らになってしまいます。そんなときは大きさで見比べてみましょう。成魚になっても2センチほどのダンゴウオに比べ、コンペイトウは10cmほどと少し大きめに成長します。

コブや大きさの違い

同じダンゴウオ科といっても、コブや大きさなどで個性も変わります。

どの種類が一番好きか、見比べて探して見てくださいね。

ゆるい表情とカラフルな体色に癒されるダンゴウオは、多くの水族館や海でも見られる魚。一方で、繁殖に関してはわかっていないことも多く、全国の水族館で繁殖に関しての研究が進んでいます。

「天使の輪」が見られるのは幼魚のときだけなので、赤ちゃんが生まれた水族館があれば、貴重な姿を見るチャンスです。

<秋津/サカナトライター>

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