多かれ少なかれ、匂いを消す必要があるのが魚という食材。海外には我々日本人が想像できない「消臭食材」も存在します。

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強烈に泥臭い魚も美味しくする魔法のソース「ザジキ」とは ギリ...の画像はこちら >>

魚の「臭み」には種類がある

表面積の大半を水に囲まれた地球という星に住む我々にとって、魚はいついかなる時でも大事なタンパク源です。しかしそんな魚という食材を食べるうえで、どうしても対処しなくてはいけないものがあります。それは「臭み」。

それがどんなに清潔な環境だったとしても、魚市場の前に行くと多かれ少なかれ匂いは感じるはずです。この匂いのもとはトリメチルアミンというもので、魚の体内に含まれるトリメチルアミンオキシド(これ自体は旨味成分)が分解されてできたものなので防ぎようがありません。

また他にも、特に南方の海水魚において生きているときから独特の不快臭を発するものがあります。海藻が腐ったような匂い、磯臭さなどと呼ばれるこれはジメチルスルフィドという成分によるもので、海藻をよく食べる魚に多いと言われています。

厄介なのは「泥臭さ」

我々日本人は魚をよく食べる民族ということもあり、上記のような匂いには比較的慣れています。トリメチルアミンは酢や柑橘などの酸性の成分を使えば消せますし、ジメチルスルフィドはにんにくや玉ねぎなど同じ硫黄系の要素で上書きすると気にならなくなります。

しかしそんな我々が苦手とする魚臭さのジャンルもあります。その一つは「泥臭さ」でしょう。

強烈に泥臭い魚も美味しくする魔法のソース「ザジキ」とは ギリシャ料理の定番ソース
強烈に泥臭い魚も美味しくする魔法のソース「ザジキ」とは ギリシャ料理の定番ソース
コイ(提供:PhotoAC)

コイやフナなどといった淡水魚はかつては全国的に食べられていましたが、近年では敬遠する人が多くなっています。それは高度成長期以降、河川の水質が悪化し、これらの魚が「泥臭く」なってしまったことが理由の一つであるといわれています。

泥臭さの主要成分に「ゲオスミン(ジオスミン)」というものがあるのですが、これはプランクトンの一種である藍藻類が作り出します。

水質汚濁によって水中の富栄養化が進み、藍藻が増加することで環境中のゲオスミン濃度が高くなったことで、美味しかったはずの魚が泥臭くなり、敬遠されてしまうようになったのです。

ギリシャの万能ソース「ザジキ」

しかし、そんな「泥臭い魚」でも美味しく食べる方法はもちろん存在します。例えば日本では古くから淡水魚は味噌、醤油といった風味の強い調味料で味をつける、日本酒で煮る、あるいはしょうがを効かせたりする方法で泥臭さをごまかし食べられてきました。

しかしそのような調理法でも、肉の内部までこもってしまった泥臭さを消すことはできません。そんな魚を食べなくてはならなくなったとき、役に立つのがギリシャの「ザジキ」というソースです。

強烈に泥臭い魚も美味しくする魔法のソース「ザジキ」とは ギリシャ料理の定番ソース
強烈に泥臭い魚も美味しくする魔法のソース「ザジキ」とは ギリシャ料理の定番ソース
ザジキ(提供:PhotoAC)

このソースはギリシャ料理で非常によく用いられるもので、どんな食材も美味しくしてくれるのですが、特に魚料理には非常によく合います。臭みをマスキングする力のあるヨーグルトとオリーブオイル、泥臭さを風味に変換してくれるディル、青臭さで清涼感を付与してくれるきゅうりを混ぜて作られているので、強烈に泥臭い魚でも美味しくしてくれるのです。

ちなみに「魚の生臭さ」もヨーグルトの酸味が打ち消してくれるので、海の魚でも当然美味しく食べられます。磯臭さにも合うのではないかという気がするので、近いうち試してみたいと思っています。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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