傘についた“ドット模様”が可愛らしい「タコクラゲ」というクラゲを知っていますか?クラゲなのに名前に「タコ」がついていて、見た目はキノコ型。透明な傘に水玉模様が並んでいる姿は、まるで水中のマスコットキャラクターのよう。

私も実際に水族館でこのクラゲを見て、その愛らしい姿にすっかり魅了されました。今回は、そんなタコクラゲの生態と名前の由来、他のクラゲとの違いを探ってみました。

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タコクラゲの生態について

タコクラゲは、日本では関東以南から南西諸島にかけて見られる、温暖な海のクラゲです。水面近くを漂っている姿は、生息地域における夏の風物詩となっています。

傘は最大で20cm以上になることもあり、丸くキノコのような形が特徴。美しい白い斑点模様が散りばめられており、透明感と模様のバランスも魅力的です。

「まるで海の中の発電所?」見た目がキュートだけど優れた生存戦略を持つ『タコクラゲ』
「まるで海の中の発電所?」見た目がキュートだけど優れた生存戦略を持つ『タコクラゲ』
タコクラゲ(提供:PhotoAC)

タコクラゲの大きな特徴は、体内に「褐虫藻(かっちゅうそう)」という藻類を共生させていることです。この藻は光合成を行い、得られた栄養の一部をクラゲにも分け与えます。

つまり、タコクラゲはプランクトンを捕食するだけでなく、自ら「光をエネルギーに変換させて取り込む」という二重の栄養取り戦略を持っているのです。その生態ゆえに、私たちと海面付近で出会うことができるんですね。

タコクラゲは刺胞動物で「刺す能力」を持っていますが、その毒は非常に弱く、多くの人が痛みを感じることなく触れられるほど。しかし、見つけても素手では触らず、そっと観察するだけに留めましょう。

タコクラゲの名前の由来

それにしても「タコクラゲ」という名前について、「どうしてタコなのか?」と疑問に思った人も多いはず。私もそのひとりです。

タコという名前の由来は、「傘の下から垂れ下がる8本の太い口腕(こうわん)が、タコの腕を思わせるから」だと言われています。

ただし、実際にタコの腕と同じ働きをするわけではなく、クラゲの触手本来の食べ物を運ぶための役割を果たします。棒状の付属器が先端に伸び、プランクトンや微小な有機物を集めて口に導いています。

タコっぽい形状と、「8本」という数字から連想されて名付けられたユニークな例と言えます。

ちなみに、深海には「クラゲダコ」という生き物も存在します。名前からも、海の生き物の面白さを感じることができますね。

可愛いだけじゃないタコクラゲ

タコクラゲは、その可愛らしい見た目だけでなく、体内で自ら藻類を飼って共生するという、非常に優れた生存戦略をもつクラゲ。

ただ漂っているだけでエネルギーを蓄えることができる、まさに「海の中の小さな発電所」のような存在です。

「まるで海の中の発電所?」見た目がキュートだけど優れた生存戦略を持つ『タコクラゲ』
「まるで海の中の発電所?」見た目がキュートだけど優れた生存戦略を持つ『タコクラゲ』
タコクラゲ(提供:PhotoAC)

そして何より、そのキノコのような丸い傘と白いドット模様の華やかさは、見た人を思わず笑顔にしてくれるほどの魅力があります。そんな魅力的な面白い条件が揃うからこそ、水族館でも人気者なのですね。

あなたもぜひ、ふわふわと泳ぐタコクラゲの姿を観察してみてください。きっと、そのかわいらしさと奥深い生態に、心を奪われること間違いなしです。

<halハルカ/サカナトライター>

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