その希少性から幻の魚とも言われるクエだが、紀伊半島の釣り場では時折釣果情報を耳にする。果たして身近な漁港から狙って釣れるものなのか、幻の魚を追いかける夏の釣行をレポートしたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター稲垣順也)
紀伊半島のクエ釣り
紀伊半島の釣り場に通う釣り人なら一度は釣ってみたいと考えるターゲットであるクエ。本格的に狙うなら磯から専用タックルを用意してと敷居が高いイメージであるが、紀伊半島では身近な漁港で60cmクラスまでは釣果情報を耳にする。堤防からあわよくばと狙った事のある釣り人も多いのではないだろうか?
今回は移住して身近になった和歌山県南部の漁港でクエを狙うのは現実的なのか、地の利を生かして追いかけて行きたい。
温暖化で釣れやすくなった?
前述したように三重県から和歌山県にかけての紀伊半島の釣り場ではインターネットで検索してもそれなりに釣果情報が出てくる。温暖化の影響か、ここ数年は以前より釣果情報が多くなっている気がしている。漁港では小型中心だが、50cmを超えるサイズも釣れており、手軽に狙うには十分なサイズである。
以前、遠征で来ていた時から紀伊半島の各釣り場では都市伝説のような大物の噂も所々で聞いていた。「水面に浮上したアオリイカを大型のクエに丸飲みにされた」や「石鯛竿を根元から折られた」等、夢のある話を耳にしていた。
初回は謎のラインブレイク
最初に釣行したのは6月28日。タックルに悩んだが、とりあえず手元にあるショアジギング用を流用。エサは冷凍しておいた小サバと小アジ。17時頃釣り座を構えスタートした。開始早々の1投目、竿先にアタリが出て32cmのガシラ(カサゴ)が登場。30cmを超えるガシラを釣ったのは久しぶりで、改めて紀伊半島の釣り場のポテンシャルの高さを実感した。

その後、夕マヅメでアタリは続くが10号ハリスでもラインブレイク多発、根魚では無さそうだが正体はわからずアタリが途絶えた所でこの日は納竿とした。
翌日は1m超えハモ浮上!
翌6月29日、前日ラインを切っていった魚の正体が気になり、手持ちの中で最も太いフロロカーボンライン14号を用意して挑んだ。

昨日と同じく夕マヅメ、狙い通りアタリが出て今度はブレイクする事なくキャッチしたのは1mを超えるハモであった。昨日ブレイクした時と同じ引きで鋭い歯でやられたのだろう。外道ではあるが、リベンジに成功した。
続けてはウツボ
次に来たアタリも重々しく、上がって来たのは大型のウツボ。こちらも歯が鋭く危険である。

この日は日曜日ということもあり、外道であるが、大型魚2匹をキャッチできたため少し早めに納竿とした。ハモもウツボも嫌われがちな外道だが、キープして食べてみる事にした。捌くのが大変であったが、唐揚げで頂くと味は意外にも絶品であった。

なかなか釣れない本命
それからというもの、夕マヅメから夜に時間があれば釣行を繰り返したが、ガシラやウツボは釣れるが、クエ、ハタ系の本命は釣果が出ず、釣り場探しからやり直す事にした。まずはルアーを使って広いエリアを探り、地形を把握、良さそうな場所はマヅメ時にエサ釣りで狙って行く。

ルアーでは小型だが、オオモンハタをはじめ子クエ、ヤイトハタ等をキャッチ。場所により魚種に偏りがあることもわかり、少しずつだが、本命に近づいて来たと実感した。

ある日、地元のクエ狙いの釣り人と出会い話を聞いていると、簡単には釣れないが、年に数匹、最大で60cmを超える4kgクラスまでは獲っているとの事で期待が高まる。
本命クエのアタリ到来!
7月26日、この日もルアーで子クエの反応があったポイントでブッコミ釣りを開始。夕方開始早々30cmを少し超えるサイズのクエをキャッチし幸先の良いスタート。

日が傾いた時間に竿先に小さなアタリが出た為、竿を手に取りドラグを閉めているとすごい勢いで走り出し、ピタッと止まったが根に入られてしまった。魚が動く感触はあったが、根から出せず、フロロカーボンラインの14号ハリスがブレイクしてしまった。
恐らく本命のアタリであろう、やはりショアジギングタックルの流用では無理があり見直しが必要と感じた釣行であった。この釣りを始める時、実家に置いてきた石鯛竿を取りに戻るか悩んだが、とりあえずで始めてしまった事を後悔した。
クエ狙いは簡単ではない
現時点での見解として、私の住む和歌山県南部でも身近な漁港にクエは少ないが居る事は居るようだ。ただ、狙うとなるとすぐに行ける地元ならいいが週末に遠征して狙うのは少し厳しいと感じる。
実は愛知県在住時にも三重県や静岡県に遠征して狙っていた時期があるが、狙うポイントが定まらず、ウツボやクロアナゴは釣れたもののクエは小型すらキャッチできずに終わって諦めた過去がある。私的には遠征してクエを狙うのであれば、ルアーでロックフィッシュ全般ハタ系多魚種狙いで小型のクエが混ざればラッキーくらいが楽しめると思う。
クエ狙いのタックル
以前狙っていた時期に知人からクエ釣りはサイズが選べないと言われていた。若い頃は無知が故ビッグベイト用のバスタックルにライギョ用ラインとリールを合わせて狙った事があるが、その際、「大型がヒットすればタックルを失うか、自分が海に引きずり込まれる」と忠告を受けていた。大型になれば20キロを超える魚である。今にして思えば安易な考えであった。
道具揃えて出直し
今回もバラシからショアジギング用の流用は止め、タックルを準備してから出直す事にした。ハリスについて、クエ狙いの人に聞いた話だが、フロロ20号を使っていても獲れない事が何度もあり、太くすると途端に食いが悪くなるそうだ、大型を獲るならワイヤーが一番だが、食いは悪くなる。クエは歯が鋭い上に瞬発力も凄まじく一気に根に持って行く魚で食わせと強さのバランス取りが難しい。
今回、目標サイズのキャッチには至らなかったが、まだ手が届かない大物に期待して道具を準備し、場所、釣り方、仕掛けを色々考えている時間は釣りをする中で一番楽しめている時間だと思う。
釣行の注意点
狙えるフィールドが身近になった今、目標のサイズが釣れるまで諦めずに頑張っていきたい。最後にこれから堤防でクエを狙おうと考えている方へ、紀伊半島では非常に確率の低い釣りで、一から始めると宝くじを当てるような釣りになる。
私のように後で後悔しない為にもタックルはしっかり考えて挑んでほしい。マナーは守り、地元の方とのコミュニケーションも取りながら楽しんで頂ければと思う。
<稲垣順也/TSURINEWSライター>