北海道では美味なエビがたくさん水揚げされていますが、中でもマイナーなとあるエビにいま、注目が集まっています。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
道東の特産品「ガサエビ」
北海道の東の果てにある知床半島沖では、その独特の気候条件と海底地形から、他の地域では見られない魚介類が漁獲されています。有名なのがブドウエビで、北日本の各地で水揚げされる“ブドウエビ”とは種類が異なっており、羅臼のブランドエビとして知られています。
しかし、実はこのブドウエビ以外にも、知床ならではのユニークなエビが水揚げされています。それはガサエビ。

ガサエビは日本海側各地で水揚げされる人気の食用エビ「モサエビ」と近い仲間で、名前もよく似ています。しかしその大きさが全く異なり、大きいと体長20cmを超えることもあるエビです。
そのカッコ良すぎる本名
このガサエビという名前ですが、実は羅臼周辺における地域名です。その標準和名は殆ど知られていないのですが「ダイオウキジンエビ」といいます。
ダイオウキジンエビを漢字で書くと「大王鬼神蝦」。これはこのエビが含まれるエビジャコ科の中で圧倒的な大きさと殻の硬さを誇ることに由来しているそうです。
ダイオウキジンエビは2016年に「発見」された新種のエビですが、以前より道東周辺では刺し網漁で混獲され、利用されていたようです。知床付近ではこのように「人気の食用魚介が、実は新種だった」というパターンが多く、今後も同様の例が報告される可能性はあると思われます。
食材としての魅力
筆者は先日、このガサエビことダイオウキジンエビを羅臼で食べる機会に恵まれました。道の駅の食堂で塩焼きが提供されていたのです。
殻ごと丸焼きにされたガサエビは、頭部の殻の中にスープがたっぷりと詰まっており、口をつけてすすると、これまで口にしたことがないほど芳醇な旨味が感じられます。

1匹500円ほどと決して安いエビではないですが、羅臼でしか食べられない希少性やその美味しさを鑑みれば食べないという選択肢はありませんでした。道の駅では冷凍品も売られており、食堂を出た後すぐに購入したのは言うまでもありません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>