スーパーの鮮魚コーナーに並ぶマグロなどの刺身のトレーに、赤い液体が染み出しているのを見たことがないでしょうか。あの液体はいったいなんなんだろう?血?実はあの謎の液体「ドリップ」にはたくさんの旨味が含まれています。

おいしく魚を解凍するにはこのドリップの流出を抑えることが重要です。今回はそんなドリップの謎に迫るとともに、適切な魚の解凍方法を解説していきます。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

魚をおいしく解凍するコツ 6つのやり方を比較 「ドリップ防止...の画像はこちら >>

魚を美味しく解凍するには「ドリップ」を知ろう

スーパーのマグロの刺身などに染み出ているあの液体。赤いからといって血液ではありません。その正体は『ドリップ』と呼ばれる細胞中に含まれる組織液なのです。冷凍や解凍の際に、細胞を包む細胞膜や細胞壁が破壊され、細胞外に染み出た組織液がトレーに溢れてきます。

赤身魚の場合は、筋肉を形成する細胞中に赤い色素を持つミオグロビンというタンパク質が多く含まれています。マグロの場合は染み出てきたドリップもこのミオグロビンにより赤くなるのです。

ドリップは旨味そのもの

タンパク質は様々なアミノ酸で構成されており、アミノ酸は旨味成分として広く知られています。ドリップが染み出てくることは、水分と共に旨味成分も抜けてしまうことを意味しています。魚だけでなくカニなどの甲殻類や肉なども、このドリップの流出を抑えることが解凍時には重要です。

なぜドリップは出るのか

では、どうしてドリップが出てくるのでしょうか。スーパーで並ぶ多くの魚は、水揚げから一度冷凍されていることがほとんどです。この時、水を凍らせると氷が膨張するのと同様に、魚の身に含まれる水分(組織液など)も膨張しています。膨張することにより細胞は傷ついたり、細胞同士で押し潰しあってしまいます。

これが解凍されると、凍っていた水分(組織液など)は液体に戻り、ドリップとしてトレーに溢れ出てくるのです。

魚をおいしく解凍するコツ 6つのやり方を比較 「ドリップ防止の方法は?」
冷凍マグロ(出典:PhotoAC)

一度流出してしまったドリップは菌も繁殖しやすく、身の水っぽさや臭みの原因になってしまいます。スーパーで魚を選ぶ際も、ドリップが出ていないものを選ぶようにしましょう。すでに旨味が抜けてしまっているものを選ぶ必要はありません。

魚のドリップの量を減らすには

冷凍と解凍の工程を工夫することにより、流出するドリップの量を格段に減らすことが可能です。冷凍すると、細胞の中ではまず最初に氷の核が形成され、そこから時間をかけて氷の結晶が生成されます。

この結晶を生成する段階で時間がかかってしまうと、結晶はドンドン大きく成長してしまい、膨張により細胞膜などを破壊してしまいます。そして氷の膨張に関しては、温度がとても重要です。

冷凍時の注意点

氷の結晶には成長しにくい温度が存在し、その温度は−40℃付近、反対に氷の結晶がもっとも大きく成長するのは−5~−1℃と言われています。この温度帯にとどまる時間が長いほど、氷の結晶は大きくなってしまいます。一般家庭の冷凍庫の温度はだいたい−18℃以下に設定されていますが、冷凍庫内の使用状況などによってはそこまで温度が下がらなかったり、冷凍に時間がかかってしまいます。

魚をおいしく解凍するコツ 6つのやり方を比較 「ドリップ防止の方法は?」
冷凍庫(出典:PhotoAC)

最近の冷凍庫には急速冷凍モードが備わっていることが多く、魚に限らず食材を冷凍する際はぜひご活用ください。そんな最新機能が冷蔵庫に備わっていない場合は、保冷剤と一緒に冷凍するといいでしょう。温度を一律に下げやすくなるのでおススメです。

また魚へのダメージを少なくするために、冷凍する前にしっかりと水分を拭いて、ジップロックなどに入れて空気に触れないように保存しましょう。

解凍時の注意点

冷凍時と同様に−5~−1℃に長くとどまらないことが肝心です。食品を解凍するときは時間はかかりますが、1~5℃の低温でゆっくり解凍してください。急速に解凍してしまうと、温度変化によって細胞膜などへのダメージが大きくなり、ドリップが出やすくなってしまいます。

反対に5~25℃での自然解凍は衛生的に非常に良くないので、絶対に避けましょう。細菌は5~60℃ぐらいの間で最も繁殖すると言われています。自然解凍の場合、外側から徐々に溶けていき、中心部の解凍が始まる頃には、外側は細菌の繁殖しやすい温度にさらされることになります。解凍の際は手間かもしれませんが、正しい方法で行うようにしましょう。

魚を解凍する6つの方法

美味しさをキープしながら失敗しにくいオススメの解凍方法は「氷水解凍」か「冷蔵庫解凍」になりますが、その他にもいくつか解凍方法があるので比較していきましょう。

時短なら流水解凍

ボウルなどの容器に冷凍した魚を水に直接当たらないようにシップロックなどに入れ、流水にあてます。魚の大きさにもよりますが時間的にも短い時間で済むのがメリットです。触ってみて、中心がまだかたい状態が半解凍状態、触ってやわらかくなっていれば完全に解凍できていると言えます。

刺身なら氷水解凍

氷水解凍は氷水にシップロックごと魚を入れ、随時氷を足して冷たさをキープしながら時間をかけて解凍する方法。時間がかかりますが、鮮度がキープされやすく身へのダメージが最小限に抑えられます。刺身などで鮮度良く食べたい魚に特にオススメです。

簡単な冷蔵庫解凍もOK

冷凍した魚をジップロックごと、冷凍庫から冷蔵庫に移すだけの簡単な解凍方法。少し時間がかかりますが、ゆっくり解凍できるので身へのダメージを抑えられます。魚の厚みや種類などによって差はありますが、6時間程度で完全に解凍されます。

温塩水解凍はマグロに

また海水魚は解凍の際冷蔵庫に入れる前に温塩水につける方法を取ると、余計な水分が抜けるほか冷凍時に出たドリップを洗い流せるのでより美味しくなります。特にドリップによって色が変わりやすいマグロの刺身を冷蔵庫解凍する際にオススメの方法です。

魚をおいしく解凍するコツ 6つのやり方を比較 「ドリップ防止の方法は?」
マグロの刺し身(出典:PhotoAC)

やり方は冬場が35℃前後、夏場なら15℃を目安にした水1Lに、大さじ2杯の塩を入れた塩水をまず作ります。そこに冷凍した魚をそのまま入れて2分ほど漬けます。取り出したら軽く水で洗い水分をよく拭き取ってから、キッチンペーパー&ラップor脱水シートにくるんで冷蔵庫に入れ解凍します。

電子レンジは?

電子レンジの解凍モードで解凍する方法は解凍時間は早いですが、加熱ムラが起こりやすく、急速に解凍するため魚の身にダメージを与えるので、美味しく食べるという観点からは正直おすすめはしません。本当に時間がなく、味は二の次の場合にしましょう。電子レンジで解凍する際はキッチンペーパーに乗せて、出てくるドリップを吸収しながら解凍するのがコツです。

常温はNG

常温ではドリップとしてほとんどの旨味が出てしまうほか、細菌が繁殖しやすい温度帯に長時間さらされることになるため衛生的にもおすすめできません。

魚をより美味しく解凍するコツ

最後に解凍方法以外にも美味しく解凍するために気をつけたいポイントを紹介します。下記の4点に注意して魚を美味しくいただきましょう。

食品用脱水シートを活用

前述しましたが一度流出してしまったドリップは身の水っぽさや臭みに繋がります。解凍時に出るドリップを吸収するためキッチンペーパーや食品用脱水シートにくるんで解凍するようにすると美味しく解凍できます。

魚をおいしく解凍するコツ 6つのやり方を比較 「ドリップ防止の方法は?」
脱水シートとアジの切り身(提供:TSURINEWS編集部)

特に脱水シートは身の余計な水分も吸い取ってくれるので、解凍時に使うとドリップが出にくくなるほか、旨味が凝縮するメリットもあります。冷凍時にもくるんでおくと魚のダメージを抑えることができるので、積極的に活用してみるといいでしょう。

解凍しないで調理する場合

煮魚や焼き魚など火を通す場合に、冷凍のまま調理するのは、急速に解凍することになるため、あまりオススメしません。美味しく食べたいなら手間ですが一度解凍してから調理するほうがいいでしょう。冷凍の魚は身崩れしやすいイメージがありますが、適切に解凍すると身崩れも抑えられます。

また、干物や、塩味を付けた下味冷凍の魚であれば、水分が少なくドリップが出にくいので、そのまま調理してもあまり味に影響しません。冷凍した魚を手早く食べたい場合は、このような下ごしらえ済みの魚がオススメとなります。

解凍後はすぐに食べる

どんなに鮮度を保ちながら解凍しても、解凍後の魚は早いスピードで劣化していきます。基本的には解凍したらすぐに食べるようにしましょう。

冷凍の仕方もこだわる

魚の冷凍の仕方については、ここで紹介した他にも美味しく保存するコツがあります。下記ページで紹介しているのであわせて読んでみてください。

魚の『冷凍』完全ガイド 鮮度を保つ5つのコツ&保存期間延長法

<TSURINEWS編集部>

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