春以降の水温が上がる時期になるとサビキ釣りで狙えるアジやサバ、イワシといった小魚が沿岸を回遊しはじめます。こうなると、これらをエサとする大型の肉食魚(フィッシュイーター)たちも動き出すため、面白いのが小魚をエサにした泳がせ釣り(ノマセ釣り)。

今回は堤防から狙える大型肉食魚を釣るための泳がせ釣りをテーマに、基礎知識やターゲット別の4大釣法を解説していきます。

(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)

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泳がせ釣りとは

泳がせ釣り(ノマセ釣り)とは生きた小魚をエサにして泳がせ、フィッシュイーターを狙う釣りのことです。フィッシュイーターの代表魚といえば、スズキ、ヒラメ、マゴチに、ブリなどの青物や、根魚であるカサゴやアコウ(キジハタ)なども小魚などを補食する魚として知られています。

そんな魚の共通点は「高級魚揃いである」こと。(とはいえゲストには嫌われ者のエソやウツボなども掛かりますが……。)そして案外、近場の堤防やサーフなどの釣りで、高級魚を狙えるのが泳がせ釣りの魅力です。

泳がせ釣りの時期

シーズン的にはターゲットを変えれば、ほぼ1年中、なにかしら狙える釣りではありますが、ベイトフィッシュ(エサとなる小魚)が多い夏から秋にかけてがベストシーズンといえるでしょう。

真冬や早春の水温が低い時期は、水温の安定する深場に落ちてしまう魚も多く、沿岸部にエサとなる小魚も少なくなるので、対象となるターゲットが限られてきます。

泳がせ釣りの時間帯

狙うターゲットにもよりますが、共通して活性が上がるとされる時間帯は朝夕のマヅメ時。代表的なターゲットの青物は特に朝マヅメにより多くのエサを食べるといわれています。

狙いたい魚が昼行性か夜行性か調べて、マヅメ時を絡めて釣行するといいでしょう。

泳がせ釣りのエサ

泳がせ釣りのエサはアジ、イワシあたりが手に入りやすく、食いがいいため定番ですが、カマス、小イサキ、小サバなど他の小魚も使うことができます。また、エサの調達は現地でサビキ釣り等で釣るか、釣具店で購入するかの二択になります。

泳がせるエサが釣れないというリスクを考えると、釣具店で購入するのが確実ですが、そもそもエサの小魚が釣り場に回遊してこない状況ではフィッシュイーターが釣れる期待値も下がるほか、カマスが大量に回っている時はカマス以外でしかヒットしない、というような偏食している状況も存在するので、どちらかといえば現地調達をオススメしたいです。

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エサの活きの良さが重要

しっかりと泳ぐ元気なエサほど釣れる確率はあがります。電池式のエアレーションを入れた生かしバッカン等に入れるか、網のフタをファスナーで閉じられるようなタイプの水汲みバケツに小魚を入れて海に沈めるなど、元気なまま使えるようにしましょう。

また、バッカンでエアレーションして活かす場合は、冬場や夏場はバッカン内の水温にも注意。定期的に水を入れ替えるといいです。そのほかでは針につける際に手で触らないようネットを使うなどの工夫も重要になります。

特にイワシや小サバ等の鱗がしっかりしていない魚は手で触るとあっという間に弱るので気を付けましょう。またキャストも優しく行うようにします。

エサの付け方

ハリはカタクチイワシなど小さくて弱い魚を使う場合や、エサの動きを重視したい場合は1本バリも使用しますが、生きた小魚に食いついてきた魚をしっかりと掛けたいため、孫バリ仕掛けを使うことも多いです。

鼻掛けと背掛け・腹掛け解説図(作図:週刊つりニュース関東版 編集部)

孫バリ仕掛けとは、1本のハリスに親バリ(大物に掛けたいハリ)と孫バリ(エサの小魚をホールドするためのハリ)が付いた、いわば2本バリ仕掛け。親バリの付け方は片方の鼻の穴から入れて反対側に貫通させる「鼻掛け」と、上アゴのみに針を掛ける「上アゴ掛け」、下アゴから上アゴにハリを抜く「口掛け」をひとまず覚えておけばいいでしょう。

孫バリは背びれの付け根に刺す「背掛け」か、肛門あたりに刺す「腹掛け」を主に使用します。1本バリ仕掛けの場合はエサを自由に動かすため親バリを背掛けにするのも有効です。

泳がせ釣りの4大釣法

陸っぱりでの泳がせ釣りの釣り方は

・投げ釣り、ブッ込み釣りなどのスタイル
・ウキ釣りスタイル
・胴突き探り釣りスタイル
・エレベーター釣法

が4大釣法といえます。ここでは、これから試して欲しい4つの釣法について、それぞれの主なターゲットや狙い方などを解説していきます。

投げ釣り仕掛けの泳がせ釣り

釣りの経験者なら大体の人になじみがある、投げ釣りスタイルでも泳がせ釣りが可能です。投げ釣りのスタイルで狙うターゲットはマゴチ、ヒラメがメインになります。そのため堤防でも砂地の絡む場所や、サーフでの釣りに適しています。

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投げ釣りのタックル&仕掛け

竿は投げ釣り用や、遠投も可能な3~4号の磯竿を使います。リールは投げ用などの大型スピニングリールに、PEラインなら2~3号に15mほどの力糸、もしくはナイロンライン5号程度を巻きます。

投げ釣り仕掛け図(作図:TSURINEWS関西編集部 松村)

仕掛けは遊動式テンビンにハリスを1.5~3mほど。ヒラメに代表されるようにけっこう歯が鋭い魚が多いのでハリスはかなり太めを使用します。

マゴチやヒラメは甲殻類もエサにするため、根が絡む砂地も好ポイントですが、全体に太仕掛けとなる分、あまり根が荒いポイントでは根掛かりすると糸が切れず、釣り辛いことも多くなります。

投げ釣りの釣り方とコツ

マゴチやヒラメは基本的には砂に埋もれて獲物を待ち伏せするタイプの魚で、特にマゴチはあまり動き回らないので、投入したら定期的にポイントを変えて広範囲を探るといいでしょう。ベイトはカケアガリなどの起伏に集まるので、海底に変化があるポイントがあれば重点的に攻めてみるといいです。

置き竿時は魚に竿を持っていかれないよう注意(撮影:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)

アタリがあったら、泳がせ釣りでは十分にエサをくわえ込むまで待ってからアワセます。また投げ釣り以外の仕掛けでも共通しますが、置き竿にする場合は大物に竿をもっていかれないようにドラグを緩めて糸を軽く引っ張るだけで出ていくようにし、尻手ロープなどで竿を固定して置きましょう。また、取り込み用に大型のタモも必要になります。

投げ釣りに向いているエサ

投げ釣りスタイルでのノマセ釣りのエサは丈夫なアジが定番です。この釣りでは生きたアジをハリに掛けてから「投げる」のを基本とするため、投入時にアジがハリから外れないようにセットする必要があります。

基本的には付け方は親バリは鼻掛け、孫バリは背掛けがオススメです。

ちなみにイワシを使う場合は、鼻が軟らかいので口掛けにするといいでしょう。孫バリを腹掛けにするのも下から捕食するマゴチ、ヒラメには有効なものの、弱りやすくなるため一長一短といった感じです。

また、エサはシロギスやハゼといった底生魚も使われますが、キスは着水の衝撃に弱く、投げる釣りにはあまり向いていない印象です。ハゼはベタ底で捕食を行うマゴチ狙いにはいいですが、あまり泳ぎ回らない魚なのでゆっくりサビくなどの誘いが必要になります。

ウキ釣り仕掛けの泳がせ釣り

その名の通り、ウキ釣りでの泳がせ釣りです。投げ釣りに対して、仕掛けを上のタナでも設定できるのと、魚がウキを引っ張って泳いでくれれば広い範囲を探ることができる利点があります。

代表的なターゲットはスズキ(撮影:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)

タナを変えることで幅広いターゲットが狙えますがスズキ、青物など中層あたりを回遊する魚に最適です。

ウキ釣りのタックル&仕掛け

竿は磯竿の2~3号が最適です。オモリは最大5号以上も使うので、それにあった浮力のウキが必要。簡単なのは飛ばしサビキ用のウキを代用することですが、発泡製の中通しウキが糸絡みなどのトラブルも少なく使いやすいです。ウキでタナを固定するので、道糸に付けるウキ止めも必要になります。

ウキ釣り仕掛け図(作図:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)

また、仕掛けは投げ釣り同様、孫バリ仕掛けでもいいですが、魚が食いつくまで引っ張っていかせることも簡単なので1本バリでも構いません。また、孫バリをトリプルフックに変えることでアオリイカなども狙うことができます。

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ウキ釣りの釣り方とコツ

釣り方としては、広範囲に探ることとアタリがあってもじっくり我慢して、完全にエサを飲み込ませることが重要です。アタリがなければ、タナをかえるなど、垂直方向&水平方向に探っていきましょう。

エサはアジなど遊泳力のある魚を使います。1本針で中層を釣る場合、エサの魚が泳ぎやすいように背掛けで狙うのが一般的。孫バリ仕掛けの場合は親バリは鼻掛けや、弱りにくい上アゴ掛け、孫バリを背掛けでいいでしょう。

胴突き仕掛けの泳がせ釣り

胴つき仕掛けでの泳がせ釣りは、投げ釣りスタイルと似て、基本的には底付近を釣るための仕掛けです。この仕掛けはどんな場所でもオールマイティーに使えますが、最適なのは岩礁帯や障害物が多い海底。捨て糸を取る胴突き仕掛けは、オモリが岩礁に挟まっての根掛かりの場合、捨て糸が切れて仕掛けを回収できる仕組みになっています。

関西では身近に釣れる高級魚アコウ(撮影:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)

また、仕掛けを誘い上げやすいので、上下の誘いの他、オモリを持ち上げて横へズラすことでポイントをかえることも可能。そのため、アコウやカサゴなどの根魚狙いに適しています。

胴突き釣りのタックル&仕掛け

タックルは磯竿3~4号などに中型スピニングリール。仕掛けは三つ叉サルカンなど、3方向にサルカンが出ているアイテムを使って、道糸、ハリス、オモリを接続する固定式の仕掛けもありますが、オススメなのは半遊動式仕掛けとなります。

胴つき泳がせ仕掛け図(作図:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)

サルカンで繋がれた道糸にスナップを通し、枝バリを付けることで、幹糸上を枝バリが自由に上下できる仕組みです。海底付近から少し上層までを生きたエサが自由に動けるようにすることで、エサの魚が泳ぎ回っても枝ハリスが張り切って、エサの泳ぎをストップすることがない分、エサの弱りも遅くなります。

胴突き仕掛けでの釣り方とコツ

遠くへ投げ込むこともできますが、根掛かりが多くなるので基本は竿下での探り釣りスタイルがオススメです。磯場や、岩礁帯が絡む堤防、テトラ帯など近距離にストラクチャーのある釣り場を選びましょう。エサはアジやイワシなどで、アジは鼻掛け、イワシは上アゴ掛けがオススメです。

エレベーター仕掛け

こちらは胴突き仕掛けに似ていますが、最初にオモリのみを道糸の先に結んで投入し、オモリが落ち着いたら、エダスとエサが先に付いたスナップサルカンを道糸に通します。そのまま道糸上をエダスが滑って海中へ進む仕組みです。

表層から底物まで幅広く対応(撮影:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)

最大の特徴は上からエサを滑らせる遊導式なので、上層から底層まで幅広く探れる点です。表層や中層を回遊する青物やスズキ、底付近に潜むヒラメ、マゴチ、そして、根魚などにも対応できますが、道糸上をエサの小魚がフリーで動くので、自分が今どのタナを釣っているのか、認識し難いのが難点となります。

タックル&仕掛け

タックルはオモリを投げられる強度と、大型青物にも対応可能な磯竿の4~5号。リールも剛性の高い大型スピニングリールがオススメです。

エレベーター仕掛け図(作図:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)

仕掛けは根掛かり対策で捨て糸を付けておくといいでしょう。ハリはウキ釣り同様、エサの動きを重視して1本ばりの背掛けもオススメです。また、エサの小魚が制限が少なく泳げる仕掛けなので、カタクチイワシなどの弱い魚も使いやすい仕掛けとなります。

エレベーター仕掛けの釣り方とコツ

前述したようにオモリだけを投げて、後からエサを投入します。仕掛けがフリーな分だけ魚がエサを食べた時の違和感が少なく、食い込みもいい反面、明確にアタリが出にくいこともあります。コン、コンとアタリが出たら、少しずつ糸を巻き取り、距離を縮めていくうちに、オモリまでエダスが達して引きが明確になったらアワセましょう。エダスがオモリに達していない状況で強くアワせても、フリーなのでアワセが効かないため注意が必要です。

泳がせ釣りの魅力

以上、それぞれの仕掛け別の釣り方を解説してきましたが、何度かやってみると、自分に合った釣り方や、好みの釣り方が出てくると思います。「何が釣れるかお楽しみ」的な泳がせ釣りではありますが、ある程度ターゲットを絞って、「釣れた」から「狙って釣った」泳がせ釣りにチャレンジしてみるのもいいでしょう。

マグロやヒラマサなど夢の大物が狙える場所も存在します。

ちなみに船釣りで人気の落とし込みも泳がせ釣りの一種ですが、こちらは船の上から太い仕掛けのサビキを沈め、途中でエサのイワシやアジを掛けてから、大物のいるタナへ落とし込むというもの。

キープしておいたエサよりもハリに掛かった直後のエサの方が圧倒的に食いがいいので、波止でも小魚が大量に回ってきている状況などでは有効です。また、混雑した釣り場ではエレベータ式の遊動仕掛けなどはオマツリしやすく、周りの迷惑になる場合があります。マナーを守って楽しみましょう。

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<松村計吾/TSURINEWS編>

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