愛したホスト・隼人を刺し殺そうとした沙苗(橋本愛)は、事件から6年後、お見合いで出会った小泉健太(仲野太賀)と結婚する。平穏な結婚生活が始まったと思った矢先、謎めいた女・足立よしこが現れ、沙苗を翻弄(ほんろう)する…。
-木竜さん演じる足立の謎めいたたたずまいと緊迫感あふれる物語から、目が離せませんでした。出演のオファーを受けた時のお気持ちはいかがでしたか。
最初に台本を読んだとき、私自身が「この映画を見たい!」と思ったんです。
-その役割を見事に果たしていましたが、沙苗役の橋本愛さんや健太役の仲野太賀さんとのお芝居で心がけたことは?
今回は、お2人に胸を借りるつもりで現場に臨んでいました。お2人とも懐が深く、私の芝居をしっかり受け止めてくれましたし、その日の撮影が終わった後はお芝居の相談にも乗ってくれて。劇中とは正反対で、経験豊富なお2人に終始、私が助けられっぱなしでした(笑)。
-足立と沙苗のように緊張感ある関係の役を演じる場合、役者同士が距離を取ることも多いと思いますが、それとは真逆の距離感であの緊迫したお芝居が生まれたことが驚きです。
たぶん、キャストとスタッフ全員が同じ時間と空間を共有し、風通しよくコミュニケーションを取れたのがよかったんだと思います。例えば、足立と沙苗が教会の告解室で話をする重要なシーンは、台本に「2人が手を合わせる」と書いてあったんです。だから、そのつもりで現場に行ってみたら、2人の間に格子があったので、監督が「手を合わせるのはやめよう」とおっしゃって。
-ところで本作は、山本監督を含め、木竜さんと同世代の若い人たちが中心になって製作していますね。
おっしゃる通り、普段はベテランの監督やスタッフ、先輩の俳優の方々とご一緒する現場が多いのですが、今回はスタッフや俳優を含め、私と同世代かそれよりも若い人たちが集まっていました。おかげで、みんな仲良くなりすぎなくらい、仲良くなってしまって(笑)。撮影が休みの日には、ペンションの方が作ってくださった食事を、みんなで集まって食べたりしていました。
-若い人が多い現場では、木竜さんもややお姉さん的な立場になると思いますが、自分の立ち位置に対する意識が今までと変わったようなことはありますか。
確かにここ1、2年、年下の役者の方から、「あの作品どうだったんですか?」と聞かれる機会が増えてきました。まだまだ他人にアドバイスできるような立場ではありませんが、これまでの自分の経験を伝えることで、先輩方と一緒にものを作り上げていく「大人の自由工作」のような映画の現場の楽しさを知ってもらえたら、と思っています。同時に、「人は鏡」なので、相手に楽しんでもらうには、自分が率先して現場を楽しまなければいけないなと。
-2018年に『菊とギロチン』『鈴木家の嘘』で多数の映画賞を受賞し、昨年は『Winny』『福田村事件』で活躍するなど、着実に歩んできた木竜さんにとって、デビュー10年の節目に公開される本作も、新たな一歩を記す作品になりそうですね。それでは最後に、今年の目標などありましたらお聞かせください。
「もう10年!?」と驚くばかりですが、それくらい夢中になってやってこられたんだなと。その時々でいろんな悩みはありましたが、いろんな人に出会い、それによっていろんな自分にも出会いながら、楽しんでこの仕事を続けてこられた自分は、すごくラッキーでした。10年の節目と同時に30代を迎える今年は、作品や役柄の幅を広げるだけでなく、いろんな経験を積み、1人の人間としても成長していきたいと思っています。
(取材・文・写真/井上健一)
2月2日(金)、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国ロードショー!