「週刊少年ジャンプ」で2020年5月まで連載していた吾峠呼世晴による大ヒット漫画『鬼滅の刃』。2020年に初めて舞台化されて以降、シリーズを重ね、4月11日からはシリーズ5作目となる、舞台「鬼滅の刃」其ノ伍 襲撃 刀鍛冶の里が上演される。
-原作漫画はもちろん、アニメ、劇場版と大ヒットを重ねてきた「鬼滅の刃」。阪本さんは「鬼滅の刃」という作品のどんなところに魅力を感じていますか。
分かりやすい勧善懲悪という枠にとどまらないところが魅力なのかなと思います。「悪いやつは悪い。だから倒す」ではなく、なぜ悪になったのかまでをひもといて描き出しているんです。なので、悪だと思われる側にも感情移入ができますし、その悪が生まれるプロセスにもリアリティーを感じます。大正時代を舞台にしたお話ですが、大正というのも日本人にとってはリアリティーを感じられる時代なのかなと思いますし、刀を振るって戦う姿にも引かれてました。
-舞台「鬼滅の刃」ならではの面白さはどんなところにあると思いますか。
僕はシリーズ4作目からの参加になりますので、それ以前の作品は映像で見ましたが、そのときに感じたのはやはり生身の人間が演じているということが最大の魅力だと感じました。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は映画館に一人で見に行くくらい大好きだったのですが、舞台で矢崎広さんが演じている煉獄(杏寿郎)さんを見て、実際にこの世界に煉獄さんが生きていたらこういう姿だったんじゃないかと思いました。舞台を見てもっとそれぞれのキャラクターのことを好きになったのを覚えています。
※煉獄の「煉」は、正しくは “「火」へんに「東」”
-炭治郎は、子どもから大人まで広く知られているキャラクターです。そうした誰もが知っているキャラクターを演じる際に意識していることはありますか。
本当に誰もが知っているキャラクターですから、演じる前はプレッシャーが大きかったです。僕も原作を読んだときに一番好きなキャラクターは炭治郎だったんです。だからこそ自分が演じるとなると本当にプレッシャーでした。そうした中、実際に演じてみて一番大切にしなくてはいけないと思ったのは、「全世界の誰よりも自分が炭治郎のことを1番好きなんだ。愛しているんだ」という気持ちです。
-炭治郎のどんなところに魅力を感じていますか。
優しいところです。言葉にするとすごく薄っぺらく感じますが、僕だったら自分の家族が殺されたら恨み殺してやると思ってしまうかもしれません。心が歪んでしまってもおかしくない状況なのに、炭治郎は純粋で真っすぐなままでいられる。もちろん葛藤もあったとは思いますが、それを乗り越えて前を見ることができる炭治郎を尊敬しています。自分もそうありたいと思わせてくれるところが僕は大好きです。
-阪本さんは本作以外にも、ミュージカル『刀剣乱舞』や演劇調異譚「xxxHOLiC」など原作人気の高い舞台作品に数々出演し、人気キャラクターを演じていますが、そうしたキャラクターを演じる楽しみはどんなところにありますか。
演じていて1番楽しいなと思う瞬間は、やっぱりお客さまから拍手をいただいたときです。それまでは苦しいことももちろんあります。
-そうした原作のある作品での役作りは、原作に何度も立ち返りながら作り上げていくという形なのですか。
迷ったときはそうします。稽古場に漫画を置いていただいている場合は、それを読み返して、家に帰ったら自分の漫画をまた読み返して。こう動いているのではないか、こういう表情をしているのではないかと考えて、いわゆる“行間を埋める”作業をしていきます。アニメになっている作品は、アニメも見ます。そこに“答え”があるので。オリジナルキャラクターを演じるとなったら、そうしたプロセスはまた変わると思いますが、原作がある作品に関してはそこに立ち返り、向き合う時間を僕はすごく大事にしています。
-シリーズ5作目で、最新作となる「襲撃 刀鍛冶の里」では、新たな刀を求めた炭治郎が、刀鍛冶の里を訪れ、そこで鬼の襲撃を受けます。
今回は善逸と伊之助がいない戦いになります。それは舞台「鬼滅の刃」では初めてのことなので、これまでとはまた違った魅力が生まれると思います。今回は、不死川玄弥や柱の二人、甘露寺蜜璃さん、時透無一郎と共闘するという新しい戦いの構図になっているので、そこで生まれるその人間関係やその関係性が深まっていくさまが見どころの一つになるのかなと僕は思っています。玄弥と炭治郎は真逆の性格をした人物ですが、その二人が共闘する中で、お互いのことを認め合っていく姿にも注目していただけたらと思います。
(取材・文・写真/嶋田真己)
舞台「鬼滅の刃」其ノ伍 襲撃 刀鍛冶の里は、4月11日~20日に都内・天王洲 銀河劇場、4月25日~27日に兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobeで上演。