【写真】結成5周年ワンマンライブを開催したオメでたい頭でなにより
バンド結成5周年ワンマンライブ『5周年だョ!全員集合』が行われた8月29日・東京 USEN STUDIO COASTに集まったオメっ子(ファンの呼称)の間には、ウキウキした祝福ムードが漂っていた。オフィシャル抽選先行限定で販売されたコンボチケットを購入した人々は、本編スタートより1時間早く入場。

「オメでたい頭でなによりのコピーバンド歴15年」という華々しい経歴を誇り、「片手ピースがトレードマーク」であるお目出たズのメンバーたちは、「IMITATION BLACK」をSEに登場。両目がギョロリと飛び出しているものの、全員の風貌がオメでたい頭でなによりのメンバーたちとどことなく似ているのは、コピーバンド歴15年である彼らの同バンドに対する並々ならぬリスペクトを窺わせた。324似の男(Vo)、赤飯似の男(G)、ミト充似の男(G)、ぽにきんぐだむ似の男(B)、mao似の男(Dr)……なんとなくパートを入れ替えたオメでたのようにも感じる瞬間があったが、おそらく気のせいだったのだと思う。
「俺たちがお目出たズです! 今日は僕たちがオープニングアクトを務めさせていただくことになりました。そんな光栄な、記念すべき日にぶち上るのにふさわしい1曲目を用意してきたので、聴いてもらっていいですか?」――324似のボーカルがオメっ子たちに呼びかけてスタートしたのは海援隊のカバー「贈る言葉」。メンバー各々がソロで歌う場面も交えつつ、会場内を生温かいムードで包んでいった。その後、ドラムが刻み始めたリズムに合わせて赤飯似の男が奏でた印象的なギターリフ。[Alexandoros]の「ワタリドリ」の演奏が始まるのかと思ったのだが……「そんなの予定になかっただろ!」と制止する324似のボーカル。それでも再びドラムがリズムを刻み始めて「POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~」が唐突に始まってしまい、もはや何が何だかわからない混沌状態が加速していく。

そして、途中で意表を突く発表もあった。なんとお目出たズのメジャーデビューが決定したというのだ。「9/29 メジャーデビュー決定!」と書かれた紙がクス玉の中から勢いよく垂れ下がるべきなのに、丸まったまま全然開かない……というトラブルがあったものの、どうにかこうにかメジャーデビューが発表されると、オメっ子たちは拍手で祝福。早速披露されたメジャーデビュー曲のタイトルは「メジャーデビュー曲」。このふざけたタイトルには、オメでたのメジャーデビュー曲が「鯛獲る」だったことに対するリスペクトが込められているのだろう。そんな彼らのオープニングアクトは、オメでたのカバー「オメでたい頭でなにより」で締め括られた。「まだ半人前なのでシングルピースをもらっていいですか?」という324似のボーカルの呼びかけに応えて、ピースサインを掲げたオメっ子たち。様々な小ネタの連発で楽しませてくれたオープニングアクトであった。

オメでたのライブで恒例となっている舞台転換中のラジオ番組風の音声『オメでたい頭でなにより 赤飯のオールナイト転換』が流れた後、いよいよ本編がスタート。
真っ赤な炎が燃え上がるかのような爆音を轟かせた「日出ズル場所」。「何気にコースト、初ワンマンですか? そして5周年でございます! 5周年ワンマン、獲ったどー!」という赤飯の言葉と共にすさまじいクライマックスへと雪崩れ込んだメジャーデビュー曲「鯛獲る」も届けられて、会場内は清々しいムードで満たされていた。そして、VIPルームにいる豪華ゲストが紹介された最初のMCタイム。「あれはあの大国の歴代の大統領ではないか! その隣には某大物3人組アーティストもいる!」と、VIP(の姿を模したパネル)をみんなで大歓迎するシュールなひと時を経て、演奏は再開された。STUDIO COASTの名物である巨大ミラーボールが光の粒子をキラキラと放ち、会場に集まった人々を祝福していた「VIVAハピバ」。

ローラースケートの練習に打ち込んだ汗と涙の日々をメンバーたちのインタビューと共に紹介するドキュメンタリー映像『オメでたい陸』がスクリーンで流れた後にステージに現れたメンバーたち。スタートしたのは、言うまでもなく「推しどこメモリアル」。ローラースケートを使った5人のパフォーマンス、各々の歌の味わい深いソロパートが、往年のアイドルソングへのオマージュとなっていた。そして、メンバー5人がヲタ芸的なダンスを踊る「推しごとメモリアル」も披露されたのだが、特殊ソングがさらに続いてびっくり! 「俺たちがこの5年間の活動を通して、今日、この5周年を迎えるために作ったと言っても過言ではない!」という赤飯の叫びと共に、つボイノリオの名曲のカバー「金太の大冒険」がスタートすると、ゆっくりと下降してきた2つのミラーボール。黄金色の球体に挟まれながら時には朗々と、時には激しく歌い上げた赤飯は、紳士的でクレイジーなエンタテイナーぶりを発揮していた。

「5年間、好き放題やらせてもらってます。この状況になってから我々ができること、やらなきゃいけないことをたくさん考えて、やっぱり我々はくだらないことで笑ってもらう時間を作るのが“できること”だし、“やるべきこと”だと思いました。「金太の大冒険」をカバーしたのも、そういう理由があったからです。
「オメでたはいろんなきっかけを与えてくれてるなあって思います。オメでたを通じてみなさんとも出会うことができました。改めて、今日来てくれてありがとうございます。気合い入れてやってかなあかんなと思ってます。何があるかわからんってずっと思ってたけど、ほんとこんなことになるとは思ってなかったですよ。だからって心腐らせてもしゃあないし、やるしかないんですよ。

「今日は来てくれて改めてありがとう。

こうして終演を迎えた『5周年だョ!全員集合』。結成5周年を祝福する公演となったのはもちろんだが、ライブというもののかけがえのなさも心底実感させられた。フロアで歌って踊って “思いやりのぶつけ合い”ができるライブを取り戻すまでには、まだ時間が必要なのかもしれない。しかし、音楽を愛するミュージシャンと観客がいる限り、長年に亘って育まれてきた空間は、誰の手によっても奪い去れるはずがない。未来を諦めない意思を示し、再会を誓い合うかのように締め括られたオメでたの5周年ライブは、明日への活力となり得る余韻を残してくれた。
文:田中大