タジキスタンに0-3。5日前、6-0で勝利したモンゴルよりワンランク上の相手に、日本はアウェーで順当勝ちした。
最大の山場はその24分。GK権田修一(ポルティモネンセ)が相手FWとの1対1を好セーブしたシーンになる。そこでゴールを許していれば、日本はもう少し手を焼いたに違いない。
モンゴル戦から先発4人を入れ替えてタジキスタン戦に臨んだ日本代表
マン・オブ・ザ・マッチを選ぶなら権田。
サイドは片側がタッチラインなので、相手からプレッシャーを受ける方向も限定されている。
モンゴル戦では、右サイドで構える2人の関係が機能した。伊東純也(ゲンク)と酒井宏樹。さらには酒井と交代で入った安西幸輝(ポルティモネンセ)も伊東との間で良好な関係を築いた。サイドバック(SB)のサポートを受けた伊東が相手陣に深々と侵入。横攻めというか、ゴールラインの裏側に侵入できるアイスホッケーのごとく、背後から相手を崩すことができていた。
ところがこの日、右サイドで先発した堂安は、敵陣に深く入り込むことができずじまいだった。そういうプレーが潜在的に得意そうでない上に、ベンチから求められていなかったようにも見えた。攻撃は浅くなり、相手の守備陣に対して、正面から向かっていく格好になった。
左サイドの中島もしかり。こちらは2戦連続の出場だったが、前戦のモンゴル戦も似た傾向があった。
アウェー戦ということも慎重になった理由だろうが、長友と中島はこの日に限らず、毎度、良好な関係にはない。中島の売りはドリブルだ。
長友が中島の前にコンビを組んでいたのは乾貴士(エイバル)だが、コンビとしての魅力はこの2人の方が勝っていた。とりわけロシアW杯では息の合ったプレーを披露。日本のベスト16入りを語る際、外せない要素になる。
そうした魅力がいまの左サイドには欠けている。中島がドリブルして、中に、中にと入っていくという、それのみのプレーに終始している。プレーが限定されることで、おのずとチームとしてボールを保持する時間は短くなる。個々の実力に大きな差がある割には、だ。
モンゴル戦の永井謙佑(FC東京)に代わり、センターフォワード(CF)として先発したのは鎌田大地(フランクフルト)だった。しかし、彼が得意とするポジションはそのひとつ下だ。実際、南野拓実(ザルツブルク)とポジションは重なりがちになった。CF不在のサッカーに陥った。
ただ、そのこと自体、さほど問題はない。いわゆる「0トップ」は、本田圭佑をそこに据え、南アフリカW杯本大会に臨んだ過去もある。
しかしその時は、その分だけ両サイドが高い位置を取る必要がある。サイドの高い位置でボールが収まる状態になっていないと、全体のバランスは整わない。鎌田を起用するなら、中島、堂安はなおさらサイドの高い位置に張るように構え、そこでSBとコンビネーションを図るべきだった。
後半に入っても前線の4人とSBの関係は前半と変化なしだった。日本が3点を奪うことができた理由は、力の差そのものになる。人工芝にも慣れ、アウェーの雰囲気にも慣れれば、少々非効率なサッカーを展開しても、ピッチ上はそれを割り引いても余りある実力差が支配することになる。
そうした中で登場したのが久保建英(マジョルカ)だった。南野と交代したのは後半42分。ロスタイムを除けば、残り時間は3分というところで、である。
勝負が決してから登場したこともあるが、その力は圧倒的だった。こう言っては何だが、堂安、中島、南野、鎌田の比ではなかった。ひとりレベルが違うプレーを数分にわたって披露した。
だが、その必要はあっただろうか。モンゴル戦では出場なし。このタジキスタン戦では3分プラスアルファ。そのためだけにマジョルカ島から呼び寄せた。20日にレアル・マドリードとのアウェー戦を控えている日本期待の18歳に、大移動を課した。キラリと光る期待どおりのプレーを見せられると、その監督の判断には逆に疑問が湧く。
日本代表は来月11月にも大阪でベネズエラと親善試合を行なう。タジキスタンよりレベルはだいぶ上だ。海外組主体のメンバーをベストメンバーと言うなら、こちらの方がプレーの場としては適している。森保監督が描くベストメンバーを毎度、欧州から招集すれば選手は疲弊する。海外組がここまで増えたいま、代表監督に求められるのは、オールスターキャストを編成しないで試合に勝つことだ。いまこの段階では、それは十分可能だ。
もしベストメンバーを編成するなら、もっといいサッカーをしなくてはならない。現状をひと言でいうなら中途半端。筆者には、3分強しかプレーしなかった久保が、浪費を象徴しているように見えてしかたがなかった。