北の大地で夏競馬が開幕。函館の開幕週に行なわれる重賞は、GIII函館スプリントS(6月12日/函館・芝1200m)だ。

"荒れる"一戦として知られる同レース。実際、過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気はわずか1勝。2着も2回、3着も2回という成績にとどまっている。その一方で、5番人気以下が5勝。馬券圏内(3着以内)には、ふた桁人気の穴馬が頻繁に突っ込んできている。

 おかげで、馬連でも万馬券が4度もあり、3連単はすべて万馬券。

しかも、5万円を超える配当が8度もあって、2014年には80万円超え、2015年には90万円超えといった高額配当まで飛び出している。ここ最近は配当的に少し落ちついている印象があるものの、日刊スポーツの松田直樹記者はこう語る。

「2019年は『グリーンカル事件』(※飼料添加物グリーンカルから禁止薬物が検出され、同サプリメントを使用していた厩舎の出走予定馬が一括して競走除外となった)で出走馬の一部が不運な競走除外となり、2020年は開催2週目に施行され、昨年は東京五輪開催のために札幌競馬場での開催となりましたが、基本的なレース傾向に変わりません」

 つまり、近年はややイレギュラーな状況にあったということ。ならば、通常開催に戻る今年は、以前のような波乱が起こる可能性が一気に高まる。すなわち、高配当への期待も大きく膨らむ、ということだ。

 そんななか、狙い目となるのはどんな馬か。

松田記者はこんな見解を示す。

「まず大前提として、函館スプリントSは先行有利です。現に、4年連続で逃げた馬が連対していますから。とにかく、北海道シリーズの序盤は絶好の馬場。そこで行なわれる芝1200mの重賞は、前に行ける馬を狙うのが得策でしょう」

 とはいえ、スプリント戦だけに今年も逃げ・先行馬がズラリとそろう。そこからどう絞り込むかだが、松田記者は「メンバー的に見て、今回はそこまで迷う必要はありません」と言って、こう続ける。

「GI高松宮記念(3月27日/中京・芝1200m)3着のキルロード(せん7歳)、昨年の覇者ビアンフェ(せん5歳)といった強力な先行馬がいますが、どちらも行きたい馬がいれば控えることもあり、ハナにこだわるタイプというわけではありません」

函館スプリントSは「大荒れ」の予感。近走不振で人気急落の先行...の画像はこちら >>

函館スプリントSでの巻き返しが期待されるレイハリア

 そうして、松田記者は近走不振の逃げ馬を穴馬候補に挙げる。

「レイハリア(牝4歳)です。2走前のGIII京阪杯(11月28日/阪神・芝1200m)が最下位の16着、前走の高松宮記念がブービーの17着と、成績的には狙いにくいのは確かです。

 しかし、高松宮記念の敗因はハッキリしています。GI初出走で、当日は重馬場。昨春、良馬場の葵S(中京・芝1200m)で前半3ハロン33秒2のペースで行って勝っているとはいえ、あの日の馬場で前半3ハロン33秒4は明らかにオーバーペースでした。

 しかも、ダッシュ力があるレシステンシアにハナを譲る形になって、初めて馬群のなかでの競馬を強いられました。加えて、4コーナーで外へ持ち出そうとして伸びかけた時に、両サイドから挟まれて万事休す。力を出しきれぬままの敗戦となりました。

 2走前の京阪杯も、外枠発走で控えてしまった分、序盤で行きたがって消耗。勝った馬が道中最後方にいたエイティーンガールで、2着も後方から脚を伸ばしたタイセイビジョンと、外差し有利の馬場も影響したと思います。せめて内目の枠を引いて、スムーズにレースを運べていれば、違った結果になっていたのではないでしょうか」

 2戦続けて大敗を喫しているが、昨春は未勝利から4連勝。

夏には古馬相手にGIIIキーンランドC(札幌・芝1200m)を制している実力馬だ。

「キーンランドCは、3歳馬ゆえの斤量51kgという軽ハンデが味方したこともありますが、今回は斤量で恩恵を受ける3歳馬に強力な先行馬は不在。となれば、レイハリアが先行有利の芝で、自分の形に持ち込める算段が立ちます。

 函館入りする前には、美浦ウッドコースでの2週前追いきりで自己ベストを大幅に更新するタイムをマーク。この中間での立て直しの効果を感じさせる仕上がりを見せています。さらに今回新たにコンビを組むのは、函館・芝1200mでの回収率182%というデータを持つ松岡正海騎手。

一変を期待しています」

 有望な先行馬がそろっているとはいえ、今年は何が何でもハナに行きたい馬はいない。そこで、レイハリアがすんなり先手を奪えれば、一発あっても不思議ではない。