NPB新外国人選手の過去を紐解く(野手編)
2月からNPBの各球団はキャンプをスタートさせ、自主トレで調整してきた選手たちの仕上がり具合も徐々に報じられてきている。この時期に気になるニュースのひとつは、今シーズンからNPBの舞台でプレーする「新助っ人」の存在だ。
彼らの実力はいかほどのものか──。NPBでの実績がないぶん、未知なる部分に期待も大きく膨らむ。日本にやってくる彼らがアメリカでどんな活躍をしてきたのか、過去の成績や評価を振り返りながら新助っ人の能力を探ってみる。
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今シーズンから日本プロ野球でプレーする選手のうち、ルーグネッド・オドーア(読売ジャイアンツ/内野手/30歳)、ヘスス・アギラー(埼玉西武ライオンズ/内野手/33歳)、フランミル・レイエス(北海道日本ハムファイターズ/外野手/28歳)の3人は、メジャーリーグで1シーズンに30本以上のホームランを打ったことがある。オドーアはテキサス・レンジャーズ時代の2016年=33本塁打、2017年=30本塁打、2019年=30本塁打。アギラーは2018年にミルウォーキー・ブルワーズで35本塁打。
レンジャーズは2017年の開幕直前に、オドーアと6年4950万ドル(約55億円/2017年~2022年)に1年の球団オプションと馬2頭がつく延長契約を交わした。この時の『AP通信』の記事によると、ジョン・ダニエルズGM(当時)はオドーアについて「彼は23歳で、すでに最高のミドル・インフィルダーのひとり。可能性は無限大」と語ったという。
契約延長後もオドーアはパワーを発揮し、契約1年目と3年目に30本のホームランを打った。ただ、打撃の「質」は向上せず、むしろ低下した。
短縮シーズンの2020年もその特徴は変わらず、38試合で10本のホームランを打ったが、打率.167と出塁率.209に終わった。翌年の開幕直後、レンジャーズは契約の残り金額をほとんど負担する形で、マイナーリーガー2選手と交換にオドーアをニューヨーク・ヤンキースへ放出した。
そこからは、ヤンキース、ボルチモア・オリオールズ、サンディエゴ・パドレスと渡り歩き、計296試合で32本塁打、打率.204と出塁率.283。
アギラーとレイエスのシーズン最多本塁打は、オドーアよりも多い。ほかの点を比べても、パワーはオドーアをしのぐ。また、アギラーは6月末で34歳だが、レイエスは7月に誕生日を迎えてもまだ29歳だ。
2022年以降の不振がなければ、レイエスは今年もメジャーリーグでプレーしていただろう。最初の4シーズン、2018年~2021年のうちOPSが.820を下回ったシーズンは.795の2020年しかなかった。そのパワーはすさまじく、インディアンズでチームメイトだったカル・クアントリル(現コロラド・ロッキーズ)は、3年前の夏に「相手チームも彼の打撃練習を見たがるんだ。彼はバケモノさ」と『MLB.com』のジャスティス・デロス・サントス氏に語っている。
不振の理由ははっきりせず、殿堂入り選手のブラディミール・ゲレーロとデビッド・オルティーズからもアドバイスを受けたものの、復調はできていない。だが、新たな環境(NPB)がプラスに作用すれば、パワーを再び発揮して1年でメジャーリーグに戻ってもおかしくない。
オドーアやレイエスと異なり、アギラーはやや遅咲きだ。2014年~2016年のメジャーリーグ出場は計35試合に過ぎず、ホームランはなし。26歳で迎えた2017年に133試合で16本塁打を記録して開花の兆しを見せ、その翌シーズンには35本のホームランを打った。
一発屋というわけではなく、2021年も前半に15本塁打を記録している(シーズン全体で22本塁打)。年齢からすると、メジャーリーグ復帰の可能性は低いが、今年の結果次第では日本プロ野球であと何シーズンかプレーできるだろう。
上記の3人以外を見ると、ジェイク・シャイナー(広島東洋カープ/内野手/28歳)は2023年にAAAで30本のホームランを打っている。
また、フランチー・コルデロ(西武/外野手/29歳)はパワーとスピードのポテンシャルが高く、メジャーリーグ2年目の2018年には489フィート(約149m)の特大アーチを記録した。シーズン本塁打は2017年の20本(AAA=17本、メジャーリーグ=3本)が最多ながら、2016年~2017年はマイナーリーグで15三塁打以上。2021年と2023年の三塁打もふたケタを数える。
マット・レイノルズ(広島/内野手/33歳)とアンドリュー・スティーブンソン(日本ハム/外野手/29歳)は、どちらもドラフト2巡目で指名されてプロ入りした。レイノルズは2012年の全体71位、スティーブンソンは2015年の全体58位だ。
レイノルズは基本的に中距離打者。2023年はAAAで38二塁打を記録している。一方、ルイジアナ州立大でアレックス・ブレグマン(現ヒューストン・アストロズ)とチームメイトだったスティーブンソンは、当時からスピードのある好守のセンターとして評されていた。裏を返すと打撃の評価は低めだが、2022年~2023年はAAAで16本塁打ずつ。それまでふたケタ本塁打のシーズンがなかったことからすると、パワーはアップしている。
アレックス・ディッカーソン(中日ドラゴンズ/外野手/33歳)は、短縮シーズンの2020年にジャイアンツで対右ピッチャー用のレフトとして52試合に出場し、打率.298と出塁率.371、ホームランと二塁打を10本ずつ記録。しかしどうやら、それは一時的な好調だったようだ。昨年は独立リーグでプレー。5月で34歳と年齢も高い。
コーディ・トーマス(オリックス・バファローズ/外野手/29歳)は、マイナーリーグでシーズン20本前後のホームランをコンスタントに打ってきた。ちなみに、昨年から阪神タイガースでプレーしているシェルドン・ノイジーはオクラホマ大時代のチームメイト。2016年のドラフト順位は、ノイジーが2巡目・全体58位、トーマスは13巡目・全体401位だった。
(投手編につづく)
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