本田真凜 インタビュー 前編(全3回)

 2月17日、フジテレビの湾岸スタジオの一室。本田真凜が手足を動かして流れるようにポーズをつくり、明るい笑みをこぼすたび、カメラのストロボがたかれる。

 その音と光が、非日常間をつくり上げる。背景に使ったピンクのバックペーパーの前に立った彼女は、満開の桜のなかにいるようだった。春のうららかな情景をつくり出していた。

 身にまとった純白のワンピースは、なにかがゼロから生まれるようなイメージだった。それは、新たなキャリアに踏み出したばかりの彼女の今ともマッチしていた。

本田真凜が坂本花織のジャンプを絶賛 世界フィギュア日本女子の...の画像はこちら >>

【選手の気持ちに寄り添うキャスターに】

 今年1月、本田は現役引退を発表している。2016年の世界ジュニア選手権で優勝後、一躍、脚光を浴びた。

全日本選手権では、9年連続でエントリーし2016年は4位に入った。2023年末の全日本ではスケーターとしての意地を見せる演技で、自ら幕を引く形になった。

 その彼女がフジテレビ系の「フィギュアスケートSPフィールドキャスター」に就任した。台湾開催の世界ジュニア選手権(2月26日~3月3日)に続き、3月18日にカナダ・モントリオールで開幕する世界選手権でも取材・中継を担当することになっている。新しいキャリアのスタートだ。

「フィギュアスケートをずっとやってきたからこそ、スケートのキャスターの仕事をいただいたので、すぐにやりたいと思ってお引き受けしました。

選手の気持ちがわかることもあるはずなので、寄り添えるようなインタビュアーになりたいと思います。自分自身、たくさんの取材を受け、メディアの前に出ることも多かったので、自分にわかることを活かしたいです」

 本田は、そう決意を語っている。今回、「本田キャスター」に世界選手権の魅力と展望を余すところなく聞いた。

【坂本花織の最大の魅力は?】

ーーまずは本田さんも活躍していた女子シングルは、坂本花織選手、吉田陽菜選手、千葉百音選手が日本代表として出場します。日本勢がとても強い印象ですね。

本田真凜(以下同) 坂本選手は、今回の世界選手権で3連覇に挑むことになります。坂本選手は、ジャンプの質が本当にすばらしいな、と思いますね。

一緒に練習していても、一つひとつのジャンプの高さ、幅がすごくよくて、加点がたくさんつくジャンプだと思います。スピード感、パワフルさ、それが私から見た彼女の最大の魅力です。

ーー4分間のフリーを全力で滑れる体力と技術は特筆に値します。

 陸でたとえれば、全力疾走して、高いジャンプを跳んで、しゃがんで回って、というイメージなので、すごいですね。それに坂本選手はこの3年間、敵なしという感じ。ロシアの選手が出られていないというのも、逆にプレッシャーになるとは思うんです。

ずっと優勝しなきゃいけない、追われる立場というのは難しいものがあって、そのなかで質のいいジャンプをどんどん決めるのはカッコいいなと思いますね。

【千葉百音は「本当に賢い」】

ーー吉田選手、千葉選手は、シニア1年目で破竹の勢いです。ふたりともこれまで全日本ジュニア選手権で常にトップ3を争い、すでに全日本も4度出場し、次世代を担う存在と言えます。千葉選手は、2月の四大陸選手権で優勝しています。

 楽しみですね。先日、千葉選手のインタビューに行きました。ひと言での印象は「本当に賢い」。

練習の仕方や受け答えもそうですし、どういった練習が自分に合っているのかを理解していて、一番効率がいいやり方を選べるというか。それによって、どんな状態であっても、たとえば前の選手の演技がどうか、などに左右されない。そのあたりが、シーズン後半になって結果が出せている理由かと思いました。

【近くで見てきた吉田陽菜の挑戦】

ーー吉田選手は昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルで表彰台に立って、みごとに3位になりました。プログラムも興味深く、トリプルアクセルという明確な武器もあります。

 吉田選手は、彼女がすごく小さい時に海外遠征の試合で一緒になりました。

当時は、元気すぎる女の子って感じで、とにかく小さくて可愛くて癒されたんですが、いつの間にか素敵な女性になっています。

 彼女は小さい大会でも、とにかくトリプルアクセルに挑戦していました。状態が悪い時は、ダブルアクセルにしたほうが、演技の点数は出せるんです。でも、たとえ状態がよくなくても挑戦してきたことが、シニアになった彼女の高難度のジャンプ構成につながっているのではないかと思います。緊張しても、大事なところで決められる、というところで活きていると感じます。

ーー続いて、中編では世界選手権の男子シングルについて伺います。

中編<本田真凜が驚く宇野昌磨の考え方とは?「他の選手で見たことがない」世界フィギュア日本男子を占う>を読む

後編<本田真凜、世界選手権でりくりゅうペアに注目 アイスダンスの練習にのめり込んだ経験も語る>を読む

【プロフィール】
本田真凜 ほんだ・まりん 
プロフィギュアスケーター。2001年、京都府生まれ。2歳からフィギュアスケートを始め、ノービス時代から国際大会に出場。ジュニアに参戦した2015−2016シーズンには世界ジュニア選手権では優勝。翌2016−2017シーズンは世界ジュニアで2位、シニア選手に相手に全日本選手権でも4位に入る。シニアに転向後、全日本選手権やグランプリシリーズなど国内外の大会に出場。2024年1月に現役引退を発表。現在は、プロとしてアイスショー出演とともに、フジテレビ系「フィギュアスケートSPフィールドキャスター」としても活躍。