TBS・御手洗菜々アナウンサー
インタビュー後編(全2回)

 昨年10月からスタートしたTBSのサッカー番組『KICK OFF!J(ジャパン)』で、初回放送からMCを担当している御手洗菜々アナウンサー。スタジオ収録や現地取材を経験し、"サッカー熱"はどんどん高まっている。

 インタビュー後編では、共演した大物ゲストやインタビューした選手との印象的なエピソード、若い世代のJリーグファンを増やすための試みを聞いた。

吉田麻也の哲学、佐野海舟のギャップ...御手洗菜々アナのサッ...の画像はこちら >>

吉田麻也の哲学で変わったサッカーの見方】

──サッカーの取材やスタジオ収録も含め、番組内で印象に残っていることはありますか?

御手洗菜々(以下同) 柏レイソルのホームの三協フロンテア柏スタジアムに初めて取材に行った時に、観客席からピッチまでの距離の近さに驚きました。そこから見る選手の体格の大きさや、走るスピードの速さは想像以上で。選手同士が試合中にかけ合う声や監督の指示も聞こえるので、すごく印象に残っています。

──スタジオに来られたゲストで身体の大きい選手もいましたか。

 みなさん身長も大きいですし、肩幅が広くがっしりしていて。台本の読み合わせをする控室があるんですけど、そこの入口のドアをくぐる時、ほとんどの方は頭を下げて通ってきます。

とくに元日本代表のハーフナー・マイクさん(身長194センチ)はあまりにも大きくて、私と体格が違いすぎて、横に並ぶと、私の頭のてっぺんがハーフナーさんの肩まで届かないんですけど、みたいな(笑)。

──サッカーに対する考え方や解説の内容で印象的なゲストはいましたか?

 元日本代表の吉田麻也選手です。まず、私が初めてしっかりとサッカーを見た2022年カタールW杯に実際に出場されていた選手というのもあり、お会いできてものすごく感動したのを覚えています。オーラもすごかったですし、だいぶ圧倒されました。

 サッカーに対してはご自身の考えを明確に持たれていて。解説される時に、番組の進行的に番組サイドからコメントの要望も多少あるのですが、吉田さんは「自分のサッカー哲学とは異なるから、ここは少し違う言い方をしたい」と。

競技に対する考えや思いを否定しない形で、リクエストに応えていただいたんです。

 それを聞いて感じたのは、サッカーは思考と技術が合わさったスポーツなんだということ。選手それぞれが自分なりに考え抜いて、技術を磨いて、今の自分のプレースタイルにたどり着いている。すごく勉強になりましたし、サッカーや選手に対する見方が変わりました。

【取材で感じた佐野海舟のギャップ】

──選手それぞれの哲学があると思うので、いろんな角度からの知識や面白さを、番組を通じて学ぶことができますね。

 発見がたくさんあります。たとえば、クロスの蹴り方について、私は見てもとくに変化を見出せませんでした。

それが、解説していただきながら見たら、蹴り方ひとつでボールの動きやクロスの狙いが少しわかるようになって。ひとつずつ自分のなかに知識が増えていくのは楽しいです。

──Jリーグで今シーズン注目している選手がいれば教えてください。

 日本代表MFでもある鹿島アントラーズの佐野海舟選手です。番組内でプレー動画を見た時、すごくクールでひょうひょうとしていて、もの静かな印象を持ったんです。

 そして、昨年12月開催のJリーグアウォーズでインタビューをする機会をいただいて、正直、対面するまでは「じつは強面でオラオラ系だったらどうしよう......」と思っていました。

それが実際にお話ししてみると、雰囲気もカジュアル、まるで友達としゃべっているような、とても気さくな方だったんです。

 選手としてプレーしている時と、オフの表情が全然違って。そういったギャップも選手の魅力のひとつと思いましたし、より佐野選手のプレーをピンポイントで見るようになりました。

──この先、インタビューしたい選手はいますか?

 浦和レッズのDFアレクサンダー・ショルツ選手にお話しを聞いてみたいです。というのも、昨年10月に埼玉スタジアムで行なわれた、横浜F・マリノスとのYBCルヴァンカップ準決勝第2戦に取材で行っていたんですけど、PK2本ともキッカーとして任され、しっかりゴールを決めている姿がすごく印象深くて。Jリーグアウォーズでの佐野選手みたいに、ショルツ選手の素顔も知りたいと思ったんです。

 プレーに関する具体的なインタビューをしようにも、私はまだまだ知識が浅くて先輩方には遠くおよびません。自分なりに、テレビやスタジアムでは見られない選手の一面を引き出していけたらなと、今はそう思っています。

FC町田ゼルビアに注目する理由】

──気になる選手の意外な一面を知れたら、サポーターはたまらないと思います。では、クラブで注目していきたいのはどこですか?

 FC町田ゼルビアです。じつは私、黒田剛監督の娘さんと友達で、個人的に応援しているというのもあります。町田は昨シーズンのJ2で、2位と勝ち点12差の独走で優勝しましたし、J1でもその勢いのまま戦っていけるのかどうか、注目したいです。

──青森山田高校を28年間率いて、結果を残してきた黒田監督の手腕が話題ですね。

 気になります。実際、青森山田で培った指導法が、トレーニングに組み込まれているようで、そのなかのひとつに「相手を腹で見ろ」という指導があるそうです。ボールは目で追いながらも、つねに相手を自分の身体の正面で捉えておくことでプレッシャーをかけられる、という黒田監督の考えがプロの選手たちにも新たなメソッドとして浸透しているのは面白いと思いました。

──現地取材も重ねてきていると思いますが、まだ行ったことがないスタジアムで気になっているところはあります?

 ガンバ大阪のパナソニックスタジアム吹田は、私の出身地である大阪にもかかわらず行ったことがないので、行ってみたいです。『KICK OFF! J』で一緒にMCを務めている齋藤慎太郎アナウンサーが「(パナスタは)プレミアリーグのスタジアムみたいだ」と話していたんですけど、私にはそれがどういうことなのかまだよくわからなくて(笑)。そこで見る試合はどういう雰囲気なのか、ぜひ観戦してみたいです!

【選手のシュートを受けてみたい】

──スタジアムでのグルメ、「スタグル」も楽しみのひとつですよね。

 私、『KICK OFF!JAR(キックオフジャー)』という、各スタジアムで炊飯器片手にご飯のおともを探す企画をやっていまして。三協フロンテア柏スタジアムに出店していた「侍」というお店の「柏のからあげ」が、大きくてサクサクで、人生で一番おいしかったんですよ!

 ただ、大分トリニータの昭和電工ドーム大分にある「ぶんごや」の「中津からあげ」が、日本唐揚協会からあげグランプリ金賞受賞したと聞き、すごく気になっています!(笑)

──最後に、御手洗さんのような若い世代のJリーグファンを増やしていくために、何か考えていることはありますか?

 私、オタク気質なところがあって、一度ハマると、どっぷり浸かっちゃうんです。宝塚歌劇もそうですし、最近は『呪術廻戦』や『ハイキュー!!』などアニメや漫画にもハマっています。それと同様に、いわゆる"推し"の選手が見つかれば、若い世代は自ら深掘りして、ファンになってくれるんじゃないかと。そのきっかけとなる入り口をつくることが、今の私にできることだと考えています。

 プレースタイルでもゴールパフォーマンスでもなんでも、とにかく少しでもカッコいいと思った選手の、人柄や魅力を伝えることで、推しをつくるきっかけ作りやあと押しができたらいいですね。

──それを踏まえて、具体的に番組でやりたい企画はありますか?

 私がゴールキーパーになって、選手のシュートを身をもって体験する企画をやってみたいです。実際、ほとんど反応できずに身動きひとつできない可能性が高いと思いますが、プロの選手の技術やパワー、ボールの蹴り方一つひとつを自分の目で見て、体感する。それによって視聴者のみなさんが映像を通して体験してくれたら。それ以外にも、今後はピッチ目線からもサッカーの面白さを届けていきたいです。

前編<御手洗菜々アナをサッカーに惹きつけた本田圭佑の解説「近所のお兄ちゃんが隣で教えてくれる感じ」>を読む

【プロフィール】
御手洗菜々 みたらい・なな 
TBSアナウンサー。2001年2月14日、大阪府生まれ。関西学院大学卒業後、2023年にTBS入社。2023年10月からスタートしたサッカー番組『KICK OFF! J』(毎週日曜/深夜0時58分~)のMCを担当。趣味はジャズダンスやフィギュア収集、コスプレ。特技はクレーンゲーム、たこ焼きづくり。