2025年3歳牡馬クラシック
皐月賞とダービーの勝ち馬は?(前編)
GII東京スポーツ杯2歳S(2024年11月16日/東京・芝1800m)を制してからの、無傷の3連勝でのGI戴冠は三冠馬コントレイルを彷彿とさせる。また、父がキタサンブラックということから、世界の頂点に立ったイクイノックスに次ぐ逸材の登場とも見られている。
昨年は、GI皐月賞(中山・芝2000m)をジャスティンミラノが、GI日本ダービー(東京・芝2400m)をダノンデサイルが勝利。一昨年は、ソールオリエンスが皐月賞を、タスティエーラがダービーを勝った。いずれも2歳時には1勝馬だった馬たちが栄冠を獲得している。
つまり、ここ数年は混戦のままクラシック本番へと突入していた。しかし、今年はクロワデュノールという絶対的な存在がいる。同馬がこのままクラシックでもその強さを示し、春の二冠を手にすることになるのか。
ここでは、その行方をいち早く予想。スポーツ紙、専門紙の記者など5人の識者に、GI皐月賞(4月20日)、日本ダービー(6月1日)で勝つと思う馬の名前を挙げてもらった――。
太田尚樹記者(日刊スポーツ)
◆皐月賞=クロワデュノール(牡3歳/父キタサンブラック)
◆ダービー=クロワデュノール
主戦の北村友一騎手曰く、「新馬の時から欠点がないような馬。総合点が高いと思っていました。
この言葉のどおり、クロワデュノールには隙がないですね。昨年末のホープフルSではトリッキーな中山・内回りも、難なく克服して見せました。
母ライジングクロスは、英国の長距離GⅡパークヒルSの勝ち馬。英オークス(芝2400m)2着や愛オークス(芝2400m)3着の実績もありますから、血統的に2400mへの不安もありません。
キャリア3戦ですべて行きたがるそぶりを見せていますが、3戦ともスローペースでしたから許容範囲でしょう。ここまでの実績、血統、レースぶりから、春の二冠は濃厚と見ます。
余談かもしれませんが、この馬について覚えておきたいのが"輸送後に体重が増える"ということです。ホープフルSでは、当週水曜時点の事前発表馬体重が492kgで、当日は496kgでした。
管理する斉藤崇史調教師によると、東スポ杯2歳Sでも週中は496kgだったそうですが、当日は504kg。まったく輸送を苦にしないのも頼もしい限りです。
坂本達洋記者(スポーツ報知)
◆皐月賞=ヴィンセンシオ(牡3歳/父リアルスティール)
◆ダービー=レイニング(牡3歳/父サートゥルナーリア)
デビュー2連勝で1勝クラスの葉牡丹賞(2024年11月30日/中山・芝2000m)を制したヴィンセンシオは、中山向きなイメージと勝負根性を評価しました。
新馬戦(2024年8月31日/新潟・芝2000m)では、一度は2着馬に前へ出られながら、もうひと伸びして差しかえしました。その勝負根性が大きな魅力。皐月賞と同じ舞台だった前走も、馬群の内でじっくりと構えて、直線では力強い伸び脚を繰り出して、外から迫る2頭を抜かせませんでした。
その前走は中身の濃いレースぶりで、後続にハナ、アタマ差という着差以上の強さを感じました。なにせペースが流れたとはいえ、中山・芝2000mの2歳コースレコードをコンマ1秒更新。1分58秒8という勝ち時計は大いに評価していいでしょう。
その結果を受けて、デビュー前から同馬の馬っぷりのよさを絶賛していた森一誠調教師も、「この馬の持ち味が生きたレース」と振り返って、「クラシック路線への展望が開けた」とトーンは高まるばかりでした。
距離は2000m以上あってもよさそうで、立ち回りのうまさ、さらには祖母に名牝シーザリオを持つ血統の底力にもかけたいと思います。
さて、来年の春に定年を迎える国枝栄調教師にとって、今年がラストクラシック。悲願の牡馬クラシック制覇を狙って、管理馬にはかなりの良血馬がそろっていますが、なかでも推奨したいのはレイニング。1戦1勝と実績的には目立ちませんが、秘める素質の高さから"先物買い"して損はない馬だと思います。
新馬戦(2024年11月3日/東京・芝1800m)は、前半1000m通過1分4秒2という超スローペースの流れのなか、直線ではヨーイドンのキレ味勝負で鋭く差しきりました。
昨年末の取材で、国枝調教師が「コントロールが利いていて、(今年の2歳勢のなかで)競馬の立ち回りは一番いい」とセンスのよさを評価すれば、厩舎の番頭格・鈴木勝美助手も「最初はケイコで動かなかったけど、ガラッと変わってきたね。(ゴーサインを出して)体がグンと沈むし、これからどんどん変わってくると思うよ」と、素材のよさに目を細めていました。
母クルミナルは2015年の桜花賞2着、オークス3着と牝馬クラシックで活躍し、祖母クルソラはアルゼンチンのGI馬。血統のよさは折り紙付きで、距離が延びてもよさそうなのもプラス要素です。
(つづく)◆皐月賞、ダービーの勝ち馬はいかに!? 大本命クロワデュノールを脅かす存在はいるのか>>