森保ジャパンがワールドカップ・アジア最終予選で初めて敗戰を喫したオーストラリア戦、町野修斗の出場時間は21分にとどまった。

 日本代表はすでに2026年ワールドカップ出場権を獲得していることもあり、森保一監督は新戦力の多くをスタメンに送り込んだ。

戦力チェックにうってつけの場において、日本は敵地にもかかわらず、前半から一方的に攻め込んだ。

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 トップ下の鎌田大地が中盤のスペースを使うことで、右の平河悠、左の俵積田晃太のスピードと突破力という見せ場を作った。だが、なかなか決定機に至ることはなく、ボール保持の時間こそ長いものの、ゴールにはたどり着かない。

 代表歴の少ない選手たちが多くピッチに立ったことで、意思が噛み合わなかったというよりは、すでにワールドカップ予選としては消化試合になっていることが影響してか、どこか緊張感の欠けた試合のように見えた。

 ペナルティエリア外からのシュートは数本あったが、それも決めきれないまま終盤を迎え、「まぁ勝ち点1を土産に帰国......」という目論見に試合中のどこかで狙いは変更されたようだった。

 だが、そんな甘い考えは通用しなかった。相手は最後の最後まで勝利を求めて戦ったことがうかがえるし、狙って引き分けられるほど甘くはない試合でもあった。

 そんな試合で、町野が出場したのは69分だった。それは指揮官からの得点を取りにいく、という明確なサインとなった。

 それでも、試合開始から重心が重くディフェンシブに戦うオーストラリアのゴールをこじ開けるまでには至らなかった。町野に与えられたのは3-4-3システムの1トップとして、ゴール前でプレーするというタスクだったが、町野までなかなかボールが届くことがなかった。

【その名をドイツ中に知らしめた】

 町野が日本代表で求められるのは、ひたすらゴール前での仕事だ。これが、所属するホルシュタイン・キールであれば、少し事情は違う。

仮に1トップに配置されたとしても、攻撃参加の組み立てに加わることもあれば、少し下がって動くこともある。

 もっとも、キールでの町野はフォワードだけでなく、トップ下、時にウイングも経験してきた。代表で求められることとは違うが、今回はその多彩さを発揮する場ではないとも考えている。

「(自分はさまざまなプレーができるが、それを)出す必要がないくらい、代表には周りにすばらしい選手が揃っている。相手次第ですけど、押し込む展開が多いなかで最後のフィニッシュのところだけを求められていると思う」

 ただ、町野が所属するキールで培ったのは、ポジション的な多彩さだけではない。なんといっても得点力だ。クラブ史上初めてブンデスリーガで戦ったものの、結果は17位に沈み、あっけなく2部への自動降格が決まった。ただ、キールはリーグワースト1位の80失点を記録したが、得点力(リーグ11位タイ)は降格するような数字ではなかった。

 そんな攻撃力の高いチームで、町野はブンデスリーガ初年度ながら11得点3アシストでチーム内得点王に輝いた。11得点はリーグ全体を見ても13位タイ。その名をドイツ中に知らしめたのは間違いなく、チームは降格したものの、町野には移籍の噂が絶えない。おそらく今夏に1部チームへの加入が発表されるだろう。

「今年1年やってきたことが、代表でも出ると思っている。最後のペナルティ内でのフィニッシュには自信がありますので、しっかり試合で決めたいなと思います」

 そう話す町野の声は力強い。

【僕のゴールで締めくくれたら】

 カタールワールドカップではサプライズ招集されたものの、1度もピッチに立つことなく大会を去った。その悔しさがキール移籍とその後の活躍につながっていることを考えると、代表という場に還元するタイミングがようやく巡ってきたことは感慨深い。

 とはいえ、まずは出場時間を増やしたい。1年ぶりに招集された3月ラウンドではバーレーン戦で出場4分間、サウジアラビア戦はベンチにとどまった。先のオーストラリア戦では出場わずか21分。次のインドネシア戦では、先発のチャンスを掴みたいところだ。

 アジア最終予選も、次のインドネシア戦でラスト10試合目となる。

「チームとして最後は勝ちで終わる必要がある。僕のゴールで締めくくれたら、それ以上のことはない。結果を残したいですね」

 自分に求められているものはゴール。

それだけだ。

「まずはスタートで出られるように。(オーストラリア戦からインドネシア戦まで中4日)短い時間ですけど準備して、アピールしたいなと思っています」

 ゴールに集中し、結果を出し、勝利につなげる──。その先に2度目のワールドカップがある。

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