木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第52回

 今年の夏も暑いですね。毎年、同じようなことを言って申し訳ないのですが、この暑さのなかでどうゴルフを楽しむべきか――それは、大きな問題です。

ラウンドの途中、熱中症でリタイヤされている方の姿もよく見かけますから、その注意喚起も含めて、今年の猛暑対策のトレンドを報告させていただきたいと思います。

(1)夏の歩きゴルフには要注意!

 今の夏の暑さは、昔とは違います。気温35度を超えるなど、まさに猛暑ですから、歩いてゴルフはやらない。そういう選択肢は大いにアリだと思います。

 歩きゴルフは、乗用カートでのゴルフに比べて、炎天下にさらされる時間が長いです。プレーに夢中になっていると、つい日傘を差すのも忘れてしまいがち。それは、かなり危険な状態と言えます。

 ちょっと前の話ですが、アマチュアの選手が真夏の歩きラウンドでの競技に出場。熱中症で亡くなったことがニュースになっていました。それぐらい、歩きゴルフは危険が伴うのです。

 そもそもプロのトーナメント(当然歩きラウンド)は夏場、平地のゴルフ場ではほとんど開催されません。夏は北海道や信州の高原など、比較的涼しい会場で行なわれます。

 ですから、歩きゴルフが主流の名門倶楽部のメンバーで、夏の暑さの危険度を知っている方は、夏場はホームコースでラウンドせず、避暑地でのゴルフを楽しんでいます。それが可能なのは、名門倶楽部は全国に提携しているコースが結構あって、北海道や軽井沢の名門コースとメンバーが相互にプレーできるシステム、俗に言うレシプロ契約をしているところが多いからです。

 そんなわけで、暑い時期になると、知り合いの名門倶楽部のメンバーから「ウチのコースの割引券あるよ。やらない?」と聞かれることがあります。それで、こっちが「えっ、行こうかな。そちらはプレーしないの?」と聞くと、「僕は軽井沢に行ってるから」といったやりとりがあったりして......。要は、お金持ちはリゾートで遊んでいるから、「キミが僕のコースの留守番をしといて」ということです。なんだかなぁ~。

 ということで、夏に名門倶楽部でのラウンドに誘われたら、要注意です。慣れない歩きゴルフで大変な目に遭うかも......。以前、自分がやったときは、ずっと日傘を差してプレーをしていました。それぐらい大変、ということをお忘れなく。

(2)涼しい乗用カートが夏ゴルフの主流に

 毎年、夏のゴルフをどうしようかと悩んでいた矢先、2022年にゴルフ場チェーン最大手のPGMがクールカートを導入しました。これは、乗用カートの天井部分に送風機を付けたものです。

 仕事柄、導入されてすぐに試乗する機会があって実際に使用してみると、あまりにも快適にプレーできて「トレビアン!」でした。これが、夏のゴルフ対策の切り札になる――そう実感しましたね。

 迎えた今年、PGMはアコーディアグループを傘下に収め、アコーディア系のコースでもクールカートが導入されました。最終的には、320ほどあるグループコースのほとんどに導入していく目論見のようです。

 そのクールカートは毎年改良を重ねており、性能も向上していますが、送風機はPGMが独自に開発したもの。ですから、グループ内のコースにしか導入されないんですな。

 他のコースでは、プリンスグループがクーラー付きの乗用カートを久邇カントリークラブ(埼玉県)など、一部のコースに導入を開始しました。

 その乗用カートについて少し調べてみると、1台130万円ほどの本格的なクーラーをカートの屋根部分に設置。カート内の天井からひんやりした冷風が出てくるんだとか。

 それにしても、乗用カートの価格は新車でおよそ100万円ですから、クーラーのほうが高いって、どういうことですか? リースなんでしょうか? いずれにせよ、需要はあるので、長い目で見れば、減価償却できるのでしょう。

 また、これら以外のものを調べてみると、乗用カートに備え付ける送風機が結構出ています。今後各コースの乗用カートは、送風機、あるいはクーラー付きが主流になっていくのでしょうね。

 乗用カートで言えば、よりラウンドがラクになるのは、フェアウェーに乗り入れができること。夏場は、そういうコースを選んだほうがいいと思います。

 涼しい乗用カートに乗って、そのままボールのそばまで行って、そこから打つ――こうした流れでプレーできれば、猛暑日でも体力の消耗を抑えて乗りきれるかな、と。

(3)多様化する冷却服の活用へ

 一方で、ゴルフウェアもクール化の波が押し寄せています。

 汗で体を冷やすクール繊維を使ったウェアは各ブランドから多数出ていますが、画期的なウェアと言えば、空調服という代物です。これは、上着に装着した電動ファンによって衣服内に風を送り、体温を下げるシステム。最近では、キャロウェイやプーマなどの有名ブランドからも空調ベストが売り出され、お洒落アイテム化しています。

 また、メジャーテーマパークの屋外従事者の正式ウェアに採用されたことも、人気に拍車をかけているのでしょう。

 自分も今年、購入しようか迷いました。とりあえず、クールカート使用で、様子見といったところです。

実際に購入するかどうかのポイントとなるのは、バッテリーの持ちと、ゴルフをしていて膨らんだウェアが邪魔にならないか、ですかね。

 空調服を着ている人の多くは、過去に熱中症などになって倒れかけた体験をしています。それで、やむにやまれぬ状況になって着てみたら、思いのほかよかった、という感じのようです。

 そして最近では、空調服を上回るものとして、水冷服、ペルチェベストといったものが出回っています。こちらも、目が離せません。

 水冷服は、上着に装着されたチューブの中を冷えた水が循環するもの。ペルチェベストは、ペルチェ素子という金属みたいなものが電気の力で冷えて、それをベストに装着して体を冷やしてくれるそうです。

 これらの冷却服のマーケットは、毎年新製品が登場しています。ゴルファー各々が自ら最適なものを見つけられれば、今後の夏ゴルフにも十分対応していけるのではないでしょうか。

(4)安くて効果的な必須アイテム

 原始的ではありますが、なんだかんだ言って、夏のゴルフには氷嚢が一番安くて効果的かな、と。今は「アイスバッグ」と呼ばれて、大手ゴルフブランドでも便利グッズとして販売しています。

 夏場になると、どこのゴルフ場でも氷を置いてくれています。

スタート前とランチ後にその氷をアイスバッグに入れて、ラウンド中に首や額、手など血管が通る部分に当てて冷やすわけですな。特に、首の後ろと脇の下が効果的と言われています。

【木村和久連載】2025年夏ゴルフ 猛暑でのラウンドを乗りき...の画像はこちら >>

(5)命あってのゴルフ

 朝から「暑くなる」と予報が出ている場合、その覚悟もしているので、ラウンドしていてもわりと体はもつものです。逆に、不意に起こる気温の変化のほうが、熱中症への危険が増すような気がします。

 先日、埼玉でゴルフをしたのですが、前日が大雨で当日は朝から曇りと、ラウンドするにはいい感じと思っていました。ところが、昼頃から猛烈に暑くなり、湿度も半端ない状態に。熱帯のジャングルでゴルフをしている気分になって、体がそれについていけず、ふらふらになりました。

 熱中症のサインとしては、自分の場合は耳鳴りがします。これが続くと、かなりマズい状況です。とにかく安静にして、プレーはつき合い程度で体力を温存します。

 その日は、クールカートもなく、コースへの乗り入れもできないコースでした。クールカート慣れしている身としては、結構きつかったですね。

 夏のゴルフにおいては、どういう条件でラウンドできるのか、しっかり調べて臨むことが大切です。命あってのゴルフ。アマチュアにとっては、あくまでも趣味なのですから、そこは履き違えないようにしましょう。

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