町田瑠唯(バスケットボール)×志田千陽(バドミントン)
異競技スペシャル対談・前編
2025年夏、スペシャルな対談が実現した。
バスケットボール女子日本代表の町田瑠唯選手(富士通レッドウェーブ)と、バドミントン女子ダブルス日本代表の志田千陽選手(再春館製薬所)が「webスポルティーバ」で夢の共演。
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── バスケットボール界とバドミントン界を代表するおふたりですが、今回が初対面だそうですね。志田千陽(以下:志田) そうなんです。町田さんはオリンピックでの活躍はもちろん、Instagramもチェックしています。すごくオシャレで格好いい選手だと思っていて。今日お会いした時、「あっ、町田さんだ!」と思って緊張しました(笑)。
町田瑠唯(以下:町田) ありがとうございます(笑)。私も志田さんのことはオリンピックやInstagramで知っていて、その後もテレビによく出演していたので見ていました。
志田 え~、すごくうれしいです!
町田 すごく明るい人柄で、競技をバリバリやっているのに「女の子」らしいというか、志田さんみたいなタイプは女子バスケット界にはあまりいないので、すごいなって思っていたんです。
志田 ありがとうございます。私はアイドルが好きなので、その影響もあってか「かわいらしい」みたいな見方をされるんですが、実際はガチのオタクなので、中身はみなさんが思っている感じではないんです。だから今日は控えめにいきます(笑)。
町田 いやいや、そんなにイメージと変わりませんよ(笑)。
志田 そうですか? ありがとうございます!
── ではまず、おふたりが競技を始めたきっかけを教えてくれますか。
町田 小学校2年生の時に友だちに誘われて体験教室に行ったら、あっという間にバスケットにハマったんです。ただ、ほかの子と違ったのは、バスケットってシュートを決めるのがメインだと思うんですけど、私の場合、ドリブルとかパスとかに興味を持ってしまって、そればっかりやっていました。そういうこともあったのが、今のプレースタイルにつながっているのかなって。
志田 そうなんですね。私がバドミントンを始めたのは、幼稚園の年長さんの時でした。
町田 早いですね。
志田 はい。お姉ちゃんが部活を探していて、それに一緒についていったらバドミントンと出会って、「これ楽しい、やってみたい!」となったようなんです。シャトルを打つ感覚とかが、すごく楽しかったんだと思います。
【バドとバスケ、互いの競技の印象は?】
町田 私はバスケをやる前に野球をやっていたんですけど、打つよりもやっぱりキャッチボールが好きだったんですよね。
志田 投げて、捕る、というのが好きなんですね。
町田 そうみたいです(笑)。志田さんはバドミントン以外のスポーツは?
志田 バドミントンと並行して、バレエを小学校2年生ぐらいまでやっていました。その後はもうバドミントン一本です。ただ私、あまり球技が得意じゃなくて、走るのも小学生ぐらいの時は速かったんですけど、だんだん遅くなっていって、今はチームでも一番遅いぐらいなんです。町田さんは足が速そう......。
町田 得意科目は体育でしたね(笑)。
志田 シャトルラン(20メートル間隔で引かれた2本の平行線の間を合図音に合わせて往復する持久走の体力測定)の最高はどれくらいですか?
町田 えーと、最高だと140回ぐらいです。
志田 え~っ! そんな数字、聞いたことないですよ! すごいですね!
町田 いやいや、そんな。
志田 びっくりしました!

志田 バスケは練習がきついイメージですね。とにかくめっちゃ走っている。
町田 たしかに走りますね。けど、バドミントンの練習もきつそうだなと思って見ていましたよ。常に前後左右にストップ&ゴーなんで、乳酸がめちゃくちゃ溜まるんだろうなって。
志田 本当ですか? ラクそうだなって思いません?
町田 いや、ぜんぜん。だって、なかなか(ラリーが)終わらないじゃないですか。
志田 終わりますよ、簡単に。自分がミスをすれば終わるんです(笑)。
町田 あははは。でも、激しいラリーは見ていてかなり面白いし、第一線でやっている方々の駆け引きは、興味深く見させてもらっていますね。自分がやってきていないスポーツだけに。
志田 バスケも観戦とか行ったことあるんですけど、プロでやっている方のスピード感や速さというのは、本当にすごいなって思うんです。
【社会人1年目はフィジカルが弱すぎて】
── おふたりとも高校を卒業後、実業団に入ってプレーしましたが、いきなり社会人となって苦労した点はありましたか?
志田 右も左もわからない状況だったんですが、とにかくレベルが高いのは当然として、プレーしているとパワーや体の強さ、フィジカル面で差が出るんだなって痛感したんです。だから1年目、2年目はその点で通用しなくて焦りましたし、これでやっていけるのかなって自信を失いかけたことがありました。
町田 私も高卒で入って、高さはもちろんのこと、コンタクトするうえでフィジカルの差はすごく感じましたね。だから、まずは身体作りから。とにかく食べて、トレーニングをたくさんして、身体を大きくしたんです。
私は、食事もトレーニングもやればやるほど成果が出るというか、逆に体重が増えすぎて、量を抑えてもいいんだよって言われたぐらい。最初にガッといったのがよかったみたいで、2年目からは徐々に身体が変わって、少しずつプレーに慣れていけたんです。

町田 体幹は本当に大事ですよね。私は身長が高くないので(162㎝)、高さでは勝てない分、コンタクトでも負けてしまうと完全にやられちゃう。そこでどうにか勝負しないといけないって。
志田 実は私も町田さんと身長が一緒で、バドミントンの選手としては大きくないほうなんです。私はダブルスの後衛なんですけど、後衛の選手って一般的には身長が高くて、角度のあるショットが打てるタイプが多いんです。
だから私の場合、体幹を使って絞るようにショットを打たないと、シャトルが浮いてしまってカウンターを食らったりするので、そういう意味では人一倍身体を作っておかなければいけないと考えているんです。
【パートナーを生かすにはどうしたら】
── となると、自覚しているおふたりのストロングポイントは?
志田 以前は自分のことをパワータイプだと思っていたんです。だけど、経験を重ねていくことで、どちらかというとスピードや俊敏性で相手を引かせるタイプということに気づいたんです。
だからパワーに頼ったり、自分で決めにいこうとあまり考えず、パートナー(松山奈未/取材日=ペア解消発表前)が身長167cmあってスキルも高い選手なので、私はフィジカル負けをせずにしっかり後ろからぶつけて、パートナーにいい球が来るように打ち分けることを考えています。カバーという部分は自信を持っているので、パートナーを生かすにはどうしたらいいのかにフォーカスをしてプレーしています。
町田 ああ、それは私と似たところがありますね。
志田 そうなんですか?
町田 まわりにすごい選手が多いから、その力をいかに引き出すかが自分の役割だと思っています。まずは一人ひとりの強みや武器を理解すること、コート上でチームメイトの動きを察知して、チャンスを見逃さないように準備しています。
志田 私はダブルスなのでふたりですけど、それをコート上では5人でやるんですから、すごいですよ。あのスピードのなかで息を合わせるのは至難の業(わざ)だと思います。
(つづく)
◆町田瑠唯×志田千陽・中編>>「パートナーとケンカしない?」「全然ありましたよ」
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【profile】
町田瑠唯(まちだ・るい)
1993年3月8日生まれ、北海道旭川市出身。ポジション=ポイントガード。札幌山の手高3年時に高校バスケ3冠を達成。卒業後の2011年に富士通レッドウェーブに加入し、初年度にWリーグのルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞する。2021年の東京五輪はPGとしてチームを牽引して準優勝に貢献。2022年2月にワシントン・ミスティクスと契約し、日本人4人目のWNBAプレーヤーとなる。コートネーム=ルイ。身長162cm。
志田千陽(しだ・ちはる)
1997年4月29日生まれ、秋田県南秋田郡出身。6歳からバドミントンをはじめ、青森山田中・高時代は女子ダブルスで日本一に輝く。高校卒業後の2016年に再春館製薬所に入社。1学年下の松山奈未との「シダマツ」ペアでワールドツアー優勝を重ねる。2024年のパリ五輪では3位決定戦に勝利して銅メダルを獲得。2025年9月より混合ダブルスで五輪2大会銅メダルの五十嵐有紗と新たなペアを組む。世界ランキング最高位2位。身長162cm。