山本昌のスカウティングレポート2025年夏(後編)

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 球界のレジェンド・山本昌(元・中日)が、甲子園の有望投手を徹底分析する恒例企画。後編では甲子園を騒然とさせた「スーパー2年生」5名をアナライズ。

レジェンドが「今大会のナンバーワン」と激賞した逸材は、いったい誰だったのか?

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織田翔希(横浜2年/185センチ・75キロ/右投右打)

言うまでもなく、今春センバツ優勝の原動力になったひとりですし、将来有望な大器です。この夏は出力を落として、コントロールを優先する、全体的にまとまりを重視した投球に見えました。春まではスピードを意識するタイプに見えたのですが、今はピンチにならないとギアを上げないスタイルに変わっています。一歩先のピッチングをし始めたな、という印象を受けます。高校2年生にして試合をコントロールできる領域まで達したのは、さすが横浜高校のマウンドを任されるだけのことはあります。ポテンシャルが高すぎるがゆえに、指摘されることはあまりないでしょうが、私の目にはフォームが少しバラけるシーンがあるように見えます。まだ本格的な体づくりはこれからでしょうし、フォームに力強さが出てくれば、さらに高い次元にいけるはず。今よりもアバウトではなく、狙ったところにしっかりと投げられるようになるでしょう。

【夏の甲子園2025】山本昌が5人の「スーパー2年生」を診断 「今大会ナンバーワン」と絶賛した投手は?
投打「二刀流」の活躍が期待される山梨学院・菰田陽生 photo by Matsuhashi Ryuki
菰田陽生(山梨学院2年/194センチ・100キロ/右投右打)

プロレス団体からも声がかかったそうですが、それもうなずけるほどの大きな体つき。肉体に眠っているポテンシャルは、今大会でナンバーワンでしょう。基本はしっかりしているし、この大きな体をストライクゾーンへと持っていく技術もあります。だからこそ、今大会は先発として着実にゲームメイクできていたのでしょう。

有望な投手が多い2年生の世代でも、トップクラスの素材だと感じます。一方でマウンド姿を見て強く感じたのが、「本格的に投手をやり始めて間もないのだろうな」ということ。聞けば中学時代はあまり投げていなかったそうですし、体の成長に追いついていなかったのでしょうね。要領をつかんで、自分の体を柔らかく制御できるようになれば、さらに大化けするはずです。とてつもないパワーを生かしたバッティングも、将来が楽しみです。今大会は最後に右ヒジを痛めてしまったそうですが、しっかりと治して、また来春の甲子園に帰ってきてもらいたいです。

【夏の甲子園2025】山本昌が5人の「スーパー2年生」を診断 「今大会ナンバーワン」と絶賛した投手は?
初戦の金足農戦で14奪三振と圧巻のピッチングを披露した沖縄尚学・末吉良丞 photo by Matsuhashi Ryuki
末吉良丞(沖縄尚学2年/175センチ・89キロ/左投左打)

今大会ナンバーワンの投手は、間違いなく末吉くんでしょう。たくましい体つき、フォームの安定感、ボールのキレ、コントロール、そして2年生とは思えないマウンドでのたたずまい。ピンチでも表情に出さず、淡々と投げるところに芯の強さが見えました。今大会は新垣有絃くんとの二枚看板で、全国制覇に導きました。分厚い下半身をしっかりと使えて、左腕を鋭く走らせるフォームは高校生離れしています。すでに一級品のボールを投げていますし、来年のドラフト会議では1位で消えるでしょう。

今年の大学生・社会人のドラフト1位候補と比較しても、見劣りしない能力です。2年生としては別格ですし、「まだ2年生なのか......」と末恐ろしいです。投球フォームに関しては完璧で、100点満点。ここまでくると、安易に評論してはいけないレベルです。今夏はこれだけの激戦を繰り広げたので、しっかりと体をケアしてもらいたいですね。

【夏の甲子園2025】山本昌が5人の「スーパー2年生」を診断 「今大会ナンバーワン」と絶賛した投手は?
聖隷クリストファーを春夏通じて初の甲子園へと導いた髙部陸 photo by Matsuhashi Ryuki
髙部陸(聖隷クリストファー2年/174センチ・68キロ/左投左打)

フォームに安定感があって、球の走りがすばらしい。阿波野秀幸さん(元・近鉄ほか)に近いものを感じます。捕手に向かってしっかりとラインを出せて、試合をつくる能力も高い。上背はそれほど高くなくても、将来がすごく楽しみな投手です。ややショートアーム気味の左腕の使い方ですが、バランスよく腕が使えているので問題ありません。ストレートの軌道から小さく変化するカットボールなど、横の変化球も目を見張ります。少し気になった点を挙げるなら、時折、左ヒジのポジションが低くなること。

左ヒジの位置が低くなるとボールを叩けず、縦の大きな変化球も使いづらくなります。体をつくりながら改善できれば、持ち前のキレがさらに向上するはず。縦の変化球も完全マスターできて、無敵の投手になるかもしれません。今大会は2回戦で惜しくも敗れてしまいましたが、もっと上位で輝ける素材です。両サイドを使う投球に磨きをかけて、再び甲子園に戻ってきてもらいたいです。

【夏の甲子園2025】山本昌が5人の「スーパー2年生」を診断 「今大会ナンバーワン」と絶賛した投手は?
末吉良丞とともに沖縄尚学のマウンドを守った新垣有絃 photo by Koike Yoshihiro
新垣有絃(沖縄尚学2年/175センチ・65キロ/右投右打)

エース左腕の末吉くんが目立ちましたが、背番号10の新垣くんがいたことが沖縄尚学の全国制覇につながったと感じます。ストレートのキレがよく、スライダー、フォークなど縦の鋭い変化球もある。とくにスライダーは変化量が大きく、140キロ超のストレートとのコンビネーションは抜群でした。高校生打者で攻略するのは、難しいはずです。全国を見渡しても、二枚看板の力量としては沖縄尚学がナンバーワンでしょう。新垣くんに関しては「他校ならエースなのに」と思われることもあるでしょうが、私は末吉くんとチームメイトだったからこそ、ここまでレベルアップできているのではないかと見ています。今秋以降もお互いに疲労を軽減しながら、無理せずに投げられるメリットもあります。

新垣くんはフィジカル的に大きな伸びしろが残っていますし、来年の成長次第で高卒でのプロ入りも見えてきそうです。

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 低反発バットが導入されて2年目に入り、甲子園ではクロスゲームが多くなったように感じます。勝負どころで踏ん張れるかどうか、投手の重要性をますます痛感した大会でした。また、夏場の暑さも厳しさを増していますが、勝ち上がるチームにはハイレベルな2番手、3番手の投手がいるなと感じます。それだけ投手育成のノウハウが各チームに浸透し、高校野球のレベルが上がっている証拠でしょう。

 今大会は「スーパー2年生」の存在感が際立っていましたが、こうして探してみると、3年生も楽しみな素材が多かったと感じます。甲子園に出られなかった選手のなかにも、すばらしい原石が眠っているのでしょうね。また新たな才能と出会えることを楽しみにしています。

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