元ロッテ・岡田幸文インタビュー(後編)
プロ通算2501打席で本塁打ゼロ、59打席連続無安打──。そんな「不名誉な記録」な記録も、岡田幸文にとってはすべてが財産だった。
【プロ通算2501打席で本塁打ゼロ】
── プロ初打席から引退までの全2501打席で本塁打なしでした。これについてはどう思いますか?
岡田 まあ、そういう人生なんだなと(笑)。チームメイトから「そろそろ打てよ」と言われたこともありました。2013年だったか、当時日本ハムの木佐貫洋投手からフェンス直撃の二塁打を放つなど、惜しい一打はあったのですが......。
── 打撃面ではもうひとつ、59打席連続無安打という不名誉な記録があります。シーズン154安打も打った選手が、失礼ながらそこまで打てなくなるものなのでしょうか。セーフティーバントなどは考えなかったのですか。
岡田 スタメンで出場していた頃はまだしも、守備固めでの出場から回ってきた1打席、2打席で結果を出すのは、なかなか難しいものがありました。「H」のランプがほしくてセーフティバントも試みましたが、アウトになりました(笑)。
── よりによって、引退試合の1、2打席目で凡退し、「59打席連続無安打」のNPB記録(当時)を樹立しました。「やっちゃったな」という気持ちだったのか、それとも「これもいい思い出」と思ったのか、どちらでしたか。
岡田 半々でしたね。
── 名物アナの谷保恵美さんとロッテの大応援団の声援は感動的でした。
岡田 幸せな選手だなと思いましたよ。連続打席無安打に関しても「NPB に名を残せたかな」と、プラスにとらえています。
── その引退試合ですが、3打席目から猛打賞を記録しました。そして最後、二塁盗塁に成功。引退試合にふさわしい、ドラマチックなフィナーレでした。どんな心境でしたか。
岡田 たまたま3本打てました。あと1年早く打っていれば、もう少し長く現役を続けられたかなという思いも正直ありました。でも、野球の神様が最後にご褒美をくれたかのような引退試合でした。
── 欲を言えば、最後に本塁打を打って「2500打席本塁打なし」の記録を止め、有終の美を飾りたいとは思わなかったですか。
岡田 それも頭に浮かびました(笑)。でも、プロ最終打席はライトへヒット。おかげで、自分らしく二塁盗塁で終われました。
【残念、そこは岡田だ】
── 岡田さんのプロ野球人生で一番印象深かったことは何ですか?
岡田 2010年の中日との日本シリーズの第7戦、延長12回に日本一を決めた浅尾拓也投手からの決勝タイムリーです。「オレが決めてやるぞ!」という気持ちでしたね。
── あと、岡田さんといえば2011年6月15日の巨人戦です。阿部慎之助選手、坂本勇人選手、小笠原道大選手の飛球をスーパーキャッチし、一躍全国に名を轟かせました。
岡田 注目される巨人戦で、反響はすごかったです。以来、ファンの方に「残念、そこは岡田だ」と言ってもらえるようになった思い出深いシーンですね。
── 34歳で現役引退。やり残したことはありましたか。
岡田 やり残したことはまったくないですよ。
── 2018年限りで引退後、翌2019年から2年間、栃木ゴールデンブレーブスの外野守備・走塁コーチを務めました。ロッテからの派遣という形だったのですね。
岡田 私が足利クラブからプロを目指したように、独立リーグからみんな夢に向かってがんばってプレーしていましたね。
── 2021年から4年間、楽天で外野守備・走塁コーチを務められました。「守備で大切なこと」として、どのようなことを教えているのですか。
岡田 "状況判断"です。点差、アウトカウント、走者の有無、投手の球種、打球傾向......。状況を把握して、いかに判断できるか。ひとことでは言えませんが、たとえば、一歩引いてワンヒットにするのか、攻めて球際に強くキャッチするのか。それらを加味して「守備の一歩目」が重要です。そして投手が一生懸命投げているのですから、守備はとにかく「取れるアウトを確実に取る」ことが大事だと思います。
── 岡田さんの考える「盗塁のコツ」はどんなことですか。
岡田 "準備"です。後手にならないこと、構え遅れないこと。投手がボールを持っているので、進むにしても戻るにしても、差し込まれないように遅れないように、前もって準備をすることです。先手、先手です。すなわち、守備も盗塁も「準備」が大事なのです。
【育成選手が活躍するのに必要なこと】
── 2025年は育成選手の活躍が目立ちます。大盛穂選手、二俣翔一選手(いずれも広島)、長谷川信哉選手(西武)、山本大斗選手(ロッテ)、岩田幸宏選手(ヤクルト)......。
岡田 今年の育成選手の活躍を見ると、みんな本当にすばらしいですね。努力しているんだなと感じます。岩田選手など、ファームで見た時から「いい選手だな」という印象でしたが、一軍でも結果を出していますね
── 育成選手が活躍するには、何が重要だと感じますか。
岡田 やはり育成選手は本指名の選手と比較して、どうしてもチャンスが少なくなります。
── 現在は地元・栃木県で「部活地域移行コーディネーター」も週3日務められているそうですね。
岡田 足利市からお話をいただきました。公立中学の部活動外部移行は国の方針です。教員の働き方改革、少子化問題が関係していますね。
── 先生、生徒、保護者、外部指導員、人材派遣企業など、それぞれの立場があって大変ですよね。
岡田 みんな大変ですが、それを大変と言っていたら話は前に進みません。みんなが知恵を絞って、大変さを分け合って、みんながいい方向に持っていければいいと思っています。生徒には夢を持ってがんばってもらいたいですね。微力ながら私も野球で得た経験の「好きこそものの上手なれ」を伝えられたらいいかなと思っています。
岡田幸文(おかだ・よしふみ)/1984年7月6日生まれ。栃木県出身。