いまだ猛暑の日々が続くが、今週から秋競馬がスタート。関西ではGIスプリンターズS(9月28日/中山・芝1200m)の前哨戦となるGIIセントウルS(9月7日/阪神・芝1200m)が行なわれる。
同レースについて、デイリー馬三郎の吉田順一記者はこう語る。
「歴戦の古馬によるスプリント戦。ほとんどの出走メンバーが何度も走っている芝1200mの舞台ですから、単純に持ち時計の有無は必須です」
持ち時計が重視されるのは、6月以来の開催となる阪神競馬場の「開幕週であることも大きい」と吉田記者は言う。
「夏の小倉では水不足による芝のへたりによって、開催4週にわたって少し時計を要した状態でした。対して、その後の中京では水不足でも芝のへたりはなく、開催6週すべてで時計の速い決着が見られました。
注目すべきは、最終週でもレコード決着が2レースあったこと。スピードと瞬発力が求められ、内枠と前が強いトラックバイアスがあって、ジョッキーも前目の位置取り、早めの仕掛けといった意識が相当強かったように感じます。
そうした中京競馬場と同じく、阪神競馬場もオール野芝で路盤がしっかりしています。夏の中京開催で見られたような、スピードと瞬発力に秀でた馬が幅を利かす舞台設定と言えるのではないでしょうか。開幕週となれば、なおさらです」
ということは、中京開催同様、前へ行く馬が有利になるのか。その点について、吉田記者はこんな見解を示す。
「ポジショニングに関しては、ジョッキーの思惑によるペースの乱れもあり、一概に逃げ&先行が優位とは言えません。
続けて吉田記者はこうした舞台にあって、やや心許ない馬たちについて言及。そのうえで、狙い目となる伏兵についても指し示した。
「出走馬には、1分7秒台前半からそれ以下の持ち時計がある実績馬がズラリ。1分7秒台半ばから後半の持ち時計の馬は、無条件でオミットしてもいいでしょう。
また、極限のスピード勝負にあっては、実績上位で他馬より斤量が1kg増となるトウシンマカオ(牡6歳)やママコチャ(牝6歳)らは、多少の割引が必要かも。それに、2頭の目標はこの先のスプリンターズS。ここは9割ぐらいの仕上げで臨む必要があって、斤量のことを踏まえても、中心に据えるのは得策ではないような気がします。
ただし、好位で運ぶこの2頭が展開のカギを握るのは間違いありません。もし2頭が意識し合うポジションを取って牽制し合うようなら、それぞれの仕掛けの遅れも、頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。
となると、穴に狙いを定めるなら、逃げ&先行馬。そして、実績上位の2頭のすぐ後ろで脚をタメられる馬、ということになるでしょうか。いずれにしても、トウシンマカオとママコチャの両雄は並び立たないと踏んでいます」
そこで、吉田記者は2頭の穴馬をピックアップ。
「一昨年にこのレースを勝って以降、低迷していましたが、前々走のオープン特別・韋駄天S(5月25日/新潟・芝1000m)で1着、前走のGIIIアイビスサマーダッシュ(8月3日/新潟・芝1000m)でも2着。千直の舞台でようやく"らしさ"が出て、完全復活を果たしました。
しかし今回は、1ハロンの距離延長によって人気は急落気味。それ以前のレースで惨敗続きだったからでしょうが、それらのレースは展開が厳しすぎたのもありますから、持ち味を取り戻した今なら、そうした評価を覆してもおかしくありません。しかも今回、同型となるのはカルチャーデイ(牝4歳)ぐらい。そのカルチャーデイにしても、今や2~3番手からの競馬が板についている状況。テイエムスパーダが確実に主導権を握れるはずです。ここ最近の1200m戦の戦績からしてマークが甘くなる可能性も高く、時計の速い馬場を味方にしての粘り込みに注意したほうがいいと思いますよ」
吉田記者が推奨するもう1頭は、モズメイメイ(牝5歳)。同馬も、昨年のレースで7番人気ながら3着と好走し、好配当をもたらしている。
「テイエムスパーダと同じく、この馬も前走でアイビスサマーダッシュ(6着)に出走。テンに速い競馬を経験しての参戦で、高速馬場が予想される舞台にあっては軽視できない存在です。
前走では、有利とされる8枠18番発走でしたが、早めに中に出して前に壁がない状態となり、中途半端に踏んでいったことで、一瞬のいい脚を引き出すことができませんでした。それはおそらく、一度も結果を出せていない斤量(56kg)を背負っていた影響もあったかもしれません。
しかし今回は、昨年勝利したアイビスサマーダッシュ、3着と善戦したセントウルSのときと同じ斤量の55kg。その点は、かなりの強調材料と言えます。あとは、一瞬の脚を生かせるようなレースができれば、昨年と同様に上位争いを演じても不思議ではありません」
2016年から2022年まで7年連続で1番人気が勝利を飾っていたセントウルS。だが、一昨年、昨年は1番人気が馬群に沈んで波乱傾向になりつつある。ここに挙げた2頭の一発にかけてみるのも悪くない。