秋競馬がスタートした今週、関東ではGI秋華賞(10月19日/京都・芝2000m)へ向けてのステップレース、GII紫苑S(9月7日/中山・芝2000m)が行なわれる。
「牝馬三冠」最終戦を目指してここから始動する実績馬と、夏の上がり馬がぶつかる注目の舞台。
そんな紫苑Sのポイントについて、スポーツニッポンの"万哲"こと小田哲也記者はこう語る。
「中心視すべきは、休み明けでも春のGI出走組か? 夏場の条件戦を使ってきた組か? 紫苑Sに限らず、秋序盤のトライアルや古馬重賞は"ふたつの組"の評価が重要になってきます。
紫苑Sにおいては過去10年で、GIオークス(東京・芝2400m)からの直行組が4勝、2着5回、3着4回。その戦績から、オークスからの直行組を重視するのは当然のことで、今年はGI桜花賞(4月13日/阪神・芝1600m)3着→オークス(5月25日)5着のリンクスティップ(牝3歳)が"大本命"といった存在であることは確か。
オークスで関東への長距離輸送も経験済み。コーナー4つの中山・芝2000mに似たタイプの、京都の内回り・芝2000mの舞台で勝っている点もプラスで、人気の中心になることは間違いないでしょう」
しかしながら、そのリンクスティップにも「死角はある」と小田記者は言う。
「脚質が唯一の気がかり。桜花賞ではスタートで他馬に寄られ、オークスでは雨の影響が残った馬場(発表は良)で出足がつかないなど、いずれも理由があったにせよ、後方からの競馬。以前は好位で運んでいたことから、道中の位置取りは決めつけられないものの、仮に直近2戦と同じような競馬になった場合、ペース次第で前が残りやすい中山開幕週では、差し届かない恐れがあります」
実際、紫苑S過去10年の勝ち馬の、最終4コーナーの位置取りを見てみると、好位3番手以内が5頭。5番手以内まで広げると7頭になる。「前傾ラップによって、4コーナー14番手から突き抜けた一昨年のモリアーナみたいなこともありますが、紫苑Sは基本的に好位差しが強い舞台」と小田記者も語る。
そこで、小田記者はそれらのことを踏まえて、本命リンクスティップを脅かす2頭の伏兵候補をピックアップした。
「脚質や展開を考えて、まず魅力を感じるのは、テリオスララ(牝3歳)です。
左後肢骨折による休養明けだった前走は、出走予定だったGIIIクイーンS(8月3日/札幌・芝1800m)を除外。やむなく自己条件の3勝クラス・STV賞(13着。8月2日/札幌・芝2000m)に回ったのですが、終始周りを囲まれた状態で、完全に消化不良の競馬となってしまいました。その後、美浦トレセンに戻ってからは順調に調教を消化。1週前の追い切りが抜群の動きでした。前走時も決して悪い出来には映りませんでしたが、レースを使ったことで、型どおりによくなっています。
管理する田島俊明調教師も、『前走はこの馬の力を出せず、残念でした。本来のストライドの大きさを生かせる競馬ができれば』と、巻き返しへの手応えを得ています。昨年暮れのGI阪神ジュベナイルフィリーズ(京都・芝1600m)で3着に入った実績は、ここでは光っていますし、当時から『マイルもこなしましたが、2000mぐらいがベスト』という陣営の評価からも軽視は禁物です。
2歳時には、未勝利戦(札幌・芝1800m)、リステッド競走の萩S(京都・芝1800m)を逃げきり勝ち。
現状、賞金的に秋華賞出走は微妙な状況。ここは権利獲りへ勝負駆けなのは明らかで、好位から鮮やかに抜け出していく姿を期待したいところです」
小田記者が目をつけたもう1頭は、ロートホルン(牝3歳)だ。
「前走の1勝クラス(7月13日/函館・芝1800m)では、好位2番手でうまく折り合って快勝。同馬もスピードの持続力があって、器用に運べるのが長所です。春にはGIIフローラS(4月27日/東京・芝2000m)で、のちのオークス馬カムニャックからコンマ5秒差の6着と善戦。1勝クラスを勝ったばかりでも侮れません。
昨秋の未勝利戦(東京・芝1800m)では、1分45秒9という好時計をマークして逃げきり勝ち。高速決着にも対応可能で、中山の開幕週のレースはうってつけでしょう。
管理する加藤征弘調教師も、最終追い切り後に『状態はよすぎるぐらい。言うことないです』と太鼓判。前で運んで、そのまま粘り込み......といった激走は大いにあり得ると見ています」
昨年は、圧巻のコースレコード決着となった紫苑S。